ログ003-03-2-2|思考構造/《老いと時間》
《老いと時間──老いているのではなく、制度にそう思わされているだけ》
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子どもの頃、「自分が老いる」なんて考えたこともなかった。
毎年「また一つ大人になったね〜」なんて言われても、あの頃の「年を重ねる」は「成長する」とほぼ同義だった。
体力がついて、記憶力が上がって、知識が増えて、恋愛もできるようになって……
あの頃の「時間」は味方だった。背中を押してくれる存在だった。
でも、ある時から気づくんだ。
時間が敵に変わったことに。
肌は荒れ、記憶力は落ち、痩せにくくなり、不眠になり、白髪が出て、膝が痛み、ニキビが復活し、さらにはチンコも前ほど元気じゃなくなったりしてさ。
誰もが言うようになる。「ああ、老けたな」って。
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でも、考えたことある?
「老化」って、本当に時間のせいなのか?
それとも──
俺たちは「制度化された時間」に洗脳されてるだけじゃないのか?
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お前が老化したその日は、
細胞が初めて死に始めた日じゃない。
「もう若くないね」って誰かに言われた日だ。
履歴書を落とされたときに言われた「若い人を探してるんです」。
この社会の中で、自分が「これからの人材」じゃなくなって、
「使われた商品」扱いされたときなんだよ。
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「いやいや、医学的に証拠あるし。ホルモンとか、活性酸素とか、DNAの老化とか、代謝が落ちるとか……」って言うかもしれない。
別にそれを否定する気はない。
でも聞きたいのは:
なんでそれを「衰え」って呼ぶ必要がある?
ホルモンが変われば、むしろ落ち着いて冷静になれるじゃん。
記憶力が落ちても、人を見る目は鋭くなるし、くだらないことに振り回されなくなる。
生殖能力が下がるって? それって逆に自分のためにエネルギーを使えるってことだろ?
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これは「美化」じゃなくて、「言葉の罠」なんだ。
前にも言ったけど、言語ってのは分類の道具で、分類すれば対立が生まれる。
医学がこれを「老化」と呼んだ瞬間、
社会はお前に「交換対象」のラベルを貼る根拠を得た。
老いてるんじゃない、老いのラベルを貼られてるだけだ。
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「定年」って言葉、覚えてるか?
意味はこうだ:「お前の使用期限は切れた」。
会社の制度はこう言ってるんだよ。
「引退しろ。次の奴にバトンを渡せ」って。
どれだけ能力があろうと、どれだけまだ働きたくても、
時間が来たら「退場」しなきゃいけないのが制度なんだよ。
それは「お前が老いたから」じゃない。「お前が邪魔だから」だ。
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一つ、例を挙げたい。
数ヶ月前、俺の家の近くでこんな出来事があった。
ある家族5人が自殺した。
原因は、長女が詐欺グループに騙されたことだった。
最初は「借金を肩代わりしてあげる」って言われて、
その信頼を得た後で、「稼げる方法がある」と勧められたらしい。
結果、家族全員の貯金を奪われ、家まで抵当に入れられて、
最後は偽物の金を買わされて全財産を失った。
誰にも助けを求めず、何も言わず、
ある日、ただ一緒に死ぬことを選んだ。
「バカじゃねえの? 誰かに相談すりゃ良かったのに」とか言うかもしれない。
でも違うんだ。彼らは「助けを求めちゃいけない」って、
この制度に思わされたんだよ。
「お前はもうダメだ」「お前には価値がない」って。
彼らを殺したのは金じゃない。
「もう終わりなんだ」っていう絶望感だった。
彼らは詐欺で死んだんじゃない。
時間という制度に、死刑を宣告されたんだ。
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お前が書いた小説が、3日間アクセス伸びなかったとき、
「もう誰も読んでないのかな」って思うだろ?
でもただの3日間なんだよ。
作品がダメになったんじゃない。
「毎日成長しなきゃいけない」っていう制度に心を縛られてるだけなんだ。
「老化」も同じだ。
体に変化はあっても、それは「劣化」じゃない。
「劣化だ」って制度に言われて、信じてしまっただけ。
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お前を老いさせてるのは「時間」じゃない。
それを信じ込ませる制度だ。
お前がまだ生きてる限り、お前は「生きてる」。
でもこの制度は言うんだ:
「40歳にもなって100万円も貯金ないの? 終わってるね。」
「まだ結婚してないの? それって失敗じゃない?」
「夜更かししてばかり? 早死にするぞ。」
そして、お前は本当に終わっていく。
本当はまだ力も、心も、残ってたのに。
何度も言われて、信じちゃったんだ。
それこそが本当の老化だ。
細胞が死んだんじゃない。
お前の中の「お前自身」が諦めたんだ。