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第3話 レベル4



今回から次回予告を書いてみました!


もし要らないと言うのであればどうぞ言ってください!!


その後、何事も無く階段を上り詰め、とうとう五階に到達した。

念には念を入れ、明に常時“周辺探知”を使わせて周囲を警戒させていたが、別段変わったことも無かった。ただ、6階のロビーには続々と人数が増えていっているらしい。

現在この上には30人程の武装した犯罪者が控えている。そのうち何人が能力者なのかは解らないが、まあ問題ないだろう。


なぜなら――――



「介のアニキ!明のアネキ!あとは任せました!」


介と明が6階へと続く階段を半分ほど登ったとき、ヘタレ(伶)が五階で声援を送っていた。

もちろん、明はともかくこんなヘタレ(伶)を黙って見過ごす介ではない。


「――レベル1、“身体強化”」


踵を返して4階へ戻ろうとした伶の襟を、一瞬で肉薄した介が強引に掴んだ。そのままずるずると(階段なので効果音はガツンガツンと)上へ上へと引きずっていく。


「ちょっ、まっ――痛い痛いッ!?落ち着けって介!引きずってるって!階段で体中打ちまくってるって!」


「うるさいこのヘタレ。黙って付いて来い」


「付いて行ってるっていうか連れてかれてるよね!?もしくは打ち付けられてるよね!?」


ジタバタ暴れながら抗議する伶を無視しながら引きずっていくと、ついに6階へと到達した。伶の心境だと「到達してしまった」というところだろうか。


階段を上がりきると、目の前に広がってくるのは1階で見たようなバカ広いロビー。ただフロントは無く、幾つかのソファーやテーブルが置かれているだけといったなんとも勿体無いところである。


一体なんに使うための空間なのか解らない。が、それを考えるより目の前の現実を直視しなければならないようだ。


伶たちの対面側、7階へ繋がる階段を塞ぐように、殺気を放ち続ける男たち。

数は明の言った通り30人。たかが高校生3人相手に大人気ない人数じゃないだろうか。

ざっと周りを確認した介は、おもむろに口を開いた。


「慧神高校二年の梅宮介です。あなたたちのリーダーと交渉がしたい」


その言葉に一番驚いたのは彼の周りにいる二人、つまり明と伶だった。


伶も明も、介のこの行動は聞かされていない。そもそも、話し合いで解決できるレベルの相手ならばとうの昔に投降しているはずだ。


介の言葉の意図を掴みとれず、首を傾げる伶と明。すると、犯人側から一人の男が一歩前へ出た。


「俺がリーダーの井ノ原だが?」


男、井ノ原は威圧感を込めた瞳で介を見据える。

対して、介は動じる素振りも見せずに言葉を続けた。


「回りくどいのは嫌いですので早速ですが本題に入ります。後15分後には学園から選抜メンバーが到着します。大人しく投降してください」


表情一つ変えずに放った介の爆弾発現に、『黒龍の爪』のメンバー全体に動揺が走る。しかし、先程のリーダー格の男、井ノ原だけは平静な表情をしていた。


「ふん、どうせハッタリだろう。仮にそれが本当だとして、どうしてそれをわざわざ伝える必要がある?その選抜メンバーとやらが到着したと同時に突入させれば俺たちは全滅。国も危険分子を始末できて万々歳だろう?」


なんの躊躇いもなく『全滅』と言った井ノ原のお陰か、逆に動揺は収まった。いや、動揺を通り越して自暴自棄になったのかもしれない。

もちろんそんな彼らの心情など解るはずもなく(もちろん伶も解らないが)、しかし介は淡々と言葉を続けていく。


「ええ、彼らが到着すれば直ぐに事は済みます。ですが、学園側も余り彼らを動かしたくない。そのため我々が……言い方が悪いですが脅し役として赴いただけです」


クイっ、とメガネの位置直すその姿はまさしく堅物。

その姿に伶は一つ納得していた。


(ああ、そのために俺らはここに来たのか……。てっきり殲滅させるためかと……)


