休日の過ごし方
今日は店の定休日。天気は曇り空なので、リズは久しぶりに家でのんびりしていた。隣にはケット・シーもいる。リビングでテレビをつけていると、雷獣についてやっていた。
『──へぇー、こうやって雷獣を空に帰す方法もあるんですねぇ』
「ふーん、雷獣って駆除する以外にも、空に上げることもあるんだね」
「全部が全部、駆除したら生態系が崩れるのにゃ」
「・・・それもそうか」
「この間の雷獣は、ほとんどが駆除されたみたいだけどにゃ」
それはそれで可哀想だけど、人に被害を出す害獣ともなれば、仕方ないのだろうか。
「だからあえて大人しい雷獣を空に帰して、狂暴にゃのを駆除するのにゃ」
「そういう方法があるんだね」
でも、駆除とはどういう方法で行うのかがリズには気になった。
「簡単にゃのは、強い使い魔や仕え魔に喰わすことだろうにゃ」
「え、喰わせるの?」
「その方が、死体処理の手間が少し省けるのにゃ」
聞かなきゃよかったとリズは後悔した。それと同時にマヤが言っていたことを理解する。
「もしかして、フェンリルちゃんとマヤちゃんは・・・」
「全部が全部、そういう駆除の仕方をしている訳じゃにゃいにゃ」
「あ、そっか」
「ただ単に、返り血の可能性もあるのにゃ」
それはそれでリズには結構、残酷なんですが。
『──それで雷獣の捕獲方法なんですが、トウモロコシだけで捕まえられるんですか?』
テレビでは雷獣の捕獲方法もやっていた。
「へー、雷獣って主食はトウモロコシなんだね」
「だから雷獣が落ちてきた時に、罠にトウモロコシを入れて仕掛けておくと、結構な確率で入っているのにゃ」
なんて簡単に捕まえられるんだろうか。捕まえても狂暴っていうのがなんとも言えないけども。
「稀に大人しい雷獣を仕え魔にしている魔術師がいるのにゃ」
「あれ?でも雷獣って毒気を発してるんだよね?そんなの仕え魔にして大丈夫なの?」
「ちゃんとそこは訓練とかするのにゃ」
「・・・オーナーも触ってたけど大丈夫かしら」
「倒れてたりしてにゃ」
ケット・シーの冗談だとは思うが、そんなことになられてはリズは困ってしまう。
「大丈夫にゃ、ニュースににゃってにゃいだろう?」
「・・・そうだね」
ニュースになってなくても倒れてたりしたら困る。が、そういえば自分も近くにいたことに気付く。
「あたしがなんともないからオーナーも大丈夫か」
「遙の方がリズより弱くなければ、それで判断出来るのにゃあ」
「絶対にあたしより頑丈だわ、あの人」
「それは我輩もそう思うのにゃあ」
○o。. ○o。.
リズとケット・シーは買い物に出かける。次の休日までの食料を買いに行く。まぁ、週休二日なので大した量にはならないけど。
「今日の夜とー、明日のお昼と・・・あ、確かアレが残っているから違うのも作れるなー」
「リズー、カニカマが食べたいのにゃ」
「アンタには塩分多いからダメ」
「たまにはいいじゃにゃいかー」
「その一言がデブになる」
「リズは食には厳しいのにゃあ」
渋々、ケット・シーはカニカマを元のあった場所に戻す。凄く後ろめたそう。リズは知らんぷり。
「さて、必要なのはこれで大丈夫かな」
「我輩はカニカマ食べたいのにゃあ」
「しつこい」
ケット・シーの我が儘を笑顔であしらい、リズは買い物カゴを持ってレジに向かった。
○o。. ○o。.
買い物に行く時も店の前は通るのだが、帰りに店の二階を見る。明かりが点いているので、遙はいるようだ。
「オーナー生きてる・・・よね?」
「窓が開いてるし、大丈夫にゃ」
いくら何でも、窓を開けて明かりを点けたまま、出かけることはしないだろう。一応、遙は経営者である。
「お金とか、盗られたら不味いモノがあるだろうし」
「それはあったら死活問題だにゃ」
遙に問題はない(と思う)ので、リズは真っ直ぐ家に帰った。
○o。. ○o。.
あれからしばらく経つが、フェンリルは出てこない。いつもなら、呼んでもいないのに出てくる癖に。
「静か過ぎるのも、何だか気持ち悪いな」
遙は、事情を知っているであろう少女に何があったか聞こうと、スマートフォンを手に取る。
『この間の件で、フェンリルに何かあったのか?』
遙のメールに、意外にも向こうからの返事は早く来た。
『そちらからのメールなんて、珍しいですね
フェンリルに関しては何もないはずですが、何か変わったことでも?』
『いや、あれからしばらくフェンリルに音沙汰がないからさ』
『相当、雷獣駆除が疲れたんでしょうね
ただ寝ているだけでしょうから、気にすることはないですよ
フェンリルはお爺ちゃん(笑)ですからね』
「ははっ『お爺ちゃん(笑)』って」
酷い言われようである。だが、それが遙にはなんだか可笑しく思えた。
『じゃあ、そのまま放っておいて大丈夫なのか?』
『それは問題はないでしょうね
もしも気になるようならば、時間を見付けてそちらに行きますけど』
『いや、しばらくは様子を見ておく』
『無理はしないでくださいね』
とりあえず、問題はないようだ。この状態でフェンリルに死なれても、遙ではどうすることも出来ないので困るが。
『心配になったら、いつでも連絡してくださいね』
『ああ、ありがとう』
スマートフォンをテーブルに置き、遙はソファーに横になる。定休日でも遙はトリミングをしていることがあるので、たまにはこういう休日も悪くないような気がした。
○o。. ○o。.
少しだけ昼寝のつもりが、がっつりと寝ていたらしい。
「・・・寝過ぎた」
壁にかかる時計を見た遙は、どうしようか迷う。それだけ中途半端な時間だった。
「優のところにでも行くか」
窓とカーテンを閉め、明かりを消して、遙は家を出た。行くのは向かいにある喫茶店。
「いらっしゃい、遙、今日は暇だったみたいだね」
「定休日だからな」
カウンターの奥の席。遙はいつもこの席に座る。注文も変わらずコーヒー。
「遙、何か食べるかい?」
「んー・・・どうするかな・・・」
「遙がこういう時間帯に来るときは、買い物に行くにも中途半端な時だ」
「さすがだな」
「学生の頃からの付き合いだしね」
優は困ったなぁと言っていたが、全く困っているようには思えない。いつもそう。何だかんだで優は厄介事をいつの間にかに片付けている。
「出雲のシャンプーもしてもらってるし、今日は少しサービス」
そう言って優が出したのはカレー。少しというか、かなり大盛り。
「遙、これで足りる?」
「・・・多分」
遙の食べる量が多いのは、フェンリルに出会う前からなので、特に優や友人達は気にしていない。が、フェンリルと一緒になってから、さらに増えたので食費に関しては心配になる。
「遙って、相変わらず凄い量を食べるね」
「前からだろ」
「生活出来てる?」
「一応」
遙は黙々と食べている。普段は少し抑えているらしいので、この時とばかりのようだ。
「それだから店を出禁寸前になるんじゃないかな」
「ならないギリギリを保ってるからな」
「それは自慢にはならないよ」
遙の言葉に優はただ、苦笑するしかなかった。




