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新しい私(???視点)

この世界に来て、もう五年目。

この世界にももう慣れちゃってちょっと忘れかけていたけれど、私は本当はここに居るべき存在ではない。

…でも、いいじゃない。

あの世界で報われなかった私に、もっと幸せを頂戴よ。


あれ私がまだ中学生だった頃の事。

シングルマザーだった私のお母さんに、恋人ができたの。

しかもその人には私と同い年の子供がいて、なんでもそつなくこなすその男の子は私の居場所を奪って行ったの。

二人が結婚する頃には、私の心の拠り所は「家族」ではなく「ゲーム」に変わっていたわ。


私は数あるゲームの中でも、「乙女ゲーム」と呼ばれる恋愛シュミレーションゲームが特に気に入っていた。

ああ、何度憧れただろうか。

誰からも愛される可愛らしいヒロイン。

そんなヒロインを取り巻く素敵なキャラクター達。


でも、そんなある日私は夢で彼に出会ったの。

深くフードを被った彼は自分を「M」と名乗って、私の心の奥の奥に優しく囁いた。


「乙女ゲームの世界に行ってみたいか?」


彼が言うには、乙女ゲームの世界のもう一人の私と心を入れ替えるというものらしかった。

もう一人の私のことは分からないけれど、私は迷わずYESと呟いたわ。

私に居場所をくれるのなら、彼がたとえ悪魔でも構わなかった。

もう一人の私に恨まれても構わなかった。


___翌朝目が覚めると、私の首元には小瓶の飾りのついたネックレスがかかっていた。

…きっとこれだわ。これで飛び立てる。

私はそう確信し、小瓶の中身を飲み干した。


さよなら、独りぼっちの醜い私。

次は絶対に上手くやって見せるんだから。



--------------------



目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。

咄嗟に机の上の鏡を覗けば、そこには以前とは比べものにならないくらい美しい「自分」の姿が映し出された。


ああ、これが私なのね。

そう呟いて笑った頃には、もう一人の私への罪悪感など全く感じていなかった。


流れ込んで来るもう一人の私の記憶を受け止めながら、私は天蓋付きのふかふかしたベッドに体を沈めた。


夢の中では、Mが楽しげに笑っていた。

どうしたのかと聞けば、Mは笑いながら答えた。


「元の世界へ戻るための薬の入った小瓶をもう一人の君に渡したんだ。

でも、彼女ったら君の話を聞いて泣いたんだよ?

君とは違う。いい子だよね」


ふーん。

本当にそれしか言いようがない。

もう一人の私がどうなろうと私には関係無いことだから。



--------------------



4月。

私はゲームと同じ桜ヶ丘高校に入学した。

…が。

遅刻イベントは起きない、攻略キャラとも遭遇しない。

そんな日々が続いてやっと気づいた。


「なんで私が主人公ヒロインじゃないの…?」


やっぱりヒロインになんてなれないのね。

世界は変わっても、私の運命は同じなのね。

…そう、それなら。


それなら、いっそ壊してしまえばいいのよ。

この世界は、私だけの物なのだから。



お気に入りありがとうございます。




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