うんうん頷く伶に構うでもなく、介は相手の次の出方を窺っている。

だが、それも次の井ノ原の言葉でこの睨み合いのような言い争いに終止符を打つことに。


「……そうであっても、俺たちはもう後戻りできんのだよ。少年」


井ノ原の言葉と同時に、そちら側全員が銃口を向ける。


「交渉決裂……ですね」


介が呟くと同時に銃声が一斉に轟いた。


だが――――


「レベル4――――」


なにやら呟き声が聞こえたが、銃声でかきけされる。

一瞬硝煙が視界を遮ったが、徐々に晴れていくにつれ、『黒龍の爪』のメンバーに驚愕が襲う。


――――硝煙が晴れたその場所には無傷の介が平然と立っていた。


いや、変化があるとすれば彼の左手に先程は無かったはずの白銀の拳銃が握られていることか。


その光景に明はホッとした表情を見せ、伶は当然とばかりに笑っている。


『黒龍の爪』のメンバーのうち、一体何人が彼のしたことを視認できただろうか。


先程の銃弾、それら全てを“撃ち落とした”などと。


よく見れば彼の銃からうっすらと硝煙が漏れている。

これはもはや“普通”の人間ができる範疇を越えている。


(まぁ、俺たちは“普通”じゃないからそれの範囲外だけどな)


その早技を“見ていた側”の伶は苦笑しながら、いい加減放してくれないものかと思案し出した。

勿論そんな心境とはお構いなしに時間は流れていく。


未だに抜けきらないメンバーをよそに、いち早く再起動した井ノ原はまさかと言うように言葉を紡ぐ。


「お、お前ッ!まさかッ!」


「概ね予想通りだとは思いますが、先程は『少年』だったのに今度は『お前』なのですね」


別段気にしてないのに敵を動揺させるため、わざと言うところが介らしい。

案の定、指摘されたことに腹がたったのか、睨みつける眼光が強くなった気がする。


(すぐ済みそうだな。こりゃ……)


思ったよりすぐに決着がつきそうなことに、内心で安堵する伶。


(にしても……いつまで俺はこの体制なんだ?)


