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魔獣美容師の日常  作者: 星咲 美夜
九匹目:火車
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火車と猫車

『──ニュースです。昨夜、○○町の不審火により、一軒家が全焼しました。この家に住む△△さんが亡くなっているのが見付かりました』


「火事かー、それも不審火なんて怖いわねー」

「最近は空気も乾燥してきてるからにゃあ、気を付けにゃいとにゃ」


今日は予約がほとんどないからと、リズは仕事が休み。昼食を終えたあと、テレビを観ていたリズが頬杖をついて、他人事のように言う。


『──なお、付近の住人などの目撃情報から、放火の疑いも視野に捜査をしています』


「放火にしろ何にしろ、早く解決するといいわねぇ」

「そこまで長引くほど、警察も無能じゃにゃいにゃ」

「別にあたしは警察が全然、役に立たないとは言ってないわ」


リズの言葉に、ケット・シーは呆れてしまった。何かと事件が続いているから、そう思うのも仕方ないのかもしれないが。


『──それでは、続いてのニュースです』


ニュースでは、別の町で起きた事件を報道している。ほとんどが同じ内容だったりしていて、全く、報道する側も飽きないよなぁとリズはテーブルにあった食器をキッチンに持っていく。


「事件の全てを報道するのがいい事とは限らないのにね」


皿を水に付け、リズはため息をつく。キッチンまでついてきたケット・シーは首をかしげている。


「リズ、それはどういう意味だにゃ?」

「猫のアンタにそれを言っても、きっと理解出来ないわよ」

「にゃら、我輩は何も聞かにゃいにゃ」


リズの足元にいたケット・シーはリビングにあるクッションにダイブする。ゴロゴロしてる様は普通の猫そのものだった。



  ○o。. ○o。.



午後からリズとケット・シーは買い物へ。いつも通り、ケット・シーはリズの肩に乗っている。


「ねぇ、アンタちょっと太った?」

「そんにゃことはにゃい、と思うのにゃ」

「そう?なんか重い気がするんだけど」

「・・・きっと気のせいだと思うのにゃ」


軽々とリズの肩にケット・シーは飛び乗ったけど、なんかずっしりとした感じがしたのだ。ケット・シーは太ったのを否定(?)していたが。

夜にケット・シーが体重計にこっそり乗ったのは言うまでもない。


店の近くを歩いていると、珍しく、遙が外で掃き掃除をしていたのが見えた。


「あれ?珍しいですね、オーナーが外にいるなんて」

「なんだ、リズ達はこれから買い物か」


遙はリズの言葉には特に反応することもなく、リズの肩に乗るケット・シーに目を向ける。


「・・・ケット・シー、なんか丸くなったか?」

「にゃっ?!遙もそういうことを言うのにゃあ?!」

「あ、やっぱりオーナーもそう思います?」


リズもあまり気にしてはいなかったらしいけど、久しぶりにケット・シーを見た遙が言うのだから、太ったのはほぼ間違いないようだ。


「いつもリズに乗って移動してるから太るんじゃないか?」

「あたしは乗り物じゃないんですけど?オーナー」


酷いなぁ、と少しムッとした表情のリズに、遙は悪いと真顔で言う。


「オーナーはお仕事終わったんですか?」

「ああ、今は迎え待ちだ」

「外にいるってことは、オーナーは今は暇なんですか?」

「ある程度は終わらせたからな」


何気ない仕事の話をそのまましていたが、遙も飽きたのか一度、腕時計を見てから、口を開いた。


「それで、リズは買い物に行くんだろ?」

「あ、そうでした」


遙の言葉で思い出したように、リズはケット・シーを肩に乗せたまま、近くのスーパーに向かった。



  ○o。. ○o。.



買い物を終え、リズとケット・シーが店を出ると、少し遠いところで妙に人だかりがあり、騒がしいことに気付いた。


「この近くで火事があったみたいだにゃ」


ケット・シーが耳をピコピコと動かす。どうやら、ケット・シーはそこにいた人達の会話を聞き取ったようで。そう言われると、若干だが、焦げ臭いなとリズは思った。上の方を見ると黒い煙が見える。


「・・・ん?」

「リズ、どうかしたのにゃ?」

「今、何か上を通ったような気がしたんだけど」


他の人達がそれに気付いてる様子はない為、飛んでる鳥とかだろうと、ケット・シーは言った。リズもそれには納得する。ここでは傘で空を飛んでる人も普通にいるぐらいだし。


「まぁ、気にすることじゃないか」


リズ達はそのまま、家に帰ることにした。歩いていると、通りを現場に向かって救急車やら消防車が走っていく。


「人間は色々と大変にゃのにゃあ」

「それは仕方ないでしょ」



  ○o。. ○o。.



家に帰ると、リズは買ったモノをキッチンに置いて、すぐにリビングのテレビをつける。早速、帰りに見た火事はニュースになっていた。

先程の火事は、マンションの5階から出火していて、出火元と思われる一室が全焼したらしい。


「これ、さっきの火事じゃん?」

「そうにゃ、最近は何かと便利ににゃったからにゃあ、携帯とかで撮った動画がすぐに流れるのにゃ」

「それがいい事かは、また別の話だけどね」


リズはテーブルに頬杖をついてテレビを観ている。今回は放火とかいう訳じゃなさそうだが。


「・・・あれ?」

「どうしたのにゃ?」

「この、警察の人と一緒にいる女性(ひと)なんだけどさ」


消火活動が終わって、警察が原因とかを調べているらしい中継の映像。その中に、リズは見知った人物を見付けた。


「この女性がどうかしたのにゃ?」

「なんで現場にいるんだろう?」


小さくてわかりにくいけど、喪服を着た、ショートカットの赤い髪の女性。それは間違いなく、リンだった。


「葬儀屋ってこういう事もするのかしら?」

「きっと、この間からの放火事件と関連がにゃいかを、彼女は魔術師として調べてるのかもしれにゃいのにゃ」


つまり、今のリンは葬儀屋としているのではなく、ただの一人の魔術師として現場にいるということらしい。本人に聞いた訳じゃないので、真偽はわからないけども。


「結構大変なんだねえ、魔術師って」

「中には魔術を悪い事に使う奴がいるからにゃあ・・・もし、そういう奴が犯人だった場合、普通の人間じゃあ対応が出来にゃいのにゃ」

「そっか、それはそうだよね」


そのまま映像を観ていると、マンションの中から『何か』を載せた猫車(工事現場とかにある手押し車)を押して、人型をとっている猫らしき人物が出てきた。煤色の髪などを見るに、多分リンの仕え魔のフォティアだろう。


火車(かしゃ)が猫車を押してるのかー」

「にゃんでリズは、あの猫が火車だと知ってるのにゃ?」

「だって、この間シャンプーに来たもん」

「そうにゃのか」


リズの言葉に、ケット・シーはどこか納得したようだ。


「それにしても、何を猫車に載せてたんだろう?」

「被害者はいにゃいみたいだしにゃ?」


遠目で(さらにソレは焦げて真っ黒で)何なのかがわからなかったが、リズは猫車に載せられてたモノが気になったらしい。


「きっと出火の原因にゃんだと思うのだけどにゃあ」

「あ・・・普通に考えればそうだよねー」


ケット・シーはリズの反応に、呆れてため息が出た。リズはそんなケット・シーの反応を気にすることなく笑っていた。


「さて、夕飯の準備しようかな」

「我輩も手伝うのにゃ」


テレビをそのままに、リズは立ち上がり、キッチンに向かった。

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