しいろのむげんぼうけん!
はじめましてのかたははじめまして。
ねきつです。ひさしぶりに話が書き終わったので投稿させていただきました。
この話は、私が書いた他の話と友人が書いた話が混ざり合っています。もしかしたら訳が分からない箇所があるかもしれません
その場合は申し訳ない限りでございます
黒闇陽死色は片付いていない自室(抄夜の部屋)でなんとなく、座っていた。抄夜は学校に珍しく行ってしまい、部屋には一人である。
「んー、(眠)でし」
目を擦りながら死色はそういった。勿論、「んー、かっこねむかっことじでし」と発音した。なぜかっこをつけたのかは永遠の謎である。
「こーしてれば、しーたんはお人形さんになれるかもしれないでしねーふひひーひー」
本気でいってるのか冗談でいっているのか定かではないが死色はそう呟いた。
その瞬間、自室(抄夜の部屋)が一瞬暗くなり死色の目の前に朱色君のような格好をしている小さい妖精が現れた。妖精のようなそれは不気味に笑っている。
「よーぉ、死色。元気だったか?」
「しゅ、朱色君、でしか?」
「せーかーい! ふはは! 俺、妖精になっちまったぜー!」
「おぉお! すごいでし、流石朱色君でしっ! しーたん、朱色君ならやると思ってたんでしよっ! あれ、やるって何をでしか?」
死色は自分で喋っている途中に自分で何を言っているのかが分からなくなったようだ。それをみて朱色妖精は笑った。
「ふははは! 死色はやっぱりかわんねーなぁ! シュークリームのチームをもー1回組むか!?」
「シュークリームおいしーでしよね!」
「あの時は懐かしいよなー、馬鹿ばっかやってたわー」
「おいしーでしねぇ」
かなりの勢いで話が噛み合っていない気がするが、本人たちは別にきにしてなさそうなのであえてスルーしておこう。
朱色妖精は空中で10回転ぐらいしてから、死色の頭の上に立った。
死色は朱色妖精が見えなくなり、どこにいったのかと、きょろきょろと周りを見渡した。そして、見つからず、首を傾げる。
「上だぜ、上」
「上でしか!?」
死色はがばっと急に上を向いたので朱色妖精は死色の頭から落ちそうになってしまった。黒闇陽で鍛えられた体がなければ(ないけど)落ちていただろう。
「いないでしよぉ?」
「前を向いてくれ、俺が落ちちまうぜ」
「う?」
死色はよく理解できなかったが、前を向いてくれと言われたのでとりあえず前を向いた。
「今さぁ俺」
「カフェオレでしね」
「皆のお願いを叶えるイベントしてるんだー、すげーだろ」
「さっすが朱色君でしね! 愛とアンパンマンでしね! ふひひひひひっ!」
愛と勇気のうちの勇気を忘れてしまったらアンパンマンの友達は愛しかいなくなってしまう。それではアンパンマンがただの愛の戦士(主にストーカー)に成り果ててしまうではないか。
「それで、だ! 死色!」
「すごいでしっ!」
何が凄いんだ。
死色という名前が凄いのか?
「死色の願いを叶えてやろう! ふはははは!」
「でしか! ふひひひひ!」
「お人形にしてやるぜっ!」
「う?」
「アンドュートォーアー! ミラクルマジックハンドー! スペシャルゥー!」
謎の呪文を唱えた後、ピンク色の煙がぼんっと出てきて死色を包んだ。
その煙がなくなった頃には、死色は動かなくなり永遠の人形になりましたとさ。おしまい。
では、なく。確かに謎の魔力で死色はお人形になっちゃいますが、終わるわけにはいかないのです。朱色妖精がわざとなのか偶然なのか「こーしてれば、しーたんはお人形さんになれるかもしれないでしねっ! ふひひっ!」という台詞を聞き間違えて死色のお願いを叶えてしまった、というわけで。
「よし、お願い完了したぜっ! …………て、死色が動かねぇー!」
朱色妖精は普通に戸惑っているようだ。
「え、なんで、動かねーんだ? んーと、えーーと、えぇーーーと」
朱色妖精は宙を回転しながらしばらく悩んだ後にはっと思い付いたような顔をした。
「お人形にしたからだ!」
動いてばかりいて脳味噌まで筋肉になっていた朱色妖精はやっと『お人形は動かない』ということに気づいたようだ。もしかしたら死色より馬鹿なのかもしれない。
朱色妖精は瞬きもしなくなった死色をみて、困惑したような顔をした。
「うわー、やべーよ。俺。実質、殺したようなものじゃねーか」
もう一回、死色のために「もとに戻る」というお願いを叶えようと朱色妖精は呪文を唱えたりするが無反応。どうやら、一人につき一つの願いしか叶えられないようだ。
ということは、誰かが死色が戻るように願えば死色は元に戻るだろうが、それを願うであろう人間は今、ホタテに行ってしまっている。普通の人間には見えないはずの朱色妖精には何もできないだろう。
と。
