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第五依頼 結成 古目探偵団 2話

「ツツキ様?知らないな〜」

「アタシも聞いたことがないわね」

「ふふ、そうですか。なら教えてあげます。ズバリ、それは降霊術です!」

「……へえ」


 “降霊術”という言葉に水音は真剣な顔つきになる。だが、桔梗は気付いていないようだ。そのままの調子で話を続ける。


         ……………


 それは昨日、わたしが自室で本を読んでいた時のこと。クラスメイトの1人から電話がかかってきました。


「古目ちゃん、今大丈夫?」

「大丈夫ですよ。田中さんが電話をかけてくるなんて珍しいですね」

「う、うん。ごめんね……妹と話をしてたら、あの遊園地のことを思い出しちゃって……怖くなったの」


 通話越しでも分かる程その声は震えています。


(……落ち着くまで話した方がいいかな)


 仕方なく、わたしは話題を頑張って考えていました。すると、その子はこんなことを聞いてきたのです。


「ねえ、ツツキ様って知ってる?」


 聞いたことのない言葉でした。素直に「分からない」と答えると、彼女は『ツツキ様』について知っていることを教えてくれました。


「ツツキ様は妹の学年で流行っている遊びで……まあ、コックリさんみたいなものかな」

「コックリさんというと、五十音を書いた紙と十円玉を用意してやる、あの降霊術ですか?」


 『コックリさん』、それは有名な降霊術……もとい占いの一種です。

 細かい差はあれど共通しているやり方は、紙に鳥居、『はい』と『いいえ』、五十音と数字を書く。その紙に十円玉を置き、そこに指を乗せる。そして「コックリさん、おいでください」と呼びかける。それだけです。


「確か、コックリさんが来てくれたら十円玉が独りでに動くのですよね」

「そうそう。それで、どんな質問でも答えてくれるんだけど、帰ってもらうまで指を離しちゃいけないの」

「あ〜でしたね。昔ホラーアニメで見ましたよ。懐かしい〜。それで、ツツキ様はコックリさんとどう違うのですか?」

「私も詳しくはないんだけど、流れは殆ど同じらしいよ。けど、用意する物がちょっと多くて、人形とかお菓子とかが必要みたい」

「へ〜」


 面倒くさそうだなと思いました。わたしが思うに、コックリさんのいい所はその手軽さ。思い付いたら直ぐにできるような簡単さで、手軽に怖い気持ちを味わえるのが人気になった理由でしょう。なのに、自分から挑戦する難易度を上げるなんて……。


 そんなことを考えていると、クラスメイトの子が急に謝罪をしてきました。


「ごめん。こんな話、興味なかった?」

「え?いえ、そんなことはないですよ。ただ、流れが同じなら別にコックリさんでいいのになって思って」

「あはは……アタシもそう思う。でもその方が“ぽい”のかも。ほら、これって占いの延長じゃん?なら、より本格的で当たってそうなやり方にしたいんじゃない?」


 その言葉でやっと理解できました。わたしのような考えの方が少数派だと。

 わざわざ大変な準備をしてまでツツキ様をやりたがる女子が多いのは、怖さを求めてではなく質問の答え。つまり──


「ああ、成程。女子は好きですもんね。『〇〇君の好きな人は〜?』みたいな、恋の質問。その答えが聞きたいわけですか。子供ですねぇ」

「アタシ達も子供でしょ」


 その声には元気が戻っていました。人に話すことで冷静になれたのでしょう。


 その後はツツキ様の話をせず、軽く別の話をして通話を切りました。


         ……………


「どうですか?」

「どうですかって……何でそんな遊びが流行るのか意味が分からないわ」

「子供って危険なこと好きだよね〜。降霊術をやって何かあっても、自分では対処できないのに」


 冷めた反応だ。水音はまだしも、マミなら興味を持つと思っていた為、桔梗は若干驚く。


「お二人はツツキ様の存在を信じていませんか?」

「むしろ逆よ。いる可能性が高いから、危険なことを自らしている子供に呆れているの」


 水音は頭を押さえて溜息をつく。嫌なことでも思い出しているのだろうか。

 そんな水音の代わりに、マミが「あのね」と説明を始める。


「都市伝説には大きく分けて、2パターンあるの。1つは噂から新しく生まれるパターン」

「あ、分かりますよ。作り話が本当になるってやつですね」

「そう、それ!流石きーちゃん!」


 褒められて嬉しかったのか、桔梗は得意気に胸を張る。そんな桔梗を優しく見つつ、マミは続ける。


「噂をしている子達の『本当にいるかも』っていう意識が実体を作るんだ〜。このパターンは信じている子達の数が多い程、力を増していくの」

「おお!漫画でよくあるやつ!口裂け女とかテケテケさんもそうですか?」


 桔梗のテンションがどんどん上がっていく。次々と知っている都市伝説の名前を上げ、楽しそうだ。

 しかし、対照的に水音の顔は曇っていた。

 

「水音?どうしました?」

「いや、そっちなら楽なのにって思っただけ」

「と言うと?」

「もう1つのパターン……都市伝説を利用する奴が厄介なの」


 桔梗は首を傾げる。水音の言葉だけではピンとこないようだ。水音は少し考える。


(地上生まれの精霊……では通じないわよね)


「えっと、怪異っていうのはその辺りでも普通に生まれるのよ。でも、そういう怪異は存在が曖昧で、見えない人間の方が多い」

「霊感的なやつでしょうか?」


 水音は頷き、続ける。


「そういう怪異は弱いけど、状況を理解して思考する能力はあるの。だから、『コックリさんをやっている子供の10円玉を動かす』『百物語をしている人間の蝋燭の火を消す』なんてこともできるわ」


