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第五依頼 結成 古目探偵団 5話

 ツツキ様を仕留めたマミは、水音の隣まで歩いて行く。


「後は帰るだけだね〜」

「ええ。早く片付いてよかったわ」


 そんな会話をしていると、桔梗が大声でマミ達を呼んだ。


「マミ〜!水音〜!」

「あの子元気ね。こんなことがあったのに」

「ね〜。普通の子なのに凄いよ、本当」

「もう!早く来てください!隊長命令!」

「はーい隊長!今行きまーす!」

「ちょっ、マミ!」


 マミは水音の腕を引きながら桔梗の所まで走って行く。

 着くと、直ぐに桔梗が話しかけてきた。


「ど、どうしましょう。この子達起きないのですよ」


 桔梗の視線の先には、マミが先程置いて行った2人の少女が横たわっていた。少女達には水音の外套がかけられており、桔梗なりに守ろうとしたことが分かる。


「平気よ。魂が体に戻れば自然に起きるわ。むしろアンタは大丈夫だったの?」

「問題ありません。途中、小さいツツキ様が近付いて来ましたが、何もせずに川に戻って行きました。水音の外套のおかげですね」

「そ、それは別にアタシの……いや、何でもないわ」


 何とも歯切れの悪い返事だ。水音はチラリと桔梗の足元を見る。そこではケルベロスが行儀よく座っていた。


(絶対そこの犬のせいだわ。聞くタイミングを失ったけれど、結局何でコイツからウィクシー様の魔力を感じるのよ)


 見つめられていることに気付いたケルベロスはコテンと首を傾げた。可愛い仕草だが、今の水音からしたら恐怖すら感じてしまう。


 水音達がそんなことをしている間に、マミは少女達を担いでいく。


「帰るよ〜」

「はーい。どうやって帰るのですか?」

「簡単だよ!」


 そう言った瞬間パッと景色が移り変わる。目の前には古びた机の脚。地面は砂利ではなく埃だらけの床だ。

 桔梗はいつの間にか床に座っていたようで、スカートや手が埃だらけになっていた。慌てて埃を払いながら立ち上がる。


 マミ達は既に起きていた。ケルベロスが桔梗に気付き、尻尾を振る。


「あ、きーちゃんおはよう。簡単だったでしょ?」

「……マミ、心の準備をさせてください」

「必要だった!?ごめんね〜」

「桔梗、慣れなさい。コイツはこういう奴なのよ」


 水音の目が死んでいる。一体何度こんな目に遭ってきたのか……。

 と、そこで桔梗のスマホが鳴った。見ると『田中さん』と書かれていた。


「もしもし」

『あ、古目さん!妹達が目を覚ましたの!』

「!それはよかったです』


 その後、二言三言会話をし通話を切る。


「向こうの子達も意識を取り戻したようです」

「あら、よかったわね」

「はい。本当に」


 桔梗は安心したように目を瞑る。ふざけていたように見えて、本当は心配していたようだ。

 少ししてゆっくり目を開ける。


「あの、今日は巻き込んでしまってすみませんでした」

「気にしないで。頼まれなくてもやるつもりだったから。……それに、アタシ達は古目探偵団の一員、なのでしょう?」

「そうだよ隊長!隊員としては、謝罪より労りの言葉の方が嬉しいな」

「……ふふ、そうですね。では、これにて古目探偵団の初依頼、『ツツキ様』を解決とします。皆さん、お疲れ様でした!」

「いえ〜!」


 桔梗の締めの言葉とともに全員でハイタッチをする。

 こうして古目探偵団、初めての依頼は無事に終わったのだった。


         ♢♢♢


「ただいま〜」

「お邪魔します」

「失礼するわ」


 そのまま解散することもできたが、マミ達は探偵事務所まで戻って来た。その理由はもちろん──


「おっ、マミおかえりー」

「「陸!」」


愛する人に会うためだ。


「うおっ!バタークッキーと水音じゃん!遊びに来たのか?」

「はい!陸と遊ぶ為に来ました!」

「アタシは違……バタークッキーって何?もしかして桔梗のこと?」

「そうですよ。わたしに対してだけの特別な呼び方です。羨ましいでしょう?」

「は、はあ!?べ、別に全く全然これっぽっちも羨ましくないのだわ!」


 あまりにも煽りに弱過ぎる。その後も桔梗の一言一言に水音が言い返していき、事務所内は一気に騒がしくなった。


 1人放置された陸は、桔梗達を不思議そうに見る。


(コイツら、いつの間に仲良くなったんだ?)


 そう思っているとマミが近付いて来た。

 マミは言い合いを止めるつもりはないようで、キョロキョロと辺りを見渡しつつ関係のない質問をしてくる。


「ねえ、りっくん。先生とフェリさんは?」

「隣の部屋でプリン作ってる」

「今日プリンを買いに行ったのに!?もしかして買えなかった?」

「いや、買えた」

「ええ……」


 驚くマミに陸は苦笑いで返す。陸達の方でも色々あったようだ。


「いやさ、フェリさん元々今日の買い物乗り気じゃなかったじゃん?『マミちゃんは僕の作るプリンより、そちらの方が好きなのですか?』って」

「うん。でも、今朝はもう気にしていなかったよね?」

「いや、あれは気にしてなかったんじゃない。決意してたんだ。高級プリンと自分が作ったプリン、どっちがマミやオレ達の好みなのかはっきりさせる、と」

「そ、そこまで……?罰ゲームの内容、変えるべきだったかな……」


 マミが自分の選択に後悔していると、桔梗が走り寄って来た。桔梗は陸に抱き付き、話に入ってくる。


「今の話、聞こえましたよ!おじ様がプリンを作っているのですか?」

「おう。沢山作ってたからバタークッキーも食ってけよ。欲しかったら高級プリンもあるし」

「やったー!」

「ワン!」

「お前は食べれないから犬用のお菓子な。水音!お前もプリン、食べて帰るだろ?」

「い、いいの?お邪魔じゃないかしら……」


 遠慮している水音に、陸は手を差し伸べながら笑う。


「邪魔なわけないだろ。水音が嫌じゃなかったら、オレは一緒に食べたいな」

「……な、なら……お言葉に甘えようかしら」


 水音は陸の手を取り、はにかんで笑う。その様子に思わずマミも微笑んでしまう。


(水音、幸せそうだな。きーちゃんもケル君も喜んでいる。色々あったけど、今日は本当に──)


「マーミ!何をぼーっとしているのですか!置いて行きますよ」

「えっ」


 桔梗の呼び声で我に返る。陸達はもう移動したようだ。部屋にはマミと桔梗しかいない。


「ごめーん!皆、早いね」

「マミが遅いだけです。……考え事をしていたようですが、悩みがあるのなら相談に乗りますよ?わたし隊長なので」

「ありがとう。でも悩みなんてないよ。今日のことを考えてたんだ〜」

「今日のこと……どうでしたか?今日は」

「ん〜?それはもちろん」


 マミは笑う。それはそれは幸せそうに。


「──とっても楽しい1日だった!」

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