朱色妖精が部屋の中を無意味にぐるぐる回っていると、扉が開く音がした。
「ここ、死色の部屋じゃねーのか?」
無論、ここは抄夜の部屋であり死色の部屋ではない。死色が自分の部屋の床(抄夜の部屋の天井)をぶち抜いてからは、共用スペースのようになっているが。最近、はしごをたてて抄夜も上にのぼれるようになった。
「うわ、汚いかな!」
「るーるるーるーるるるー」
二人の声が玄関の方から聞こえてきた。
「片付けできないのかな、しょーやんは」
「るーんるーるるーるー」
「会話が成立してないかな!」
以前抄夜はこう言っていた。「確かに名莉海君がいなくなってから僕は自立して片付けが出来るようになりました、とかってなったらそりゃ美しい話だけどさ、僕がそんな都合よく片付けが出来るようになると思ったら大間違いだよ」と。つまり、抄夜に掃除の話をすると基本スルーする。
名莉海君がいなくなってから1年半ぐらいになった今でもそう言うだろう。
そして、部屋に入ってきたのは高校生になった例の粗蕋抄夜と、かなかな煩い歌乾封磨である。二人は早足で部屋に入ってきて死色を見つけるやいなや飛び付くように(飛び付くように、は言い過ぎかもしれない)寄っていった。
「手、遅れたね」
「日本語を話してほしいかな」
勿論、子供でも純粋でもない抄夜と封磨には朱色妖精が見えるわけではない。封磨なら努力をすれば見えるようになるかもしれないが。
「雫君が突然電話してきたからいそいで帰ってきたけど……うーん、もうちょっと早く言ってくれないかな……」
どうやら雫が抄夜に電話をして死色がこうなることを伝えていたようだ。因みに会話だけ抜き取るとこうなる。
『やあやあや、雫君だよー! しゃららーん、ここで速報です。なんとビックリ、死色たんがお人形さんになってしまうそうです。ここでフィギュア博士の暁人に解説をお願いしましょー』
『変な異名をつけるなよ、塵屑が。抄夜君、君の家にいる可愛い死色ちゃんがどうやら大変なことになるみたいだよ。雫がそう言うだけだけど、まあ、当たるから』
『そういや、この前、ゲームの発売日だったけど抄夜君はやったー?』
『俺はあんまりゲームしねーからなぁ、暁人はやったのか?』
『え? ああ、雫が作ったゲームよりははるかに楽しかったけど暁人ちゃんの感想としては――――』
『真面目に話してくださいっ!』
『『『すみません』』』
後半半分はもう死色の話とは全く関係ない。
それを抄夜と封磨は聞いて、急いで抄夜の家へ帰ってきた、というわけである。
「お人形さんになるってどういうわけかと思ったけれど、普通にフィギュアみたいになるとは」
「お人形というと香々ちゃんとか湖を思い出すかなー」
「懐かしいね、そんなこともあったなぁ」
因みに朱色妖精はふざけ半分の二人を見ながらその辺をぐるぐる回っている。なんかぶつぶつといっているがその言葉まで話に書くと混沌とするので書かないが。
「そういえば雅さんはどうしてるの? 見ないけど」
「雅さんかな? 『私は自分の人生をもう一度見直すのです』とかいって絶賛留年中かな」
「無駄にかっこいいね」
そういいながら抄夜はポケットから一枚の真っ白な紙切れを取り出した。形は………そう、タロットのような形をしている。それを中指と人差し指の間にその紙を挟んで死色の方に向けた。
そして、抄夜は目を閉じた。
「精霊よ、我は―――って恥ずかしいよ、これ!」
抄夜は目を開いて紙切れを床に叩きつけた。
「厨二病かな」
「くそ…………、ママめ」
「頑張るかな」
「淡々と応援される方が刺さる。主に心に刺さる」
抄夜はもう一度同じポーズをとって目を閉じた。
「精霊よ、我は邪気なる血を……ってなんだよ! 邪気なる血ってなんだよ!」
「呪文に意味を求めちゃいけないかな」
三回目。
「精霊よ、我は邪気なる血を受け継ぐ者なり、玉響の願いを聞き入れ、我の願い聞き届けたまえ!」
抄夜の周りを水のように七色の光が回転して、空に昇っていったかと思うと、上から死色の方に落ちてきて光が死色を包んだ。
「………でし?」
死色は目を開いてぱちぱちと瞬いている。
「よ、よく言えたかな!」
「はじめて笑わないで言えた………!」
らしい。
どうやら男子高校生がいうには痛々し過ぎる呪文のようだ。まあ、呪文で痛々しくないものはないので、これからも抄夜には頑張っていただきたい。
「朱色君はどこでしか?」
「朱色?」
「でし」
「朱色、ってだれ?」
「う?」
死色が周りを見渡すが朱色妖精の姿はどこにもない。見えるとすれば、封磨の後ろにある大きい影だけである。ボブショートで薄く笑っていながらフルートを吹いている影だけ。
「かなっ!」
死色の目線を感じたのか封磨はなぜか叫んだ。
