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黒い羊が一匹
そこで、あたしは、とても惨めな女だった。
どんな華やかな服を着ても。最上級の教育を受けても。極上の暮らしをしていても。
どうしようもなく惨めで、仕方なかった。
「婚約を破棄する」
だから、その言葉にむしろ、ほっと安堵したのを覚えている。
そのせいでどんな仕打ちを受けるか、知れなかったと言うのに。
「お前のような役立たずはもういらない。辺境の、修道院に行け」
冷たい目をした実の父親から、そう告げられたときも安堵した。
今の生活よりも辛いものなどないだろうと。
たぶん、あたしは、生まれる場所を間違ったんだ。
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