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幕間:シアンとミカ

今回はシアンとミカの過去編の幕間になります!

重要な回です!

ぜひ読んでみてください!


これはある怪物が人間になるまでの話だ。

シアンは一二歳、ガランドの村でお世話になっていた。


「はぁ……」

「皆」

「弱すぎる」

シアンは村外れの納屋の中で寝転んでいた。


「私にも勝てないなんて」

「ガランドの後を継ぐとか無理だろ」

「つまんないな」


「シアン!」

「ここにいたの?」


「ミカ」


「サボってるのがバレたら……」

「おじいちゃんに怒られるよ?」


「別に……」

「興味ない」

「そのうち倒してみせるよ」


「もうその自信はなんなの!」


「何が?」

「だってもうガランド以外倒せたし」


「そうね」

「まさかパパを倒すとは、」

「思わなかったわ」


「そこそこ強かったよ」


「なんでそんなに興味なさそうなの?」


「人間なんか……」

「どうせ信用できないし」

「また独りぼっちになるんだよ」


「もうひねくれすぎ!」

ミカは思いっきり、

シアンのほっぺたを引っ張る。


「痛たた!」

「千切れる」


「思い知った?」


「恐ろしい娘だな〜」

「将来はガランドを、」

「倒して乗っ取るのか?」

頬をさすりながら、

だるそうに話すシアン。


「道場を継げたらいいわね」


「まあミカなら何とかなるでしょ」


「ありがとう」


「ん……」

「だるいから寝る」


「もう起きてよ!」

「せっかく二人きりなのに!」


「あとさ」

「私」

「この村を出てこうと思うんだ」


「え?」

「どうして?」


「旅に出てみたい」

「もう十分世話になったし」

「新天地を探すのも悪くないかなって……」

「一緒に来る?」


「さすがにダメよ……」

「家族や道場のこともあるし」


「そうだよね」

「まあダメ元で言ってみただけだよ」

「期待してなかったし」

 