「不穏な空気を感じるかな! しょーやん、ぼくは帰るかな!」
どうやら死色の目線を感じたわけではないらしい。
封磨は慌ただしくダッシュで抄夜の家から出ていった。それを見ていたであろう、さっきから死色の部屋に潜んでいた人物は死色が開けた穴から顔だけ出して呟いた。
「なんで、わかっちゃうかなぁ。新しい遊びをしようと思ってただけなのになー」
その声をきいて抄夜と死色は上を向いた。
「やっほーぉ、抄夜君としーたん。僕だよ」
「どうもです、雪さん」
「でし!」
それをみて、雪は笑ってから上から飛び降りて、テーブルの上に立った。
「あー、もう。封磨君って勘がよすぎると思わない? 僕が来てまだ一秒とたってないうちに逃げたよ」
「その勘のよさが適応されるのは雪さんだけですね」
「あれ、そうなの? 僕、愛されてるなぁ。雫と封磨君だったら断然雫を選ぶけどね、きゃは」
ものすごい棒読みで「きゃは」をいうとこうなりますよっていう見本のような棒読みの「きゃは」であった。
「それにしても、抄夜ちゃん」
「ちゃん………」
「タロットカードがなくても使えちゃうんだね、わぁーすごーい憧れるぅ」
「まあ、変なの唱えないときちんと使えませんけどね」
「へー、そうなんだ」
「唱えるの恥ずかしいんですけどどうすればいいですかね」
「唱えなきゃいいんじゃない?」
「え?」
「唱えなきゃいいと思うよ」
「あ、はあ」
なんの解決にもなっていない答えをもらって抄夜は戸惑いつつも頷いた。ある意味大人の対応だ。中学生だった抄夜ならば「答えになってません」ぐらいは普通に言っていたであろう。その成長が良いことなのか悪いことなのかと聞かれたら笑顔で横に首を降ることしか出来ないが。
「あ、そーだ。しーたん」
「でしか?」
「そうそう」
「わかったでしっ! ふひひっ」
雪と死色の心は通じてるようだ。
「いや、絶対通じてないって!」
抄夜がそういうと雪は目を丸くして抄夜をじっとみた。
「な、なんですか」
「いや、別に。……しーたん」
「でしね」
「そうそう、空たんが呼んでたからあそこのファーストフード店に行ってあげてね」
「わかったでしっ!」
死色は座ったまま敬礼をした。さっきまで人形みたいに固まっていたなんて考えられないほど滑らかな動きである。
「それにしても、密室のはずの部屋で死色が襲われるなんて不思議だな」
「しーたんのお部屋は鍵かかってないでしよ?」
「今すぐ閉めてこい」
「わかったでし!」
死色は上に飛び上がろうとして何か思ったのか雪の方を向いた。
「教えてくれてありがとぉでし!」
死色は雨が降っててもこの笑顔さえあれば晴れ渡るんじゃないかっていうぐらいのまっすぐで光輝いている笑顔を雪に向けた。
「ん」
眩しすぎる笑顔から雪は目を背けながら頷いた。
それをみて、死色は首を傾げてから上にぴょーんと飛び上がって上の階に着地した。常人には到底できない離れ業である。
「じゃあ行ってくるでし」
下にいる二人に手を振って死色は玄関の方に向かって歩いていって抄夜に言われた通り鍵を閉めてから扉を開けようとしたら開かなくて仕方なく鍵を開けて外に出た。
つまり、鍵を閉めないで外に出た。後で抄夜に怒られる気がする死色である。
階段を降りて、抄夜の部屋の前まで歩いていって扉の前で「ごめんなさいでし」と言ってから下に降りていった。
とりあえず、道路の方へ出たが死色に方向感覚がわかるわけもなく、戸惑った。それにまず、死色が空を覚えているわけもなく、よくわからないが言われたから向かっているだけであって死色個人に別に意味があって向かっているわけではない。
挙動不審にきょろきょろと周りを見渡して適当な方向に曲がろうとしたとき左手側に妖精のような影を見つけた。
「朱色君でし!」
死色は影の方にてってってーと走っていった。
「あ、死色」
朱色妖精は死色に気づいて振り向いた。
「どこいってたんでしか! 探したでしよ!」
「あー、ごめんごめん」
朱色妖精は謝ってから死色の頭の上に乗った。死色はまた朱色妖精がいなくなったのかと思って周りを見渡した。
「頭の上にいるぜ」
「おぉー!」
「所でどこに行くんだ?」
そう朱色妖精にいわれて死色は「あれ? どこにいくんでしっけ?」と首を傾げた。しばらく考え込んでもよく思い出せなかったため、とりあえず、よく名莉海君と待ち合わせしていた駅に向かおうと思って朱色妖精にそう説明した。
「ふーん」
朱色妖精はあまり興味が無さそうに呟いた。
「駅ってどこでしっけ」
にゅー? と首を傾げつつも駅がありそうな方向に向かって歩いてみることにしたのか死色は歩き出した。