自分の格好を再確認してみよう。

現在襟を介に掴まれ、床に尻餅をついて首だけ動かして事の成り行きを見守っている状況。


余りにも間抜けすぎる格好。しかも、誰もそれに突っ込まないし、この緊迫した場面でこの体制はかなりイタイ。


自分を見直した、というより再確認させられたこの悲惨な現状に、伶は自分で自分がいたたまれなくなった。

「もういっそ殺してぇ!」などという逃げの手段もこの空気では使えそうに無い。


どうこの体制から逃れようか考えていると、その意を汲み取ったのか伶の襟からそっと介の手が離れた。


これチャンスとばかりに跳ね起きるが、しかし、立ち上がろうとした瞬間に頭の上を何かが通り過ぎた。

恐る恐る振り返ると、そこにはこちらに銃口を向けている男たちの姿。


「あれ?明と介は?」と辺りを見回すと、俺の遥か後方――階段の下へと逃げ込んでいく2つの人影を発見。


つまりどういうことかというと、敵・伶・介、明という風に、見事中間地点に立っているというわけだ。当然、狙いは伶へと向けられる。


――ごくり。


「うおぉーーッ!!」


雄叫びとともに一目散に後方へとダッシュ。その際ばらまかれる銃弾の雨をかいくぐりながら、なんとか階段を飛び降りる。


「何しやがる介ッ!?」


「ちっ」


すぐさま抗議の声を上げると、そっぽを向いて舌打ちをされた。さすがに伶もこれにはキレた。


「てめぇ!!死にかけたんだぞ!?それで逃げてきたのに舌打ち!?どんなイジメだよ!!」


怒鳴りつける伶などどこ吹く風。介はめんどくさそうに口を開く。


「あれぐらい死にかけたほうが、お前が能力を使う気になるかもと思っただけだ。それで死んでも俺は知らん」


「すげー無責任だぞ!?今のお前!」


「ふ、二人とも落ち着いて、ね?」


宥めようとする明。だが、伶は明にも物申す。


「だいたい明も明だ!なんで俺を見捨てたんだ!?そんな子に育てた覚えないぞ!」


「えっ、と……どこから突っ込むべきか解らないけど、取りあえず伶には育てられた覚えないよ?」


「おい、取り込み中のところ悪いんだが、来たぞ」


介がそう呼びかけると、階段の上から4人の人影が銃口を向けてきた。再び撃たれたらたまらないとばかりに伶たちは同時に呟く。


「レベル1“身体強化”」


「レベル2“千里眼”」


「レベル2“千里眼”」


伶が呟くと同時に身体中の身体能力が向上し、明と介が呟くと二人の瞳が薄い緑色へ変化する。

それを皮切りに再び銃弾の弾幕が三人襲いかかった。


迫り来る弾丸を、伶はかわしながら相手へと接近し、明と介はその場で最低限身を逸らして避け続ける。

伶は手近にいた1人を殴りつけ、その反動を利用してもう1人に回し蹴りを放つ。


(あと二人ッ!)


伸した二人を見ても、だからといって満足感が彼の内に溜まる訳でもない。

そのまま何の気負いもなく残りを殴って気絶させた。

その瞬間、後ろから再び銃声が轟いた。

溜まらず再び階段を飛び降り、介と明に怒りを込めた視線を向ける。


「お前らッ……!」


地獄の底から湧き上がってくるような低い声音。それに明は引きつった笑みを浮かべ、介はそっぽを向いてしまっている。


「明はまだ解る……まだな。問題はお前だ介!!何“千里眼”まで使って逃げに徹してんだよ!!」


「何をそんなに怒ってるんだ?俺はただお前に手柄をくれてやろうとしただけだ」


「いらねーよ、そんなもん!」


“千里眼”とは、簡単に言えば身体強化を目のみに集中させた感じだ。

胴体視力や、真後ろ以外の全ての範囲まで視野が飛躍的に広がるというもの。

だが、目が良くなったからといって身体強化のように運動能力が上がるわけでもない。

つまり、初めから敵を伶に任せていたということだ。


伶の抗議に「やれやれ」と言いたげに肩を竦めながら、犯罪者たちの待つ6階の階段を上っていく介。

そんな後ろ姿を見て、伶と明は声を投げかけた。


「早く終わらせろよ。俺まだ宿題終わってないんだ」


「知らん」


「怪我しないでね?」


「あんな奴らに遅れはとらん」


振り返ることなく返答する介。やがて、先程とかき消されたときと同じセリフを口にした。


「レベル4、“不可視の火薬庫(Invisibility magazine)”――――発動」





★☆★☆★





「終わった?」


ひょこっと階段から顔だけ上げ、介の1人で向かったロビーに問いかける伶。


「ああ。終わった」


帰ってきたのは伶の声。その声に疲労は感じられない。

それもそのはず、先程介が能力を発動してから一分もたってないのだ。

辺りを見回すと血だらけので倒れている男たち。もたろん犯罪組織『黒龍の爪』のメンバーである。

それを一通り見て、今度は介へと視線を向ける。


「……殺したのか?」


「いや、全部急所は外してある。直ぐに運べば問題無いさ」


「ふ〜ん……。それにしてもコイツら本当に能力者だったのか?銃ばっか使ってたじゃねーか」


「居るには居たんだが、殆どがレベル1だったな。――いや、1人だけレベル2が……どうした明?大丈夫か?」


「う、うん」


レベル2と介が言った途端、明の顔色が悪くなった。理由は言わずもがな、伶もレベル2であるからだろう。

そうした明の心情を読み取った伶は、彼女の頭に手を置き、優しく微笑んだ。


「安心しろって。レベルが同じだからって別に気にしな――――」


「伶ッ!!後ろだ!!」


朗らか雰囲気に包まれだしたころ、いきなり介の怒号が響き渡った。

咄嗟に後ろ振り向くと、血塗れのリーダー、井ノ原が伶へとハンドガンの銃口を向けていた。



――――次の瞬間、銃声が轟いた。

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