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『剣聖』と『賢者』の息子、正体不明のハズレスキル『整理士』で、歪んだ世界を平和に導く。  作者: 可燃物


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いつもご覧頂きありがとうございます。


誤字報告、ありがとうございます。

修正させて頂きました。

こんな場所ではありますが、御礼申し上げます。

神さまの能力は、考えたことを思い描いた通りにする力だ。


便利な能力だけど、あくまで「ボクが父さんと母さんより先に死なないこと」さえ守られれば問題ないでしょ? みたいな屁理屈がまかり通ってしまう力だ。

逆縁になることを絶対拒否したからと言って、父さんと母さんに死なれてしまったら困る。


なにせ今生どころか、前世を思い出してしまったために、前の分まで恩返ししなければならなくなったのだ。

それくらい、大恩があるからね。



また燼霊を倒して全員が死なないで生き残ることを望んでも、燼霊を屠ったその瞬間、全員生きていれば望みは叶えられたとみなされてされてしまう。

それが半死半生状態だったり、四肢がもがれた状態であっても、だ。


便利なんだか不便なんだか、よく分からない能力だよね。

しかもボクが使えるのは、あくまでその一部にしかすぎない。

使える霊力も少ないから、余計にね。


行使出来る範囲がどこまでかなんて、検証をしているヒマはない。



「攻撃の隙を与えてしまうとは、申し訳ありません」


「透! ケガはない!?」


「油断してしまいました、ごめんなさい」


霊力と魔力の反発によって生じた波動が、大気を揺らし、地面を抉り、砂煙が舞う。

そんな中、庇ってくれた皆が、三者三様に声をかけてくれる。


今までにない勢いで、立て続けに精霊術を使って疲弊している父さんを、誰が責められると言うのか。

今の燼霊からの攻撃を無理矢理防いだせいで、怪我をしたのは母さんなのに、何でボクを気遣うのか。

油断をしていたのはボクで、ボクの分まで気を張る必要もないのに、何でアステルが謝るのか。


……皆、優しすぎるよ。



そんな優しい人たちを、こんな所で殺しちゃいけない。

皆は長生きして、幸せにならなくちゃいけないんだ。


絶対に、死なせちゃいけない。


優しい人が報われる世界にするためにも、燼霊は、ここで倒さなくちゃ。

だったら余計なことを考えずに、勝つことだけを望もう。



父さんも母さんも、アステルだって、とっても強いし頼りになる人たちだ。


どんな攻撃をされたとしても、三人とも驚異的な反射速度でボクの危機に駆けつけてくれた。

ボクを守るために動いてくれたし、攻撃を跳ね返してくれた上に、治癒術までかけてくれる。


それはきっと、誰が危機的状況に陥っても、皆同じことをするだろう。


誰も見捨てない。

全員がお互いにサポートをし合う。


足でまといだなんて、思わない。

人間、人のために何か行動を起こす時は、自分の能力以上の力を発揮出来る。

そういう強さを、皆持っている。


大丈夫。


前世のことを思い出した所で、ボクはボクだ。


変わらずステータスを補強する力は使える。


何の心配も要らない。



前世の記憶を手に入れたことで、ボクも前線に立つことが出来るようになった。

『勇者』として剣を振るった、肉体的な記憶はこの身体には無いけれど、身体の効率的な動かし方は、思い出した。


鍛え抜かれた筋肉による反射的な行動は出来ないから、前世の時のように、母さんと肩を並べて戦う、もしくは背中を任せられるような動きは無理だ。

だけど、自分の身を守るくらいは出来る。


ボクを顧みる必要が無くなれば、均衡した今の状況を、打破できるのではないだろうか。



あの触手は、神子様の身体を乗っ取った燼霊そのものだ。

斬られれば消耗するし、弱体化する。


精霊様が霊力の塊のような存在であるように、燼霊は殆どが魔力で構成されている。

そのため痛みは感じないから、反撃されても攻撃を躊躇わない所が、厄介だよね。



燼霊は基本的に、()()()()()()()姿()を好んで使うけれど、あの燼霊は不定形だね。


神子様の身体を使ってこの世界に顕現しているから、神子様っぽい見た目が基本になっていたのは分かるけれど、完全に乗っ取ったのならば、燼霊の姿に変身して欲しいな。


正直、『魔王』と『勇者』の時の思い出が呼び起こされてしまうから、あの見た目ってちょっと鬱陶しい。

気が散っちゃうんだよね。

楽しい思い出があるからさ。



『勇者』の記憶は有用なものが多いけれど、『魔王』の記憶は、正直、思い出したくなかった。


十年間皆で村で過ごした幸せな時間ならいいよ。

父さんと母さんの思い出も沢山あるし。


だけど、それが黒く塗りつぶされる程、囚われ拷問され磔にされた十年が、酷く重い。



ボクは今、一気に二人分の二十年の記憶と、更に前の、神さまの断片的な感情がごちゃ混ぜに襲いかかってきている。