そっちの方向はどちらかというと商店街の方向なので駅に向かうには遠回りだがファーストフード店は商店街にあるので強ち間違えてはいない。まあ、目的地を覚えていなければ着くことは永遠にないだろうが。
「ところで死色よー」
「でし?」
「抄夜? だっけ? の家に住んでんの?」
「あそこはしーたんのお家でし」
「お家」を「おいえ」と少々間違えた発音をしながら少々間違えた答えを返した。
「じゃあ、抄夜とか言うやつが死色の家に住んでるのか?」
「違いましよ、あそこは抄夜君のお家でし」
「んあ?」
朱色妖精は首を傾げた。これで理解できたらきっと神になれるであろう。妖精になれたが神にはなれなかった朱色妖精である。
しばらく歩き続けたら商店街の近くまで来てしまった、死色一行は周りを再び挙動不審に見渡した。普通に迷子である。
「―――よっ!」
「でし!?」
突然、死色の頭を跳び箱にして死色を飛び越えたのは猫耳パーカーにスカートを穿いて安全靴をはいている少年であった。その瞬間に潰された朱色妖精は潰れて死んだだろうがその少年は知らないことである。
朱色、三度目の死。
皆さん、手をあわせてください。
「よっ! えーと、しーたんだっけ?」
「誰でしか!? 殺しましよ!」
「えー、それは困っちゃうなぁ」
死色とあまり変わらない身長をしている少年は困ったようにフードを撫でた。
フードの隙間から見える短い髪の毛の先端は薄く青い。
「ぼくの真名は不明朗」
「しーたんでし」
「結構前に顔は合わせたことはあるけど、会話はしてなかったよね。たしか」
「そぉでしか?」
死色は首を傾げた。不明朗もそれにあわせて首を傾げる。
「空がここに死色が来るはずだから待っとけって言われたんだけど……さっき封磨とわんころが猛スピードで通りすぎてったからビビったよ」
「でし?」
「んじゃ道案内してあげるよ、どうせたどり着かないんだろ?」
「でも、知らない人についていっちゃ駄目なんでし!」
「知らなくないから大丈夫だよ」
死色は不明朗から逃げようと振り向いたが不明朗が死色の頭を掴んで止めたため死色は逃げることができなかった。
「剣を持ったらしーたんの方が強いと思うけど日常的な強さはぼくとそんなに変わらないと思うよ。ぼくは今、めっちゃ武装してるしねー!」
「で、でしし!」
「大丈夫、大丈夫。痛くはしないよ。少しの辛抱だ、天井のシミの数を数えていればすぐにおわ―――――」
「なにが終わるんだこらー!」
不明朗がセクハラに似た台詞を吐いている瞬間に不明朗の手に向かって鞘に入ったままの刀が飛び込んできた。不明朗は鞘に入っている刀を特に避けずにいたため普通に当たった。ガィンという音がなる。
「んな!」
刀をふるった本人である曙は驚いたような声をあげた。
刀と謎の鉄らしきものが当たったことによる振動で手を痛めたのか刀をそのまま、落としてしまった。
「誰でしか!?」
死色は頭を掴まれたまま横を向いて自分を救ってくれそうであった人の方を向いた。その人物はツインテールをしていて学ランを着ている、そしてスカートをはいている死色より少し背が高いであろう女の子であった。
スカートは不明朗と同じものに見えるのはきっと気のせいだろう。気にしないで下さい。
「う?」
再び知らない人が出てきて戸惑う死色だった。
「死色ちゃん、曙だよっ!」
「うう?」
「ペロペロキャンディの!」
「あぁ! 曙ちゃんでしね!」
「やっぱり、お菓子でしか認識されてなかった!」
どうやら曙はペロペロキャンディでぎりぎり死色に覚えられていたようだ。
「いやぁ、久しぶりなのに死色ちゃんは変わってないなぁ」
「でしか? ふひひ」
「ぼくを除け者にしないでよ!」
不明朗は二人に突っ込むと曙は冷ややかな目で不明朗をじと目でみた。セクハラ紛いの発言をしたものには当然の報いである。
「黙れ、セクハラ野郎」
「にゃ、んだと! 変態度は低いぞー、探偵とか封磨よりはましだぞ。それに言葉の意味がわかるとかどんな本を読んでるのかにゃー? お、じょ、う、さ、ん?」
「な!」曙は頬を真っ赤に染めた。「お嬢さんとかって言われる歳じゃないし! それに曙の方が君より背が高いんだからね! 年上さ、ふふーん!」
曙は腕を組んで自分より背が低い不明朗を見下ろした。しかし、自分より背が低いからって年下だと思ったら大間違いである。
「何歳?」
「13歳っ!」
なるほど、自分が年のわりに幼い顔だと自覚してるからそんなことが言えたに違いない。しかし、それを越える童顔がいることは知らなかった。
「ごめん、ぼく、その倍ぐらい生きてる」
不明朗は軽く、自分より背の高い曙は嘲笑いつつ言った。
「へ?」
「お嬢さんだね、まだまだ。あははははっ! 乳臭いお嬢さんにはぼくは刺激が強すぎるかな」
「…!???」
