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 帰って来てからの、王都での生活は変わった。


 ひとつは、公爵家のヴィクトリアやロージーと定期的に手紙のやり取りをするようになったところ。

 もうひとつは、兄が私と研究をするようになったところ。


 あの旅行の後、デビと何を話していたのか聞かれて、研究の話を中心にいくつか答えた。そしたら制作が好きだった(あに)は興味を持ち、「一緒に作ってみよう」と提案された。元々手先も器用で、自転車を作った時も一番活躍し、頼もしさを感じていたから嬉しい提案だった。



 兄とふたりでの処女作は石鹸。

 石鹸の材料は、油、水分。それに重曹だが、この世界にはなさそうなので灰を使う。


 灰を使うと言ったらびっくりされた。うん、わかる、私も最初びっくりした。前世で節約と趣味を兼ね備えていた自家製物の制作。その手始めに作ったのが石鹸だった。重曹を切らした時に代用品はないのかと検索したら、灰と出てきて「マジで?」となったことを思い出す。



 まずは覚えている正規方法で作る。『灰に熱湯をかける。落ち着くまで放置(大体ひと晩)。その灰汁を油と混ぜて型に入れて、冷めるまで待つ。』


 この世界の材料でも作れるかは賭けだった。が、なんとなくそれっぽいものができた。正直こんなすんなりいくとは思わなかったが、良かった。石鹸と呼べるものができて。


 なにより嬉しいのは『選ばれし技術』を使わずにできたこと。前作(自転車)の失敗もあってか、すごく嬉しい。そんな風に喜んでいたら「全く使われてないとは言えないよ?」と兄に指摘を受けた。

 どういう意味?と聞いたら、なんと侯爵家(わがや)は、油を作るのに『選ばれし技術』の道具が使われていた。だから、油にも多少その恩恵があるとのこと。

 なにそれ。もう嫌になる。どこをとっても何を使っても『選ばれし技術』。


「まあ、うちにある材料で何かを作ろうとすれば、恩恵があるものしかできないと思うよ」と苦笑いされた。相手は兄なので遠慮なく不満顔を出す。すると指で眉毛の間をぐりぐりされながら「顔のパーツが中央に寄ってて面白いけど、その顔は淑女じゃないな」と嗜められた。


 もういい、『選ばれし技術』のことは一旦置いておく。兎にも角にも石鹸はできあがった。自分でも使ってみる。前世の記憶のものより柔らかいが、使い心地は悪くなさそうだ。


 その石鹸を、いつも訪問している孤児院へお土産として渡した。食事の前。トイレの後。もっと量産できるようになったらお風呂でも使ってもらいたいことを伝える。それが定着すれば、病気は激減するはずだ。

 いきなりはきっと難しい。だからゆっくりで良い。清潔なことがもたらす結果を知ってもらおう。そのうち下水道もやりたい。


 そんなことを考えながら何回か作り、その度に配る。薬草を混ぜたり、香り付けを試してみたり。手洗いを嫌がる小さな子のためには、洗えばおもちゃが出てくるものも作ったりした。



 数ヶ月後、孤児院ではだいぶ手を洗うことが定着してきた。それと同じ頃、季節替わりの風邪が流行った。そんなに重くはならない、鼻風邪と熱が数日続く程度のもの。だが範囲は広く、年齢も関係なく猛威をふるっていった。


 しかしホワイティ家が訪問した孤児院では、子ども達含めかかる人は格段に少なかった。

 報告を受けた私は喜んだ。これを実績に父へ交渉を持ちかけられる。

 おねだりするのは研究室。屋敷で研究が思いっきりできる部屋が欲しい!石鹸のおかげで清潔さが保たれて、病原菌を退けた。大いなる実績だろう。



 と思ったが、父は関連性を認めてくれなかった。まだウイルスや菌という概念がないせいだ。前世では当たり前のように推奨されていた手洗いうがい。それを疑われるとは思わなかった。いろんな言葉を使い説明したが、父の頭が縦に振られることはない。私はまたも頭を抱えた。


 自室でお茶を飲みながらため息をつく。研究室ができれば、もっとできることが増える。なぜ認めてくれないのか…。

 もうひとつ、ため息をつきかけた時、ドアをノックする音がした。



 侍女に開けてもらうと、そこにいたのはジェームスだった。侍女にお茶をもうひとつ頼んで、イスをすすめる。


「父上に頼み事をしたんだって?」

 お茶を一口飲み喉を潤したところで、兄が微笑む。



 清潔さを保つことで病気になりにくい。それが実績になると思ったことを伝えると「あぁ、なるほど。それじゃあ無理かもしれないね」と眉を下げられた。なぜ?と聞くと「動く理由として弱い」と当然のように言われる。



 なぜだ。孤児院では不十分なのか? 貴族じゃないとダメなのか!?

 …悲しいがそれがこの世界のやり方か。

 わかった。理解した。つまり、その研究によって侯爵家が動かざるおえない状況にすればいいってことね?



ここまで読んでいただき、ほんっと〜にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾

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