 言いたいことは理解できる。だが、桔梗は納得できないようだ。


「それ、やって何になるんですか?」

「単純に悪戯とか、人間と遊びたいとか色々あるけれど……1番は都合がいいから、かしらね」


 水音は「例えば……」と少し考えた後、言葉を続ける。


「コックリさん。これは、降霊術というだけあって、本当に下級の怪異が寄ってくるの。……まあ、質問に答えられる程の力もなく、ただ引き寄せられて来ただけの奴だけれど。でも、そんな弱い奴が集まるのなら、少し力のある怪異からすれば確実にご飯が食べられるいい餌場になるでしょ?」

「ひえ、共食い……?」


 本来呼び出そうとした存在が、目の前で謎の怪異に食べられていたかもしれない……その光景を想像し、桔梗は恐怖で冷や汗をかく。

 

「で、では、この場合、『コックリさんは本当にいるぞ』と勘違いをさせて、何回もやってもらう為に怪奇現象を起こしているわけですか?」

「そうね。もちろん、それが逆効果の場合もあるけれど。……まあだから、こういう奴らは悪知恵が働いて厄介なのよ」

「成程……」


 桔梗は俯き、黙り込んでしまう。無理もない。桔梗は過去に危険に巻き込まれている。こんな話を聞けば、その時のトラウマが蘇ってしまってもおかしくない。


 桔梗の事情を知らない水音でも、その姿から何かを感じ、内心反省する。


(怖がらせてしまったかしら。でも、これでこの子供は危険なことをしないでしょう。ツツキ様は後でアタシが──)

「なら……」

「え?」


 桔梗はバッと勢いよく顔を上げる。その瞳はキラキラと輝いており、湧き上がる好奇心を隠しきれていない。


「なら、わたし達でツツキ様の正体を暴き、解決させませんか!?」

「え!?きーちゃん、それって……」

「な、何を言っているの!駄目に──」

「凄く面白そう!」

「は!?」


 水音は驚き、隣を見る。マミは桔梗同様に目を輝かせ、楽しそうに笑っていた。


「そうでしょう!昨日、話を聞いた時から思っていたのですよ。『これはいい暇つぶしになるな』って」

「うんうん。最近ずっと退屈だったから丁度いいよ!まずはどこに行く?」

「い、いやいやいや!待ちなさいよ!


 盛り上がっていくマミと桔梗。それを水音が全力で止める。

 水音は頭を押さえた。どこから指摘しようか悩み、ひとまずマミを見る。


「マミ。アンタは何でやる気なのよ。止めないと駄目でしょう?」

「え〜別によくない?私と水音が一緒なんだし。その方が楽しいよ、絶対!」


 そうだった。マミは灯の『やりたいことをやる』という考えの元、日々仕事や生活をしているのだった。

 マミの背後にぼんやりと浮かぶ灯の幻影を手で消し、今度は桔梗の方を見る。そして、彼女の肩に手を置き、厳しい口調で話しかけた。


「いい?桔梗さん。分かっていると思うけれど、本当に危険なのよ?アタシが解決してあげるから、遊び半分で……」

「違います」

「へ?」


 桔梗は水音の手を払う。彼女の表情からは強い覚悟が感じられる。


「遊び半分ではありません。わたしは本気です。昨日電話した友達……きっと本心ではまだ怯えているはずです。でも、迷惑をかけまいと強がって……っ、わたしは彼女の友達として彼女を助けたい!安心させたい!ここで座って待っているだけなんてできません!」

「!」

「きーちゃん、それは無理が……」

「アンタ、友達想いなのね」

「み、水音〜?」


 今度はマミの方が驚く番だった。

 水音は感動しているのか何度も頷いている。もうマミの言葉は耳に入らないようだ。


「友人のため、危険を顧みずに戦おうとするなんて……中々できることではないわ。アンタのことを侮っていたかもしれない。それがアンタの正義ならアタシも──」


 グッと拳を握り、水音は熱く語り続ける。まさかここまで真剣になるとは……。桔梗は離れた位置からその姿を見る。

 すると、マミが肩をトントンと叩いてきた。彼女は小声で桔梗に話しかけてくる。


「きーちゃん、クラスメイトって言ってなかった?それにさっき暇つぶしって……」

「しっ!いい感じに誤魔化せたのですから黙っていてください」


 桔梗は水音に声をかけ、話を止める。


「えっと……ではこれから調査に行きたいのですが、付いて来てくれますか?」

「ええ、もちろんよ。アタシも力になるわ」

「助かります。それではわたし、マミ、水音。それから……」

「ワン!」


 仲間外れにするなとばかりにケルベロスが吠える。


「ケルベロスも一緒に行きましょうね」

「え、連れて行くつもり?」

「当然です。ケルベロスは普段から探偵事務所で働いている賢い犬。場数だって踏んでいるのですよ?」

「いや、ケル君はいつもお留守番だよ。探偵事務所の番犬ケルベロスだから」

「何と……でも嫌です!置いて行きたくないー!」


 駄々をこね始めた。これでは話が進まない。マミは少し考えてからケルベロスに近付き、優しく撫でる。


「まあ、ケル君も行きたがってるもんね。一緒に行こっか」

「……そうね。何かあってもこの犬なら大丈夫でしょうし」

「本当に!?やったー!」


 桔梗は飛び跳ねて喜ぶ。ケルベロスも嬉しそうだ。


「では、ここにいる全員を今から『古目探偵団』のメンバーとします!目的はツツキ様の解決……さあ、行きますよー!」

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