曙にはよく理解が出来なかったみたいだ。まあ、単純に言えば不明朗の方が長生きしているというわけである。
「それに、武器を振るう前に相手をきちんと見ておかないと怪我するよ? ねー、しーたん」
「でし?」
死色は不明朗にいわれた台詞に首を傾げた。そんな死色をみて、曙は死色より首を傾げた。昔、死色とぶつかった時に死色の強さは分かりきっていて、なのに武器を振るう前に相手を確認する、なんていう初歩的なことに首を傾げたから曙は疑問を感じたに違いない。まぁ、死色は実践派でしかも感覚で戦っているようなものだから当たり前と言われれば当たり前なのだけど。
「とりあえず行こうよ、しーたん。それに曙も目的地は空だろ? なら皆で行こうよ、夢の旅へ………」
不明朗は落ちていた刀を拾って曙に手渡した。曙はそれを受けとる。
「知らない人から武器を受け取っちゃダメだよ、君が幼女じゃなかったら殺してるよ?」
「……ぬ」
不明朗はそういって商店街の中へと足を進めていった。死色は何で外にいるかも忘れてしまっていたので何となく、着いていくことにしたのか不明朗の後を追っていった。曙は少し悩んでから不明朗と死色の後を追うことにしたらしい。
死色は不明朗の後を追いつつも朱色妖精がどこに行ったのか考えていた。
「そーいえばさぁ、しーたん」
「でしよ」
「へーそうなんだー………ってまだ聞いてねーしわかんねぇよ!」
「う?」
「う? じゃないよ、しーたん。いつも君のとなりにいた人はどこに行ったの?」
「う? 名莉海君でしか?」
「あーうん、たぶん」
「名莉海君はでしねー」死色は考えるような仕草をした。「星になったでし」
「あ、ごめん」
ここで注意書をしておきますが名莉海君とやらは死んでいません。その人が言い残した言葉がすべて悪いのです。
「お前も重いものを背負ってるんだなぁ」
「そーでしか? ふひひっ」
何度も言いますが、名莉海君とやらは生きてます。
そして、商店街に入ってすぐのところに、よく見るファーストフードの店を見つけた死色一行は店の中に入っていって二階席の方を目指して階段を登り、空を探した。
いつもの空だったら階段のところに迎えに来るはずだが見当たらない。
「あっれー、空がいないや」
「帰ったんじゃないの?」
「でし?」
「あー、それはないかなー、空だったら待ち合わせ時間ピッタリに来るはずだから………ってまだ待ち合わせ時間じゃないからいないのか」
「待ち合わせ時間まであと十秒だね」
「でし?」
「ごー、よん、さん、にー、いち」
不明朗が数え終わった瞬間に階段を登りきった影が出てきた。それは空であり、時間ピッタリにくる恐ろしい人物である。
「あっれー、早いですね?」
「マジでピッタリだ」
「まー、とりあえず座ってくださいよ。三人とも」
と、空は不明朗と死色と曙を何気なく通り越して席に座った。勿論、一人だけ食べ物をきちんと持ってきている。その食べ物の名は日食バーガーのセットである。因みに、日食バーガーとは肉が入っていないパンと野菜だけの謎に包まれたハンバーガーであるがリピーターが続々と現れている謎のハンバーガーである。その不思議加減に疑問を抱いた人達はとあるサイトでは薬物が入っているんじゃないかと噂したりしている。しかしそれが逆にアンダードッグ効果となり人気爆発しているとは誰も知らない。
空の後に続いて三人は座って(なんとビックリ、空は二人席に座った。なので不明朗と曙は近くの席から椅子を拝借してきたのは秘密である。)空が買ってきたポテトを摘まみながら(パクリながらとも、いう)会話を始めた。
「いやぁ、曙さんの所在が分かったので死色さんにおしえてあげよーかな、ついでに感動の再会を演出してやろーかな、って思って呼び出したらもう出会っていたんでビックリしましたよ、はい」
「ぼくがなんの用でここにいるのかがわからないよ、空」
不明朗はため息混じりに空が持ってきたジュースを飲んだ。(パクったともいう)
「道案内です。ご苦労様でした、帰っていいですよ?」
「冷たっ! それに報酬もらってないから無理」
「あー、メロンパン一個でしたっけ?」
「そんな安い男じゃねーよっ!」不明朗は机を叩いた。「五個だよ、五個!」
その会話を聞いて曙は「どっちみち安い……」と呟いたが残念ながら二人には聞こえなかったようだ。確かにメロンパン五個で呼び出される人は安いだろう。
「いやぁ、こんな風に出会っちゃうならセツさんにわざわざ頼まなくても良かったかもしれませんね。無駄足でしたぁ、へへー」
セツ(雪)の報酬は封磨君であることは雪しかしらない。今頃いいように遊ばれているだろう。まあ、雪なので気まぐれで空の依頼をうけたに違いないが。
「でしか?」
