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過去振り返り編。まだ続きます。
転生していることを受け入れた私が、次にやることは『どこの世界に転生したのか』を探ることだった。もし、自分が悪役令嬢なら、断罪される前になんとかしたい。
でも、私や家族の名前には聞き覚えがなかった。そもそも少女漫画を読むことも恋愛ゲームをやることも私は少なかったのだ。
唯一、しっかり覚えてるのは、高校に入ってすぐ友達になった漫画家志望の子が『テンプレ通りのストーリーだけど、とにかくイラストがきれいで可愛いのっ』と勧められたゲーム。
その友達と話がしたくて、そのゲームだけはやり込んだ。
その後も勧められたのだが無理をしているのが分かったのか『やりたくないなら言って?好きじゃないのに遊ばれるのも嫌だから』と言われたので、それ以降は興味が沸いたものだけを、軽く遊ばせてもらった。
つまり元々の知識が少ない。それでも黙って待っていたら断罪されるかもしれないからできることはしよう。そう思った。
とにかく情報を集めねばと、家にあった本を片っ端から読むことにした。前世でいえば小さな図書館くらいはあるかという書庫。
使用人や家族は、突然の行動に驚いてはいたが、止められることはなかった。元々絵本は好きで、ひとりでも読んでいたため、興味が変わったのかな、くらいの認識だったのかもしれない。
この国の名前、成り立ち、神話、神の名前。建国からの貴族の名前、その成り立ち、生業、領土の面積、名産品。市井の暮らし、貴族の暮らし。建築、流行りのドレス、ヘアースタイル、料理や刺繍のあれこれ。薬の専門書まで。書庫にある本という本を全て読み込んだ。
一文字も漏らすまいと調べに調べて数ヶ月。これでもかと情報を集めて記憶と照らし合わせたが、なにとも結び付かなかった。
愕然としたが、逆に安心してもいいのかもしれない。何も関係ない、穏やかに暮らせる人物に転生した可能性も出てきたのだから。
情報弱者で不安な部分はあるものの、そんなに気負わなくても良い…?
そう思ったら気が抜けた。数ヶ月ぶりにホッとして気付かぬうちに涙が出た。スカーレットはすでに6歳になっていた。
⭐︎
断罪される心配は、とりあえずないのかもしれない可能性が高くなったので、考えるのをやめた。そうなると別のことが気にかかってくる。隅々までこの国を調べた結果、分かったこと。
それは『インフラ弱すぎ問題』。
往々にしてありがちだが、この世界も前世と比べるとインフラが弱すぎた。上下水道、ガス、電気、教育、交通、その他。
しかも『これに使ってる技術を応用して、こちらに使えばどうにかなるのでは…?』というものも多い。なぜこの世界に生きている人は気付かない?とも思ったが、前世にはない便利すぎるもののせいらしい。
それはいわば魔法。この世界では「選ばれし技術」なんて呼ばれてる。
でも、その魔法をできる人は、本当に少ない。10年から50年にひとり生まれるかどうか。そのひとりが生まれるのを待って「技術石」「技術水」「技術板」または「技術を付属できるような何か」を作ってもらう。
要は、そのひとりがいろんなものに魔法を付与する。付与されたものは「選ばれし技術」を扱う人たちによって加工されて王族に献上。献上されて許可が出たものだけが貴族に使うことを許される。平民に下賜されるのは、さらにその後。
王族の名の下に販売もされるが、とても平民に手が出せる額ではない。裏取引もされているらしいが、もちろん違法。しかも偽物をつかまされることも多い。歴代の王たちが頭を悩まされているひとつだ。
その便利すぎるものがあるが故『それさえあればいい』状態。逆に言えば、それがなければ諦めることが当たり前になっている。
実にもったいない。技術があるのに使われていないも同然だ。前世では、節約や効率化を考えて常に行動していた。仕事でも簡略化を求めてやっていたため、私の勿体無い根性が爆発した。
次の日からは、自室に籠った。それぞれの技術をどこに応用すればいいか考えるためだ。前世の知識、フル活用。
部屋での作業がひと段落した頃、夕食時に父から旅行の提案をされた。家族で港町に行こうと計画しているらしい。
港町?海? なにそれ…素敵。
私が喜んでるのがわかったのだろう。父は笑顔で「では、明日出発だから」と言った。
こうして、心の準備もないまま、家族旅行は決行された。
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