「私たち家族じゃないの?」


「どうなんだろ?」

「わからない」

「家族ってそもそも何?」


「もう両親の記憶もないし」

「ずっと一人だったからさ」


「私は……」

「あなたのこと好きよ」

「シアン」


「ありがとう」

「よくわからないけど……」


「もう人が一生懸命告白したのに!」


「え?」

「告白だったの?」


「そうよ!」

「鈍感バカ女!」


「怒らないでよ」

「私たち付き合うの?」

シアンはとボケながら言う。


「返事してくれないとわからないわ」


「……拗ねちゃった」

「キスしたらダメ?」


「付き合ってないのに?」

「不誠実じゃない?」

ミカが言ってることは正論だ。


「普通にしてもいいと思うけど……」

シアンは面倒くさそうな顔をして言う。


「じゃあパパ、ママ、おじいちゃん」

「門下生の皆にキスしてきてよ!」


「……うああ」

「それは嫌だな」

「でもミカなら良いよ」

ミカに不意打ちでキスするシアン。


「あ!」

「ファーストキスがー!」

恥ずかしそうに顔を手で覆うミカ。


「え?」

「そんなこと気にするの?」


「もう本当に乙女の気持ちがわからないのね!」


「さっぱりだよ〜」

そう言いつつミカに、

嬉しそうにキスをする。


「酷い女!」

「ちょっと!」

「またキスした!」


「もう何十回でもしようよ?」

「減るもんじゃないんだし」


「軽すぎー!」

そう言いつつ流されて、

二人は二十回以上もキスしてしまった。


「はぁ……」

「やりすぎちゃったわね」

「私たち」


「そうだね……」

「調子に乗りすぎたわ」

「癖になりそう」


「あと一ヶ月くらいしたら出ていこうかな」


「本当?」


「うん」

「責任取らないとね」


「ありがとう!」

「愛してるわ!」

「シアン!」


「なんだろ」

「今なんかわかった気がする」


「何が?」


「愛のこと」

「もう一回言ってみて?」


「え!?」

「恥ずかしい……」


「頼むよ」

シアンは真面目な顔で懇願する。


「あ、愛してるわ……」

ミカは恥ずかしそうに言う。


「うーん」

「この気持ちはなんなんだろう」

「これが愛なのかな?」


「私一人で恥ずかしいんだけど……」


「愛がわかるまでここにいるわ」


「嬉しい」

「シアンなら、」

「必ずわかるときがくるわ!」

「だって大好きだから」

ミカは愛を叫ぶ。


納屋で過ごすようになってから、結局半年が経過。

シアンはついに出ていくことにする。


「ミカ」

「私」

「出ていくよ」


「早すぎない?」


「うん」

「ごめん」

「一つ目の理由は」

「愛について」

「知りたいから旅に出るんだ」


「二つ目は全てを失うのが怖いから……」


「ようやく人間になれた気がするんだ」

「ミカとじいさん」

「ご両親と道場の仲間たち」

「皆のおかげだよ」

「ありがとね」


「わかったわ……」

「また余裕があれば帰ってきてね」


「うん」

「もちろんだよ」

「じいさんは勿体ないって顔をしてたよ」


「当たり前よ!」

「だって自分の息子を、」

「孫くらいの年の女の子が、」

「倒したんだから!」


「いい武勇伝になるね」


「……待って」

「やっぱり行って欲しくない」


「知ってる」

「だから出て行くんだよ」


「なんでよ!」

「あんなに愛し合ったのに……」


「わかってる」

「だから強くなって……」

「セカイを巡りたいと思ったんだ」


「まだわからないことが多すぎるし」

「自分が何者でどこで生きたらいいのか」

「この力はなんで得られたのか」


「探しに行くの?」

「見つかるかわからない答えを?」


「うん」

「ごめんね」

「ミカには感謝してるよ」


「こんなによくしてくれた人は……」

「今までいなかったから……」

「それに転移魔法が使えるようになれば、」

「すぐに帰ってこれるよ」


「わかった……」

「何年かに一度は顔を見せてね」

「もう止めても無理だし……」


「思ったより早く、」

「帰るかもしれないよ」


「ええ……」

「期待してるわ」


「それじゃあね」

「ミカ」

「元気で」

シアンは名残惜しそうな顔をして立ち去る。


「……うん」

「ズルいわよ」

「最後にあんな顔するなんて……」

ミカは納屋で一人残されて、

涙を流す。


「思ったよりキツいな……」

シアンも歩きながら、

涙を流し続けていた。


そして夢から目覚める。

「あれ?」

「ここは自室ですか……」

「お嬢様に運ばれたんですね……」


起き上がったシアンは、

あまり使っていない自室を後にした。

移動して食堂にいるガランドに話しかける。


「ガランド様」

「まだいらしたのですね」


「おう!」

「醜態をさらしてどうじゃった?」


「……最悪の気分です」


「お主」

「アリシアをミカと勘違いして……」

「泣きついておったぞ」


「女として情けないです……」

「もう金輪際、酒は飲みません」


「ドクダミ茶でも飲むか?」


「そうします」


「わしらはもう許されん人間だとは……」

「わかっておるが……」

「幸せになる権利は、」

「まだ残っておるぞ」


「それを忘れるでない」


「はい」

「キモに命じます」


「明日はピクニックとやらに行くと……」

「張り切っておったぞ」

「弁当でも作るか?」


「そうですね」


「ベアトリスは怪しい奴だと……」

「思っておったが……」

「勘違いだったかもしれんな」


「あの人は帝国諜報員ですよ」

「ほう」

「まあさしずめ……」

「復讐のためとか抜かすのだろ」


「その通りです……」


「孫を巻き込まなければ構わんが……」


「恐らく無理でしょうね」


「切るか……」


「アリシア様が悲しみます……」


「ジレンマじゃの……」


「私もそう思ってます」

「無計画で馬鹿なことはしないでしょう」


「様子を見るとしよう……」

「それでは弁当作りじゃ!」

「ついて参れ!」

「愛弟子シアンよ!」


「はい!」

こうして二人は食堂を後にした。

一晩かけてとんでもない量の弁当を用意したのは、

まだアリシアとベアトリスは知らなかった。


シアンが人間になれたきっかけを、

理解していただけたと思います!

あと二回の更新後にメインヒロインのアスタロテが登場します!

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