三人でお弁当
本日2話目です。
帰りたい。
今すぐ帰りたい…。
何故って?
そうだよ、帰ってきたらまた机ににんにくが…にんにくがあったのよ!
「唯香ちゃん…?大丈夫?」
そう言って柚葉ちゃんが心配そうな顔をするもんだから、私は思わずにっこりしてしまった。
…だが。だが許しはしない!
私は爽やか失明野郎をキッと睨んだ。
前世と違って垂れ目だし緑の目だから迫力はないであろう。
それでも睨んだ。
視線がナイフなら確実にヤツは死んでいるくらい!
すると、爽やか失明野郎が謝罪のためかゆっくりと此方に歩み寄ってきた。
…スライディング土下座じゃなきゃ許さないよ?
「馬渡さん!喜んでくれたんだね!」
「…は?」
私は絶句した。
喜んだ?あり得ないでしょ!
そもそもにんにくなんて誰が喜ぶんだ!
…まあ、自己紹介で言ってしまったのは私だけど。
「井上君。私にんにくなんて好きじゃないの!」
大きめの声でそう告げた。
ほら、にんにくプレゼントが何故か日常化しつつあったから周りも驚いてるじゃないか。
…そして張本人もポーズ付きで驚いてる。
「そうだったんだ!ごめんね…」
意外と素直でびっくりした。
じゃあキャビアが好きって言ってたら持って来ていたのだろうか。
…それもそれで困るけど。
「うん、大丈夫。」
「じゃあ明日からちゃんと焼いてくるからな!」
…はい?
焼いてくる?
そういう問題じゃNEEEEEEEEEE!
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その日の昼休み。
私は何故か柚葉ちゃんと生徒会室に来ていた。
「城ヶ崎さん、どうもありがとうございます」
「いえいえ!どんどん頼ってくださいね?」
なんだこれ。
柚葉ちゃん、説明しなさいよコラ!
「ああ、城ヶ崎さんに頼んで貴女を連れて来てもらったんですよ」
うわあああ、会長の営業スマイル久々だ。
それにしても何でだ。
まさかあれか!?
お母さんに手は出さないけどお前がカラダで払えよ的な?
「よからぬことを考えていませんか?
僕は貴女に興味を持っただけですよ」
「あ、そりゃどうもです」
もう訳がわからん。
結局会長と柚葉ちゃんの3人でお昼を食べることになってしまった。
柚葉ちゃん、私じゃなくて姫奈ちゃんをサポートしてくれ!
…いや、会長の食事の姿は拝んでみたいけど。
そして、何故か会長の家のお弁当をいただいてしまった。
お弁当というより…おせち料理?
いつもこんなに食べているんですか?
それでそんなに細マッチョなんですか?
殴っていいですか?
私なんてポテチ一袋で太るのに!
うわあああん…。
食べ終わってぼーっとしていると、柚葉ちゃんがまだ必死で食べているのが目に入った。
「城ヶ崎さんは少食なのですね」
そう言って会長が笑うと、柚葉ちゃんは頬を染めながら小さく笑い、こくんと頷いた。
…くはっ!お二人とも写真いいですか?
柚葉ちゃんが最後の一口を食べ終えた頃予鈴がなった。
お礼を言って生徒会室を出ようとしたところで、何故か会長に呼び止められた。
「馬渡さん、ちょっと。城ヶ崎さんは先に帰っていてもらって大丈夫ですよ」
すると柚葉ちゃんが一瞬淋しげな顔をした。
そうよね、ずっと見ていたいよね!
会長のビューティフルフェイス!
柚葉ちゃんがお礼を言って去った後、会長は素に戻った。
嗚呼、王子様!行かないで!
「俺が今日お前を呼んだのは…あれだ。
この前礼子達の食事を羨ましそうに見てたから…だ」
か、かいちょー!
なんですか、こんなスチルあったかな!?
あの会長が赤くなってる!
赤くなってそっぽを向いているよ!
しかも気を遣ってくれたのね…。
「あ、ありがとうございます…このご恩は忘れません!」
「そこまでしなくていい。その代わり…」
その代わり?
「お前が欲しい」とか言われたらどうしよう!
きゃはっ!楽しい!
「その代わり、会長っての…やめろ」
「…はい?」
「俺の名前は蓮斗だ。会長じゃない」
うわー、これゲームであったぞ。
てかなんで私が発生させてるんだ。
あ、柚葉ちゃん。お前のサポートかっ!
そういえば、この前柚葉ちゃんに
「姫奈ちゃんどう思う?」
って聞いたら嫌そうな顔したのよね。
やっぱりゲームと現実じゃ違うのかな?
よくわからないな。
とりあえず私は、「ありがとうございました、蓮斗先輩!」と笑顔で言って生徒会室を去った。
これ以上変なフラグが立つと嫌だしね!
それにしても、今日の柚葉ちゃんのハーフアップは可愛かったな。
ツインテールはまだ勇気がいるって言ってたけど、三つ編みはやめるらしい。
…柚葉ちゃん、早く私好みに染まれ〜!
ほくそ笑む私を、すれ違う生徒達が変な目で見ていた。
違うよ!痛い子なんかじゃないよ!
いいえ、十分痛い子です!
お気に入りありがとうございます。




