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吉村翔太という男  作者: 椎名 園学


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4/4

吉村翔太という男

ちょうどその日から夏休みに入ることもあり、友達とパチンコを朝からならんで打とうと予定していたので、断ろうかとも思いました。ですがさすがに一日目から断るのは相手からの感じが良くないだろうとしぶしぶ「わかりました」とメッセージを送り、夏休みの予定表を送ります。友達との予定が入っているところはもちろんのこと、次にこんなことが起こらないようにだいぶ多めで働けない日を増やしておきました。

既読はすぐついて

「ありがとうございます。明日は朝7時に京都駅の喫茶キャラミアの前で集合でお願いします」

と続けられました。


朝起きると時計の針は6時45分を指していました。家から京都駅までは歩いて20分。

二日酔い、身だしなみを整えるより先に自転車に飛び乗りペダルをありったけの力で漕いでいきました。

二日酔いで自転車に乗ったことがないので転んでしまうのではと酒でおぼつかなくなった頭が危惧していましたが、力強く漕いだことによるジャイロ効果もあってか案外よろつかず、何とか時間までにはたどり着くことができました。起床すぐの全速力に鼓動は速く腹部は苦しく締め付けてきます。

昨日までなかった猛暑がいやらしく、今日に合わせてきたこともあいまって、昨日寝る前にシャワーを浴びたのが徒労に終わってしました。

それを自覚したのは頬をしたたる汗を感じたからではありません。日傘をさした女神と目が会ったからです

「お疲れ様です。どうして静香さんここにいるんですか?」

「今日は最初の仕事ですのでもし何かトラブルや難しいことがあったらサポートしてほしいとのことで私も吉村さんから呼ばれたんです」

静香さんは俺と違って汗一つ流さず清楚な笑顔で答えました。昨日飲まず早く寝て今日早起きできれば汗まみれの見苦しい姿を見せずに済んだのにと、生れて始めてお酒を後悔しました。

「汗が変じゃないか」「何か変なことを言っていないか」「静香さん可愛い」

の三つが頭を支配しながら私は吉村さんが来るまで静香さんと会話を楽しみました。

残念なことに数分で吉村さんが到着して、会話は終わります。

「おはようございます。今日は好きなアニメのグッツがアニメイトに出るんでそこに向かいたいと思っています」

「どこのお店とかわかってるんですか?」

吉村さんは私にスマホを見せてきました。

「ここまでの案内をお願いしたいです」

「わかりました。ここからすぐですんで早速行きましょうか」

そこは何度も言ったことある店だったので私は率先して歩いていきました。

歩いている時吉村さんが私を引き留めることが何度もありました。野球の雑誌とかパズルやら特に変わったものじゃなかったのですが。「これってどうやって使うんですか?」「このパズルってやつやったことありますか?」など少し変わった質問が多かったです。それを一つ一つやり方や面白さなどを私程度の浅い知識ではありましたが話すと目を輝かせて話を聞いていました。まるで赤子に教えているような感覚です。しかもかなりの衝動買い屋らしく、私が話を終えるとすぐさまレジに持っていき購入するのです。

吉村さんが折りたたみ傘を買っている時、静香さんがにこにこ楽しそうに吉村さんを眺めていたので

「吉村さんってあんな感じでなんでも買うんですか?」

「そうなんですよ。親が両親どちらも政治家の方らしくお金お小遣いがたくさんあるとのことで、興味があるものはだいたい買われるんですよ」

吉村さんの両手はアニメイトについてすらいないというのにいつの間に完全にふさがっていました。

「すいませんけど、持ってもらえませんか?」

吉村さんは遠慮なく私に頼んできます。秘書として雇われているので断ることはできず受け取ると、吉村さんは「これって何ですか?」と新しく商品を指さしてきました

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