だから余計に、神子様の姿で惑わしてくるのを、辞めていただきたい。

余計な情報を意識させないで欲しいのだ。


今ちょっとそれどころじゃないから、後にして! と文句を言いたくなる。

言ったところでどうにもならないけれど。


圧縮データをダウンロードしている気分だよ。

目の前の戦いに集中したいのに、バックグラウンドで情報処理にCPUが割かれすぎて、上手く頭が働かない。

全く、勘弁して欲しい。



書き出したバフ効果は全てコピーしてあるから、消えそうになったら即ペースト出来る。

先程触手をまた一本斬り落としたお陰で、燼霊はかなり弱体化しているのだろう。

攻撃の勢いが衰えている。


何事もなければ戦況はコチラに分が傾き、このまま終えられる。


母さんの聖剣の、ヒビ割れが気になるけれど。

確実に勝つためにも、一旦下がってもらって、どうにか修復出来ないだろうか。



ボクが前に出来るか?

基本の値こそ低くなっているけれど、今なら自分のステータスにも、速度強化を含めたバフをしっかりかけてある。


その上『勇者』の記憶のお陰で、多分今まで以上に上手く自分の身体を動かせる。


燼霊も度重なる猛撃により負傷し、さっきボクを殺そうとした破壊光線で保有している魔力がガクンと減ったのだろう。

見るからに消耗している。


母さんが少し下がってくれれば、そしてボクが前に出れば、直すことが出来るのだけど。



「精霊術じゃなく、純粋な霊力をぶつけることって出来る?」


「いえ……やったことは無いです。

 むしろ、出来るんですか?

 そんなこと?」


隙を作るために、精霊術を放ち続けている父さんの後ろにくっついて話しかけたら、とても驚かれた。

なにせ精霊様がボクに向かって頭を下げてしまったからね。


辞めてよ!

神さまの力がちょこっと使えるだけで、ボクが神さまそのものってわけじゃないんだから!


神さまは大精霊様よりも、更に上の存在だ。

上位精霊様たちからしてみれば、直属の上司の、更にその上の存在になる。


元帥の親戚みたいな感じなのかな?


自分の上司に関わっている人を、尊重しようとする態度は分かるよ。

分かるけどさ。


ボクはあくまで貴方たちの契約者の、息子だから。

貴方たちよりも下の立場だから。

そういう態度は取らないで欲しい。



ああでも、上司云々ではなく、強者に対して敬意を払おうとしているのなら、止めることは出来ない……のかも?


他の人たちが持って生まれてくるよりも大きめとはいえ、欠片程度でコレだけの――上位精霊様並か、それ以上の力を使えるようになっているんだもの。

特に上位精霊様と一口に言っても、インベル様は今のボクと同等位の力があるけれど、コルリス様やニンブス様は少し劣り、クラテル様に至っては、幾段も能力が落ちるのが、今なら分かる。


それだけの力量差があるんだもの。

その上‘’神さまの欠片‘’の気配を感じれば、傅きたくなる気持ちも、分からないでもない。


いやいや、でもでも。

やっぱり変だよ。

おかしいでしょ。


子供に跪いちゃダメでしょ。



「神子様の身体を乗っ取っているの、燼霊っていうんだけど……」


「精霊様と敵対している、魔物の総大将みたいな存在ですよね」


「そうそう。

 アイツら、物理攻撃が基本的に効かないんだ。

 精霊術って、霊力を水や土に変換してしまうでしょ?

 そうすると効かなくなっちゃうから、霊力そのものをぶつけた方がいいの」


「……不慣れなことは出来なさそうなので、私はサポートに回りましょう」


「分かった。

 じゃあ、ボクは前に出るね」


子供相手でも、出来ないことは出来ないと正直に言えるのが、父さんの素晴らしい所だね。



精霊様が繰り出す術のように、炎や風に霊力を纏わせることも、コツさえ掴めば出来る。


ただ父さんは長年、纏わせない精霊術を使ってきているから、他の方法が思い浮かばないだけだ。

教えられればすぐに出来るようになるだろうけど……今はとにかく時間が惜しい。


ボクがかけ直したバフの効力が切れてしまう前に、一気に畳み掛けたい。



父さんは精霊様たちへの霊力供給と、母さんとアステルの補助に回ると宣言した。

父さんの治癒術なら、首を落とされない限り、死ぬことはない。


‘’即死回避‘’とステータスに書いた所で、一秒でも生きていれば――大怪我を負ったところで心臓が動いていれば、即死は回避されていることになるので、効果があったと判断される。


もう、神さま関連の能力って屁理屈が多いよね。

一秒程度でどうこう出来たら、お医者様はいらないよ。


それは死んでないだけで、生きてるなんて言えないじゃない。

ああ、言葉が悪いのかな。

‘’即死回避‘’以外に、回復が間に合うような言葉、何かないかな。


思考に割くリソースが足りない。

どうにかならないものだろうか。


ボクの肉体は、ボクである期間の十歳分しか成長していない。

当然、脳みそだってそうだ。


突然頭が良くなることなんて有り得な……あ。


ああ、出来る! 出来るじゃん!


