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第7話 謝罪



すみません。


やっぱり予告はやめることにしました。



理由としては『何を書けばいいのかわからなくなり、結局変な物が出来上がってしまう』です。



もし、次回予告を気に入って頂いていた方がいらっしゃったのでしたら本当に申し訳ありません。



いや、本当にすみません。



では、引き続き『表と裏』をご覧に頂ければと思います。



また、同時投稿中の『犯罪者は英雄?』もよろしければご覧ください。




それではどうぞ。





「ふぅ、ひどい目にあった……」


伶は生徒指導室へ連れて行かれた(拉致られた)後、教師3人から事の事情を根掘り葉掘り聞かれた。


そのときの聴取役がこれがまた山田先生だったのだ。

当然伶は山田先生をからかい、激昂した山田先生を他の先生が窘めるという光景が約10分間行われた。

そんな短い時間で終わった理由としては、HRまで時間が無かったためと、単に山田先生がへばってしまったからであろう。


とはいえ、さすがの伶でも疲れはするため、今のようにぼやきながら、自らのクラスである2-B組へと向かっているのだが。


『ねえ聞いた?また“あの人”が何かやらかしたんでしょ?』


『ああ、確か白崎伶だっけ?周りが有名人ばかりの』


ひそひそ話とも呼べない会話が伶の耳に伝わってくる。


(またか……)


朝の件で辟易していた伶は、廊下でこちらをちらちら見てくる女子二人から逃げるように足早通り過ぎる。


どうせするのは悪口か何かの類だろう。そんなもの聞いていた所で意味がない。


聴覚に入ってくる声を全て雑音と捉えることに決め、一定のリズムで足を動かし、自らの教室へと向かう。




『でもあの人、ちょっとかっこいいよね』


『梅山君と並んでても見劣りしないし』


その後、熱っぽい眼差しと共にそんな会話が行われていることなど、伶は知る由もなかった。





★☆★☆★





「ういーっす」


「あ、おはよー伶」


2-Bの扉を開けると、燃えるような赤い色が目に映った。


「おー、久しぶりだな、飛鳥」


「ほんとだよ。たまには可愛い僕をデートに誘ってくれればよかったのにね?」


「自分で言うなよ……」


赤毛の少女――神楽飛鳥(かぐら あすか)は拗ねたようにそう言うと、トコトコと歩み寄ってくる。

女性にしては少し高めの背。彼女のトレードマークとなる真紅の髪は、夏休み前のショートからセミロングまで伸びていた。瞳の色もルビーのような赤い色で、一人称は僕。まさにスポーツ少女と言ったところか。


「で、昨日依頼があったって聞いたんだけど、どうだった?」


「お前もやっぱり美鈴と同じ事を聞くんだな……」


この飛鳥と美鈴は大の仲良しらしい。なんというか、活発少女同士波長が合うとかどうとかで。たまにこのように美鈴と同じようなことを伶に聞いていたりする。


「あちゃー、美鈴ちゃんも同じこと聞いちゃってたかー」


「またやってしまった」、と言いながら、本音で言っていないことは明白だった。

それほど2人の仲がいいということか。


取り敢えず鞄を席に置こうと歩き出したところで、伶は再び足を止めた。


「伶……」


いつものクールな表情はどこへやら。心配気な表情でこちらを見る介の姿がそこにはあった。

介は伶を見つけるや否や、一瞬で詰め寄り、そして


「すまなかった!」


「……へ?」


いきなり頭を下げた。

困惑する伶と同様に、クラス全体が騒ぎ始める。だが、当の本人である介は意に介さない。


「俺が我慢できなかったばかりに、“また”お前に迷惑をかけてしまって……本当にどう謝罪すればいいか――」


「いや、気にしなくていいから頭上げろって!こっちが恥ずかしいだろ!」


見ると、廊下を通りかかった生徒ですら何事かとこちらの様子を窺っている。それもすぐに“あの”梅宮介に頭を下げさせているという事実によって敵意のような物が込められた。