「うーん、違いますかね。死色さん、私が良心だけでこんなめんどくさいことすると思ったら大間違いですよ。小学校に通い始めたといえ、こっちから足を洗ったわけじゃありませんしねー」空は不明朗からジュースを奪って飲んだ。堂々とした間接キスである。「貸しですよ、貸し。いつか、返してくださいね」
「でし?」
「助け合いの精神ですよ。皆で助け合いましょーという純粋無垢な私の願いです」
「なるほどでし!」
死色は将来たくさんの人に騙されるだろう。空は曙と死色をいいように使おうとしているだけであり、助け合いの精神など興味ないに違いない。
「天崎さんも『そろそろ君も成長しなさい』と言ってましたし、死色さんも成長して助け合いのできる素敵な美女になりましょー!」
天崎が本当に言ったのかもわからないような台詞を使って死色の気をひかせる、空。これはもう死色を騙す気しかないだろう。性格は相変わらず変わらないようだ。まあ、兄があんなんだったらそりゃ歪んだ性格になるだろう。
「おぉぉおお!」
死色のその声を聞くと、空は周りを憚るようにしながら死色に近づいてゆっくりと耳打ちをした。
「あなたなら出来ますよ。私は知ってるんです、貴方が心優しい助け合いができる人だと、ね?」
「そうでしか?」
「はい、勿論です! ですから、いざというときはその優しい心で皆の中の私を助けてくださいね」
「わかったでし!」
やさしく微笑んだ空をみて、死色は敬礼をしながらいい声で返事をした。因みに左手での敬礼である。
その会話をなんとなく聞いていた不明朗と曙がひそひそ話をしていたことに空は気づいていない。
「会話がよく聞こえなかったんだけどなんか、死色ちゃん騙されてない?」
「いや、空が人を騙そうとしないことの方が珍しいからなぁ」
「え、じゃあこの流れで曙も騙されるってこと?」
「ぼくも職業的に結構、嘘ついたり騙したりするけど……あそこまで人を騙してると息詰まると思うんだよねぇ」
「つまり?」
「本当のプロはつかなくていい嘘はつかないし、騙すところはピンポイント」
「へーぇ」
曙は感心したように頷いた。こういうところまできちんと曙は普通である。きちんと普通系女子に含まれるだろう。
「あ、そういえばですね」
空は曙と不明朗の方を向いて話しかけてきた。二人は騙されないように身を構える。
「何?」
「何だよ、空」
「この前発売したゲームやりました?」
身構えていた曙と不明朗二人はずべっと滑った。
因みに、この前発売したゲームとは雫やら暁人やらが言っていたあのゲームだろう。
「それがどうしたの……」
曙がため息混じりに言うと空は相変わらずの笑顔で答えた。
「いやー、あのゲーム思ったより面白くてですね。最初に出てきたキャラがまた―――」
「あれはクソゲーだ」
「あれ、不明朗さんやったんですか? さすがゲーマー」
「最初に出てくる唐繰っていうキャラが何よりもクソだった、あの女護衛魔法のくせして前線まででしゃばってきて即死」
「あー、そんな声をありましたね」
「それに止めをさした奴にしか経験値が入らないのが何よりもクソだった。護衛の奴らはレベル上がらねーし」
「護衛は使い捨てにしましょーってありましたよね」
空はうんうんと頷きながら不明朗の不満を聞いている。果たして、空はこのゲームを本当にやったのか。
「いや、でも、後半の方に出てきた括羅はかっこよかったとおもうよ、曙」
「括羅ァ?」
「女性ファンが多い方ですよね?」
「そー、そー、前作に続いて登場した括羅には曙、ビックリしたなぁ。あの、優しくて強いのがいいんだよ」
意見まで月並みな曙である。
「幸串さんとか朽葉さんとか東雲さんとかもやったんですか?」
「ん? んー、東雲は曙が操作してるのを見てただけで兄貴とか朽葉さんは自分で買ってやってたよ」
「やっぱり、人気があるんですねー、このシリーズは」
「うんうん」
「あ、あの、曙さん」
「何?」
「この後二人で一緒にゲームやりませんか?」
「お、いいよー」
「約束、ですよ?」
ここまで話が進んだところで空がにやりと笑ったことには、首を傾げながら「う?」と言った死色以外は気づかなかった。空は何気にやったことがあるのかないのかわからないゲームで二人を釣ってから、不明朗が自分の世界に酔っているすきに曙を何気に二人きりにさせるために呼び出した。
馬鹿な曙が一人だったらそりゃもう簡単に騙せるだろう。
「しーたんも行きたいでし!」
「………え、と、死色さんは一旦お家に帰った方がいいと思いますよ、抄夜さんが待ってますし」
「抄夜君でしか!」
「今日の晩御飯は何でしょうね?」
「うー? 何でしかね?」
「買い物にいっているかもしれませんね。お手伝いしなくていいんですか? ………助け合いですよ?」
「行くでし!」
