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魔獣美容師の日常  作者: 星咲 美夜
六匹目:雷獣
28/48

休日の過ごし方

今日は店の定休日。天気は曇り空なので、リズは久しぶりに家でのんびりしていた。隣にはケット・シーもいる。リビングでテレビをつけていると、雷獣についてやっていた。


『──へぇー、こうやって雷獣を空に帰す方法もあるんですねぇ』


「ふーん、雷獣って駆除する以外にも、空に上げることもあるんだね」

「全部が全部、駆除したら生態系が崩れるのにゃ」

「・・・それもそうか」

「この間の雷獣は、ほとんどが駆除されたみたいだけどにゃ」


それはそれで可哀想だけど、人に被害を出す害獣ともなれば、仕方ないのだろうか。


「だからあえて大人しい雷獣を空に帰して、狂暴にゃのを駆除するのにゃ」

「そういう方法があるんだね」


でも、駆除とはどういう方法で行うのかがリズには気になった。


「簡単にゃのは、強い使い魔や仕え魔に喰わすことだろうにゃ」

「え、喰わせるの?」

「その方が、死体処理の手間が少し省けるのにゃ」


聞かなきゃよかったとリズは後悔した。それと同時にマヤが言っていたことを理解する。


「もしかして、フェンリルちゃんとマヤちゃんは・・・」

「全部が全部、そういう駆除の仕方をしている訳じゃにゃいにゃ」

「あ、そっか」

「ただ単に、返り血の可能性もあるのにゃ」


それはそれでリズには結構、残酷なんですが。


『──それで雷獣の捕獲方法なんですが、トウモロコシだけで捕まえられるんですか?』


テレビでは雷獣の捕獲方法もやっていた。


「へー、雷獣って主食はトウモロコシなんだね」

「だから雷獣が落ちてきた時に、罠にトウモロコシを入れて仕掛けておくと、結構な確率で入っているのにゃ」


なんて簡単に捕まえられるんだろうか。捕まえても狂暴っていうのがなんとも言えないけども。


「稀に大人しい雷獣を仕え魔にしている魔術師がいるのにゃ」

「あれ?でも雷獣って毒気を発してるんだよね?そんなの仕え魔にして大丈夫なの?」

「ちゃんとそこは訓練とかするのにゃ」

「・・・オーナーも触ってたけど大丈夫かしら」

「倒れてたりしてにゃ」


ケット・シーの冗談だとは思うが、そんなことになられてはリズは困ってしまう。


「大丈夫にゃ、ニュースににゃってにゃいだろう?」

「・・・そうだね」


ニュースになってなくても倒れてたりしたら困る。が、そういえば自分も近くにいたことに気付く。


「あたしがなんともないからオーナーも大丈夫か」

「遙の方がリズより弱くなければ、それで判断出来るのにゃあ」

「絶対にあたしより頑丈だわ、あの人」

「それは我輩もそう思うのにゃあ」



  ○o。. ○o。.



リズとケット・シーは買い物に出かける。次の休日までの食料を買いに行く。まぁ、週休二日なので大した量にはならないけど。


「今日の夜とー、明日のお昼と・・・あ、確かアレが残っているから違うのも作れるなー」

「リズー、カニカマが食べたいのにゃ」

「アンタには塩分多いからダメ」

「たまにはいいじゃにゃいかー」

「その一言がデブになる」

「リズは食には厳しいのにゃあ」


渋々、ケット・シーはカニカマを元のあった場所に戻す。凄く後ろめたそう。リズは知らんぷり。


「さて、必要なのはこれで大丈夫かな」

「我輩はカニカマ食べたいのにゃあ」

「しつこい」


ケット・シーの我が儘を笑顔であしらい、リズは買い物カゴを持ってレジに向かった。



  ○o。. ○o。.



買い物に行く時も店の前は通るのだが、帰りに店の二階を見る。明かりが点いているので、遙はいるようだ。


「オーナー生きてる・・・よね?」

「窓が開いてるし、大丈夫にゃ」


いくら何でも、窓を開けて明かりを点けたまま、出かけることはしないだろう。一応、遙は経営者である。


「お金とか、盗られたら不味いモノがあるだろうし」

「それはあったら死活問題だにゃ」


遙に問題はない(と思う)ので、リズは真っ直ぐ家に帰った。



  ○o。. ○o。.



あれからしばらく経つが、フェンリルは出てこない。いつもなら、呼んでもいないのに出てくる癖に。


「静か過ぎるのも、何だか気持ち悪いな」


遙は、事情を知っているであろう少女に何があったか聞こうと、スマートフォンを手に取る。


『この間の件で、フェンリルに何かあったのか?』


遙のメールに、意外にも向こうからの返事は早く来た。


『そちらからのメールなんて、珍しいですね

フェンリルに関しては何もないはずですが、何か変わったことでも?』

『いや、あれからしばらくフェンリルに音沙汰がないからさ』

『相当、雷獣駆除が疲れたんでしょうね

ただ寝ているだけでしょうから、気にすることはないですよ

フェンリルはお爺ちゃん(笑)ですからね』


「ははっ『お爺ちゃん(笑)』って」


酷い言われようである。だが、それが遙にはなんだか可笑しく思えた。


『じゃあ、そのまま放っておいて大丈夫なのか?』

『それは問題はないでしょうね

もしも気になるようならば、時間を見付けてそちらに行きますけど』

『いや、しばらくは様子を見ておく』

『無理はしないでくださいね』


とりあえず、問題はないようだ。この状態でフェンリルに死なれても、遙ではどうすることも出来ないので困るが。


『心配になったら、いつでも連絡してくださいね』

『ああ、ありがとう』


スマートフォンをテーブルに置き、遙はソファーに横になる。定休日でも遙はトリミングをしていることがあるので、たまにはこういう休日も悪くないような気がした。



  ○o。. ○o。.



少しだけ昼寝のつもりが、がっつりと寝ていたらしい。


「・・・寝過ぎた」


壁にかかる時計を見た遙は、どうしようか迷う。それだけ中途半端な時間だった。


(ゆたか)のところにでも行くか」


窓とカーテンを閉め、明かりを消して、遙は家を出た。行くのは向かいにある喫茶店。


「いらっしゃい、遙、今日は暇だったみたいだね」

「定休日だからな」


カウンターの奥の席。遙はいつもこの席に座る。注文も変わらずコーヒー。


「遙、何か食べるかい?」

「んー・・・どうするかな・・・」

「遙がこういう時間帯に来るときは、買い物に行くにも中途半端な時だ」

「さすがだな」

「学生の頃からの付き合いだしね」


優は困ったなぁと言っていたが、全く困っているようには思えない。いつもそう。何だかんだで優は厄介事をいつの間にかに片付けている。


「出雲のシャンプーもしてもらってるし、今日は少しサービス」


そう言って優が出したのはカレー。少しというか、かなり大盛り。


「遙、これで足りる?」

「・・・多分」


遙の食べる量が多いのは、フェンリルに出会う前からなので、特に優や友人達は気にしていない。が、フェンリルと一緒になってから、さらに増えたので食費に関しては心配になる。


「遙って、相変わらず凄い量を食べるね」

「前からだろ」

「生活出来てる?」

「一応」


遙は黙々と食べている。普段は少し抑えているらしいので、この時とばかりのようだ。


「それだから店を出禁寸前になるんじゃないかな」

「ならないギリギリを保ってるからな」

「それは自慢にはならないよ」


遙の言葉に優はただ、苦笑するしかなかった。

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