突き刺すような視線の数々に、居心地の悪いことこの上ない。なんとか頭を上げさせようとする伶だが、それでも介は上げようとしない。


「この始末は必ずつける!俺にできることならなんでも言ってくれ!」


「なんでもって……」


「なんでもいい!望むのならこの腕だろうと切り落とそう」


「いや!!それはシャレになってないって!!」


そんな物騒なことを言いながら、袖を捲ろうとする介を慌てて止める伶。



介がここまで謝罪に固執するのは理由がある。


簡単だ。毎回問題起こす度にその都度伶が庇っているのだ。


レベル4が他生徒への暴力を振るったなどということになれば大騒ぎになる。

だが、それがレベル2となれば話は別だ。


レベル2は、“使い捨て要員”。


“普通”であるが故に換えが聞くただの駒。


今朝の男子生徒が言った言葉はあながち間違いではない。

二年の段階でレベル2なのは全体の約3分の1。レベル1はいない。

つまり、レベル3の方が全体的に見てやや多いことになる。


使い潰しの駒。


それが世界から見られているレベル2の現状。

そんなレベル2が何か起こそうとも、気にする者はまずいない。


そもそも、介がキレたのは伶が侮辱されたからだ。

だからこそ介はあれ程までに頭に血が上った。


それは純粋に嬉しい。


だからこそ、伶は自分のせいで介が罰せられるのを嫌う。

幸いというか、被害者も野次馬も、本当のことを言う者は現れない。


『レベル4である梅宮介は悪くない』という、自己暗示のような者にかかっているからだろう。


レベル4とは人々の希望なのだから。




あれやこれやと言い争う声が教室の中に響き渡る。


片方は「何か謝罪をさせろ」とせがむ介。


もう片方は「いらない」と必死に宥める伶。


しばらく続くくだらない論争。だが、そんな中伶がため息を吐きながら白旗を振った。


「はあ……わかった。じゃあ一つだけ頼みがある」


「なんだ?なんでも言ってくれ」


諦めたような声音で呟かれた言葉に、介はキラリと瞳を輝かせた。

周りの生徒も聞き耳を立てながら、伶の言葉を待つ。


「そうだなぁ……」


顎に手を添えて考えるような仕草をする伶。だが、すぐに思いついたとばかりに手を叩く。

周りの空気が張り詰め、一時的にシンとする教室。そんな中、伶はおもむろに口を開いた。


「……じゃあ、もう“あんな事”をさせようとするな」


伶の言葉に周りの生徒は首を傾げる。だが、介と明だけは伶の言いたいことがわかったのか、一瞬だけ狼狽する。


そして、意を決したように介は口を開いた。


「悪いが、それだけはできない」


介の返答に、再び周りが騒ぎ始める。それもそうだ。介が一度言ったことを改めるなど今までで一度も無いのだから。

伶はあからさまに顔をしかめる。


「別に、俺は欲しくてこんなの手に入れたわけじゃねぇ。いい加減諦めろ」


「いいや、諦めるわけにはいかない。お前がレベル2というだけで蔑まれ続けている限り、諦めれるものか!!」


語尾を強めて何かに訴えかけるような介の表情は、怒気を孕んでいるような、それでいて悲しんでいるような、そんな表情をしていた。


「レベル2だというだけで何故お前が蔑まれなければならない!?何故“使い捨ての駒”などと呼ばれなければならない!?本来ならお前は――――」


「介ッ!!」


その続きを言い終わらない内に、伶は介の胸倉を掴みあげていた。

女生徒の悲鳴が教室中に響き渡る。偶々通りかかった生徒も「なんだなんだ」とこちらを伺い見ている。

だが、そんなこと関係無いとばかりに伶と介は睨み合っていた。


何故、介がここまであの力を使わせたがっているかは、伶にもわかる。

だが、伶にも伶なりに譲れないものがある。


互いに無言だけが続き、決して視線を逸らそうとしない。


そんな中、教室のドアが開く音がこの静寂を打ち破った。


「……何をしている?」


そう問いかけたのは今朝、介と話していた教師だった。

見慣れない教師に一旦伶は目を細めるが、直ぐに興味を無くし、介だけに聞こえるよう耳打ちした。


「……お前が“あの事”を覚えているのは別にいい。けど、だからって俺に押しつけるな」


そう言うと、腕を放して踵を返す。


「――例え蔑まれても、それでも俺は使わない」


吐き捨てるように呟かれたセリフを、介は歯を食いしばりながら聞き、苛立ったような足取りで自らの席へと戻って行った。













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