死色は両手を高く天に突き上げてジャンプした。そして、天井にタッチしてから地面に降りる。
「不明朗さん、死色さんを家まで案内してあげてください。メロンパンは明日、奢りますから」
「あ? うん?」
不明朗は空が持っていたジュースを強奪して席から立ち上がった。死色はその後についていく。
「ばいばいでしっ!」
曙と空に手を振ってから死色は階段を降りていった。不明朗はその横についてきちんと空のいう事をきいている。
「あれ」
「どーしたんでしか?」
「なんか、おかしくね?」
「お菓子でしか?」
「そう、お菓子。メロンパンでいいように釣られてるだけなような気がするんだけど、ぼく」
「お菓子でしか!」
「……突然で悪いんだけど、しーたん」
「なんでしか?」
「お前、精神年齢の低下が半端ないよな」
「うぅ?」
「まー、いいや」
なんの意図があって死色にそんな話を振ったのかは不明朗以外はわからない。もしかしたら不明朗はこう思ったのかもしれない、自分は成長を続けているのに何故、この死色とかいう女は成長しないのか、と。
不明朗は腕を組んで考えた。
「あー、メロンパン食いてぇ」
「メロンパンはお菓子じゃないでし、おやつでしっ」
「ん? あ…そうかもね、しーたん」
「でしよっ!」
死色はぐるぐるとその辺を廻って回った。その時に通りすぎたおばさんにものすごい顔で見られた気がするがそれはきっと気のせいなのだろう。
「あー、イライラしてきた考え事したいのにメロンパンがない。空の野郎、世界と人を舐めてやがる。ぼくの半分も生きてない癖に………」
「にやってしたのは歓迎あるんでしか?」
死色は小首を傾げながら言った。
「歓迎? ああ、関係って事? ……空がにやってした?」
「でしっ! うぅーわぁーっ! てしてるときに、にやってしてたでしよ」
果たして、うぅーわぁーっ! という状況が本当にあったのか。死色にしか見えていない世界があるのかもしれない。
「なんか、企んでるんだな、あいつ。しーたん、手柄だよ、お手柄」
「やったでしっ!」
「ぼくのメロンパンのない思考回路でどこまでひらめけるのかは分からないけど、考えてみよう」
うむむ、と不明朗は考える仕草をする。
「あれだな、学舎占争」
相変わらず、閃くのは早いらしい不明朗である。その言葉に死色は「なんでし、それ」と小首を傾げた。『それ』は今、抄夜が巻き込まれている争いであり空が一番興味を持っている争いだとは不明朗も死色も知らない。
「あーいらいらして、きたぁ」
「うー、甘いものがあればいいんでしけどね」
「そう、そうだ。メロンパンがあればいいんだ! じゃあ、死色」不明朗は死色の肩に手をおいた。「ぼくは、メロンパンを買うついでに空を無意味に殴ってくるから、無意味に」
「う?」
やな予感がする死色である。やな予感を詳しく言うと「え、なんでしか? それ、まるでしーたんをここにおいて一人でどっか行っちゃうみたいじゃないでしか? 無論パ論しーたんここから帰れないでしよ?」になるが、死色がここまでしっかり考えられているか、といわれたら考えられていないだろうから、直感的なもので普通にやな予感がしたのであろう。
「じゃあ、しーたん」
「いやでし!」
「ぼくはこれでおさらばするな、うん」
「嫌々でし!」
嫌々を二回重ねると意味が変わることに死色は気づいていない。「嫌々でし」を直訳すると「しぶしぶでし」になることに気づいていない、というか、知らない。
「ばいばい、しーたん、君の事は一時間ぐらい忘れないよっ」
そういって不明朗は手を振りながら道を戻っていってしまった。しかし、このころには空にいい感じに連れ出された曙は魔の手にかかっていた。故に、不明朗が今から空を追いかけても出会える確率は限りなく零に近い。
死色は不明朗の袖を掴もうとしたらしい右手をつきだしたまま、途方にくれていた。行き場のなくした手ほど処理に困るものはない。
「うー」死色はそのまま地面に座り込んでしまった。「………名莉海君………朱色君……………………抄夜君」
潤んだ目で遠くの方をじっと見つめている死色。その先には何があるのだろうか。
死色は仕方なく立ち上がって仕方なく前へと歩き始めた。一回座り込んでしまった死色にはそれが前なのか後ろなのか分からなかったけれど、取り合えず前に足を進めた。ずっと、ずっっと、ずぅっと、死色は一人で歩き続けて、そこで見覚えのある影を見かけた。
「…………おねーちゃん?」
死色は見たことある影をあらんかぎりの力を尽くして追いかけて背中に抱きついた。
「ぐふっ………っなんなんだよ? ………って死色?」
「おねーちゃん」
背中に抱きついたままの死色をじっと見つめてから名木風はふう……とため息をついて死色の背中をポンポンと叩いた。