いつぞや書くだけ書いてゴミ箱にポイしてあった『賢者』の文字を引きずり出して、スキル名一覧に移動させる。


このスキルって、どういう理屈なんだろうね。

思考が一気に加速するのが、よく分かる。

脳汁がドバドバ分泌されている感じ。


‘’蘇生‘’と‘’復活‘’の言葉をサッサと皆のステータスに書き込み、再びコピーした。

コレで一安心だ。



ついでに移動させた『剣聖』のお陰で、攻撃力や移動速度、防御力や回避速度なんかのステータスも、一気に底上げされた。

意識がその感覚に馴染むよりも先に、身体が生まれた時からそうであったかのように、自然と思い通りに動いてくれる。


使っている剣が、母さんの聖剣や、アステルの特注仕様の剣じゃないのが悔やまれる。


子供に初めて持たせるただの鋼製の、なんの変哲もない武器屋ならどこにでも、常に置いてあるような剣。

鍛冶師見習いが、腕を上げるために作る量産品だ。


それでも、コレは父さんと母さんがボクに買ってくれた思い入れのあるものだ。

そしてこの旅で散々使い、ボクの手に最も馴染んでいるのは、間違いなくこの剣だ。


どこに重心があるのか、どんなクセがあるのか、分かりきっている。

どれだけの力を入れれば折れるのかも、だいたい分かる。


今のスキルによって急成長したボクの腕力では、恐らく十手も耐えられない。

走りながら紋様を刻んだけれど、付与出来たのは攻撃に霊力を上乗せする術式だけだ。


斬れ味上昇や、耐久性を上げる紋様を無理に刻もうとすれば、その瞬間、砕けてしまうだろう。

出来れば壊したくない。


今、向かってきた触手を斬り裂いたから、あと多くても九手。

燼霊に有効なのが確認出来たのは、僥倖と言える。


懐まで肉薄したのに、攻撃が素通りして全くのノーダメージでした。

そのまま反撃されて死んじゃいました。

なんて言ったらシャレにならないもんね。


斬り落としたはずの触手に絡め取られて、触れた先から腐敗して死にました、にならなくて本当に良かった。


こわい、こわい。



「アステルっ!

 十秒稼げる!?」


「……っ!

 じゅう……にっ!」


「ありがと!」


触手を力任せに蹴り飛ばしたアステルは、十秒なら余裕、十二秒までなら任せろと返してくれた。

心強い。


ふざけてやった性転換だけれど、そのおかげで、成長期ということもあり、身長と一緒に手足もグングン伸びた。

筋肉もついて、岩程度なら簡単に砕いてしまうような触手を、脛で受け止め蹴って弾き返しちゃうんだもの。


バフが掛かっているとはいえ、人間卒業しているよね。


「母さんは一旦下がって!」


前に駆けたアステルと入れ違いに、最前線で燼霊と斬り結んでいた母さんが、大きく跳躍してボクの隣に跳んでくる。

母さんも、大概人間離れしているね。


何を聞くでもなく、意見をすることもなく、二人ともボクの指示に従ってくれるなんて。

嬉しいやら、怖いやら。


ボクが戦況を掴み損ねたら、一気に戦線が瓦解してしまうじゃない。


『賢者』のスキルのお陰で頭は回るようになったけどさ、やっぱ本職である父さんには負けるからね?

基本的には、父さんの指示に従ってね?



聖剣を貸してもらい、すぐに修復を施す。

剣身が欠けてしまったことで、霊力を巡らせるための回路が一部断裂してしまっている。


そのせいでうまく母さんの霊力が行き渡らなくなってしまい、攻撃力が落ちてしまったようだ。

コレさえなければ、今頃戦闘は終わっていただろう。



母さんには霊力回復用の薬を飲んでもらう。


鍛冶師じゃないから欠けた剣身を直すことは出来ない。

付与術師じゃないから回路を引き直すことも出来ない。


だけどボクには、神さまの力を使うことが出来る。


限られた空間、指定した物の時間を、数分程度巻き戻すことくらいなら出来る。


霊力はものすごく消費するけど。


‘’神さまの欠片‘’を授けてくれるなら、霊力も相応の量が欲しかった。

こんなんじゃ、すぐに枯渇して倒れてしまう。



剣身がいつ欠けてしまったか分からないので、この戦いが始まる直前まで聖剣の時間を巻き戻した。

そのせいで、戦いの最中に母さんが込め続けた霊力は、消えてなくなってしまった。


輝きが徐々に喪われたことで、母さんもそれは気付いたみたい。


返すと同時にすぐに霊力を込め直して、「ありがとっ!」と短くお礼を言って、颯爽と前線に戻って行った。


時間にして九秒掛かっていないくらい。

アステルに無理をさせ過ぎずに、済んだようだ。


ボクは剣を構えていても、燼霊に剣士としては見られていないみたい。

そこを利用して、一気に畳み掛けたいね。

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