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久しぶりの投稿です。
そろそろラストスパートかけたいなぁ…とは思ってます。(思ってるだけ)
ディビット様に告白された。
らしい、が。 本当か?自分に起こったことが信じられなくて放心状態だ。 あの後の授業の内容もあまり覚えてない。
今は帰りの馬車の中。さっき現実味がなさすぎて自分でほっぺをツネってみた。しっかり痛かった。夢ではないらしい。
………が、まだ信じられない。 もしや元婚約者からの扱いがショックすぎて白昼夢でもみたのではないだろうか?
……そうか、そうに違いない。私は白昼夢を見ていたんだ。
現実逃避に近い結論を導き出し、御者が開けたドアを出る。出迎えてくれたダリアと家に入ると、目に入ってきたのはエントランスを埋め尽くすほどの箱だった。 綺麗な包装紙からプレゼントなのが伺える。中身を出している使用人の手元を確認すると色とりどりの女性物が見えた。ドレス、宝石、靴、髪飾り等の小物類、本や花束まである。
「………これ、どうしたの?」
「全てお嬢様宛てに届いたものです」
「え!?だっ誰から?」
「ディビット・ソフラという方からです」
「!!???」
夢じゃなかった!? っていうか、こんなにたくさんの品物をいつ手配したの!?
ディビット様に告白されて、それに答えたのが今日の昼間。 仕事が早すぎてびっくりする。
綺麗に包装されているのは目にも鮮やかな品々。そのひとつを手に取ってみると上質なハンカチだ。手触りといい刺繍といい、職人のこだわりが見える。その柔らかさに送ってくれた相手の気持ちも感じるようで、胸の辺りに暖かいものが広がった。
久しく感じていなかった気持ちに戸惑いつつ、赤い顔を隠そうと下を向く。ほわほわして浮いているような感覚だ。足元を確認するが、両足はしっかり床を踏んでくれている。
(こういう気持ちをなんて言うんだっけ?・・・浮き足立つ?ん?少し違う?)
前世の言葉がうまく思い出せず、下を見たまま、うーん?となっていると、新米侍女達が黄色い声を上げた。
「これ人気店のなかなか手に入らない品物よ」
「わっ老舗店のものじゃない!?予約するだけで1年待ちのところよ!」
「はぁ……素敵ねぇ」
箱を開けるたびに歓声をあげている侍女達。この家にきてまだ短く、年も若い子達だ。それを諫める教育係の侍女。その光景に笑いが溢れる。このプレゼントの数々には、確かに心がこもっているのだろう。
「………ダリア、どうしよう」
「いかがいたしましたか」
「………私、喜んでるみたい…」
その言葉に、いつも私の気持ちを汲んでくれる専属侍女は、優しく微笑んだ。
「よろしいのではないですか。お嬢さまは今日まで十分に頑張ってこられました」
手に持ったハンカチを、もう一度見る。刺繍はプルメリア。五つの花びらが可愛い花だ。他にもひまわり、ムクゲ、パンジー等。同じ手触りの色違いのハンカチにそれぞれ刺繍が施されている。シリーズのようなそのハンカチに侍女のひとりが「すごいですね…」とつぶやいた。「これらの花すべてに、一途な愛という意味があります。間違いなくお嬢さまをお慕いしている方からですよ」と。
……………まずい、キャパオーバーだ……。
その夜、私は熱を出した。原因はわかってる。本当に私は成長していない。恋愛事が苦手なのだろうか?前世は結婚もしてるのに?
そこまで考えて思い出す。
そういえば、あの人とはお見合いだったわ…。
仕事場で勧められたお見合い。
『もう仕事以外の幸せも考えた方がいいんじゃないか?』
余計なお世話だと思いながらも、上司から薦められた話は断れなかった。
行ったホテルにはスーツを着た好青年。タイプかと聞かれても分からない。だが紹介した友人に対しての態度も悪くなかったため、自分の中では及第点になった。
『これからお互いをゆっくり知っていこうよ。燃え上がるような思いより、同じ感覚を共有できるかが大事だと思う。僕は君を嫌いじゃないよ。それで十分じゃない?』
誠実さと穏やかさを纏った空気に、居心地の良さを感じたのは事実だ。あの時の私に好意を求められていたら、一緒にはいられなかっただろう。きっと前世の夫も恋人でなくパートナーが必要だったのだ。利害の一致。それが私にとっては恋愛より確かで信用できるものだった。
転生して、やっと俯瞰できるようになった前世。
前世の私は、最初から期待しないようにしている節がある。その理由は失くすことを恐れていたからだ。失くすくらいなら最初から無い方がいい、その方が楽だと思っていた。だから恋愛なんて不確かなものではなく、損得で考えられる相手を選んだのだ。しかし、その夫との関係性も父親によって壊され、そのまま最後を迎える。
(・・・そうか。私は、愛されることを恐れているのか・・・)
もちろん家族の愛は知っている。前世でも母親には愛されていたし、今世の私も愛情たっぷりに育てられた。
でも恋愛では?
最初から期待していないのではないか?
長年、元婚約者から愛情を感じられなくても気にしなかった理由がわかった。最初から求めていないのだから、与えられなくても平気なはずだ。
そんなことを考えていたら頭まで痛くなってきた。やはり、夜はろくな思考にならない。前世で九州のばあちゃんが『夜は考え事をするもんじゃない』って言っていたが、本当だ。
頭痛と共にぐるぐる回る思考をどうにかしたくて、目を閉じる。すると浮かんでくるのはディビット様の顔。
頭の中のディビット様がいるのは、昼間の学園。そういえばあの時、彼はフルネームを名乗っていなかったか? 舞い上がりすぎて今、思い出した。その名前に既視感を感じたことも。彼が言っていた名前は、確か、ディビット・ソフラ……なんだっけ?
疲れていたのだろう。目を瞑った私は気づかないうちに、夢の世界へ落ちていった。