「死色らしくないなぁ、全く………なんだよ。何かあったの?」
「ううー」
「ふうん、大変だったね」
名木風と死色が奇跡の再会をしたと思えばそれなりにいい話だが、実のところは死色が迷子になりまくった挙げ句に最寄りの駅と抄夜の家までの道のど真ん中をぐるぐると死色が回っていただけで、ある意味必然だったとも言える。……何故、名木風が抄夜の家に向かっていたのかは名木風以外は知らないが。
名木風は死色の手を握って背中に張り付いていた死色を横につれてきてあるきだした。
「どこに行こうとしてたんだよ?」
「うー、抄夜君のお家でし」
「そっか、そっか。一緒だね」
「でしか?」
「そうそう、一緒に行くんだよ」
「ふひひっ、おねーちゃん大好きでしっ」
「ラブコール有り難う、なんだよ」
名木風は目を薄目にして、気持ち良さそうに風を感じながら歩いている。それを真似して死色は同じように風を感じようと努力した。
「でし!」死色は早速風を感じることに飽きたのか目の前を横切った蝶を指差した。「蝶々結びでし!」
「結んじゃったよ…」
「パタパタしてるでしねっ!」
「パタパタしないと落ちちゃうんだよ……」
「なるほどでし!」
死色は納得したように頷いた。
「蝶といえば……」名木風は遠くを見つめたまま言った。「こんな話があるよね」
「サ立句サ弱でしか」
地味に蒟蒻の漢字が分解されているが口頭じゃ(きっと)わからないので放っておこう。それにこのタイミングで蒟蒻っていう意味が分からない。
「んーと、確か……ある時自分が蝶々になる夢を見た人がいて、その人は目覚めたときに不思議なことを考えたんだよ。もしかして蝶々の方が現実で、私は蝶々の見ている夢なのではないか? っていう」
「う?」
「つまり、ここにいる死色は蝶が見ている夢なんじゃないかって話かな………?」
「しーたんじゃないんでしか?」
「もしかしたら死色が見ている夢かもしれないね」
「うー?」
死色は首を三百六十度回転させて首をかしげた。(いや、嘘。そんなに回転できたら人間じゃない)
そんな感じで名木風に誘導されながら死色は歩いてやっと見覚えのあるアパートを見つけた。その辺にありそうな普通なアパートだが死色に見分けることが出来たようだ。死色は「でし!」と喜ばしげに叫んでピョンピョンと跳び跳ねた。
そのアパートについている階段から慌ただしく大きな足音をたてて抄夜が降りてきた。決して、死色が帰ってきたから降りてきたとか言うわけではなく、抄夜の視線は死色と間反対の遠くを見ていた。
「抄ー夜くぅん?」
死色は不審に思ったのか抄夜の名を呼んでから抄夜の視線を追った。その視線の遠くには見覚えのある―――――
「な―――――っ!」
死色は遠くの方に見える影に向かって叫びながら走っていった。名木風の手を振りほどいて抄夜に見向きもせず一心に前を向いて。
「なり、な―――」
そして、その人に抱きつこうと跳び跳ねた。
「――――名莉海君っ」
そこで、世界は暗転する。
死色の周りが闇に包まれてしばらくしたあと、どこかから聞き覚えのある声で『死色』と、呼び掛ける声が聞こえてきた。
「――いろ―――しいろ―――――死色!」
「う?」
死色が目を覚ますといつも通りの抄夜の部屋と抄夜の姿が見えた。死色の前でしゃがみこんで声をかけていたらしい抄夜は死色が目を開いたのを見てふっと息をついた。
「大丈夫?」
「なにがでしかぁ?」
「気楽だなぁ、もー」
「うー?」
死色が首を傾げてるのを見ながら抄夜はため息をついた。さっきから息を吐き出し続けているが大丈夫なのだろうか。
「死色、ずっと起きなかったからさー、呼吸も浅かったし」
「でしか!?」
「うん、何かの魔法にかかってたみたいだったよ」
抄夜は首を死色のように首を傾げた。それにつられて死色はさらに首を傾げる。
「それにしても、密室のはずの部屋で死色がなんかの魔法にかかるなんて不思議だな」
「しーたんのお部屋は鍵かかってないでしよ?」
「今すぐ閉めてこい」
「えー、いやでしよ」
「僕に楯突くとはいい度胸だな」
と言ってから抄夜は立ち上がり「ま、いっか。晩御飯晩御飯……明日はフィナンシェピスタージュ作るからぁ、へへー、ピスタチオペースト、ふふふ」とか変態の様に言って台所の方に向かっていった。その後ろでさらに首を傾げていた死色は抄夜に問いかけた。
「名莉海君はどこでしか?」
「名莉海君?」
「でし」
「ホタテじゃない?」
「う?」
死色は周りを見渡すが不思議なことに相変わらずの片付いていない部屋と抄夜しかいなかった。
てゅーびーこんてにゅー_
拙い文を最後まで読んでくれてありがとぉでし!
なんか、しーたんの言葉とかに間違いがあったら教えて欲しいでし!