表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/31

9


「壁はできるだけ頑丈に、でも空気の入れ替えはしっかりできるよう窓は大きめで」

「材料とかを入れておく棚も欲しいな」

「作業をする机は立ってできるものと座ってできるもの、両方あると良いと思う」


 数ヶ月後、私は兄と研究室をどのようにするかの意見を出し合っていた。



 あの後、香りや保湿、形や包装など、見た目にもこだわった石鹸を作った。それをヴィクトリアを通じてべルーファス公爵家で使ってもらったのだ。

 その効果は絶大。

 社交界に行けば、香水とは違ったほのかに香る匂いにベルーファスご夫妻は、交流のある方はもちろん初めての方にも香りの正体を聞かれた。


「これは、お友達のホワイティ侯爵令嬢から頂いた石鹸というものを使ったのです。香りだけではなく見た目も可愛らしくて、お肌の調子も良くなりましたの」

「そういえばホワイティ家が関わっている孤児院の話は聞きまして? あの施設だけ今回の病にかかるものが少なかったんだとか。そこにもこの石鹸を渡していたそうですわ」


 公爵家が使っているものは、それだけで箔がつく。さらに香りは本能に響く上、美しい見本のようなメアリー公爵夫人を目の当たりにすれば心は動くというもの。


 次の日にはホワイティ侯爵家に問い合わせが殺到。お父様は驚きつつ、急いで工房を手配。品質は保ちながら急いで生産。売り出せば瞬く間に大ヒット。同じ工房で平民用の安価なものも作って販売。そちらも徐々に売り上げを伸ばしている。


 兄妹(わたしたち)の処女作は父に認められ、研究室のおねだりは成功した。



 研究室完成直後、父に「危険なことはさせるなよ」と兄は念を押されていたらしいが、それを私が知るのはだいぶ後になってからだった。







 研究室ができて、8年が経った。

 兄は器用なのを生かし作業効率が上がるような装置を作った。私は化粧水などの美容関係とインフラを整える。それぞれ楽しく、日々動いている。

 当たり前だが、ふたりでやるとスピードもやる気もアップする。私が言った前世の記憶(言葉)をうまいこと兄が再現してくれるのもありがたい。そういえば自転車の時も最初に反応したのは兄だった。

 今では自分達でもいろんなところへ出向いたりもしている。おかげでこの世界は、インフラ含めて多くの変化が起こっている。


 畑は、それまで手作業で耕していたが、一輪を押せば済む道具ができた。領地に帰るたびに農民にお礼を言われている。こちらとしても直接話を聞けて改善点もわかるから一石二鳥だ。


 捨てていた穀物を使って度数を飲めないほど高めたお酒も作った。要は消毒用アルコールである。怪我を治しても破傷風などで再発していたことが多かったが、消毒をするようになってから激減だ。


 犯罪が多発しやすい貧民街の希望者には侯爵家(うち)の工房で働いてもらった。平民向け石鹸はグラム売りにしたから形を整える必要がない。故に『選ばれし技術』を使わなくてもできるのだ。侯爵家(うち)も新しい工房の働き手を探していたからwin-winである。


 子ども達には無料で学び所を作った。文字が読めて、数字かわかるだけでも搾取される確率は下がる。

さらに優秀な人材には、礼儀やお茶の入れ方などを学ばせる。貴族屋敷で働けるくらいにして、侯爵家公認にすれば雇ってもらえるところも多いだろう。



 そんな中、道路だけがうまくいかなかった。他の領地も関係してくるからだ。全然、着手許可が出ない。領地によっては必要性すら感じていないのだ。『今あるのにわざわざ作るの?なんで?』という感じ。


 整備しておけば馬車が通りやすくなるし、見晴らしも良くなるから野党も減るし、王都からも物資他の到着が早くなるから、何かあった時にも安心で良いこと尽くしなのに。

 力説したが納得してくれない領主が多い。長いこと有事が起こっていない国だから、仕方ないといえばそうなのかもしれないが。馬車の時の腰痛もよくなると思うんだけどなぁ…。悲しい。



 そんな風に、令嬢らしからぬ忙しい日々を過ごしていた日の夕食時。母から「そろそろドレスを仕立てましょう」と言われた。王妃主催のお茶会があるらしい。通常のお茶会なら忙しさを理由に断るのだが、王妃様からのは断れない。というか断らない。大事な極太顧客だから。いらっしゃる方々含めて。


「ではいつもの石鹸に加えて、この間作った化粧水も持って行きましょう」

「いいわね。今回は何の香りをつけたの?」

「今回は香りはつけませんでした。その代わり前回より刺激がなく、保湿も長続きします」

「まぁ、それは素晴らしいわ。この間のものは荒れているところにはとても使えなかったもの」


 やはり美を高めるものは女性の気を引き、財布の紐を緩ませる。どの世界も変わらないものはあるなぁ、おかげでヒット商品連発だ。


「でも香りより保湿を大事にするなんて…。あなたがデビュー前の14歳だと言うことを時々忘れるわ。自分の娘なのに年上に感じる時があるもの」


 そんな母に苦笑いを返す。前世を含めると確かにお母様より年上なのだ



やっと1話のところまで追いついた感じです。



ここまで読んでいただき、ほんっと〜にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

少しでも面白い、また続きが気になるなぁ、と思って頂けましたら、ブックマークや下の★★★★★で応援していただけると、大変執筆の励みになります。


投稿したらポストしています。

よければフォローお願いします。

https://x.com/mizunoanko000?s=21&t=eAiLfjibkiIfxwWXg9stjg

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