15
「いいか、余計なことはするなよ」
入学式に向かう馬車の中。デビが私にそう言ってきた。しかも、窓から学園が見えてきて私が「わ〜」と喜びの声を上げた瞬間に。
(…期待に胸を膨らませてる婚約者に言う言葉がそれ?)
タイミングをを見計らって言ったとしか思えないデビにびっくりしてしまう。
婚約発表のパーティー以降、彼はこんな感じのことをよく言うようになった。抑圧的というか高圧的というか。最初は心配からくる行動制限?とも思ったが、ちょっと違う気がしてきてる。
「…余計なことって何?」
学園をよく見るために置いていた手を窓から離し、デビに向き合う。淑女の笑顔で。首を傾げながら。
「余計なことは余計なことだ」
無表情なのに、こんな事もわからないのか?と聞こえてくる顔。
「それじゃわからないから聞いてるんだけど」
首を傾けたまま顎に手をかけて、理解してないことをアピールする。
もちろん、本当に分かってないわけではないが。
「………」
(…! 今、ため息つきましたね!?)
お前の相手は疲れる、と言わんばかりにつくため息。こんなに露骨にやられるのは初めてだ。
「………具体的に言ってくれなきゃ、何に気をつけたらいいのかわからないわ」
『あくまでも、淑女らしく。笑顔で。』 最近、デビと一緒にいる時に心の中で唱えていた呪文を、今日も唱える。
「………」
(!! またっため息っつきましたねっ!!?)
だめだ、淑女の仮面が取れそうになる。前から思うところはあったが、最近は特にひどい。 一体なんだというのだ。
そんな攻防(?)をしているうちに学園に着く。デビが先に出て手を出してくれた。エスコートもされなかったらどうしようかと思ったが、流石にそこまで嫌われてなかったようで良かった。
そのまま並んで校舎へ進むと「カーリー!」と聞き慣れた声が聞こえてくる。振り向くと、ヴィクトリアとロージーだ。ヴィクトリアは、笑顔で手を振りながら小走りで向かってくる。
「ヴィオ!ロージー!」
あの旅行以来、すっかり仲良くなって愛称で呼び合うようにもなった親友を、両手を広げて迎える。
「久しぶりねっ何ヶ月ぶり?」
興奮した様子の笑顔のヴィクトリア。今日もかわいい。
「泊まりに行って以来だから3ヶ月ぶりくらいかしら?」
私も笑顔で答える。
「カーリーっ転ばないで良かった…正確には2ヶ月と2週間だよ」
ヴィクトリアを受け止めきれなかった私の背中を支えてくれたロージーが、苦笑いで言う。
「姉さんは今年卒業だけど、研究生として残ったんだよ」
「えぇ!? ヴィオ! すごいじゃない!」
「カーリーも入ってくるから頑張ったわ!」
「まぁ、それじゃあ私のために頑張ったって聞こえるわ」
「ふふふ。もちろん研究も面白いのよ?」
ヴィクトリアは3歳上。本来なら入れ違いで卒業になるのだが研究生として残るらしい。
研究生。先生と一緒に研究をする助手のような存在。卒業する成績優秀者に声がかかることが多い。要は専攻授業の先生が卒業生をスカウトするのだ。スペシャルクラスとはまた違った特別感があり、憧れている生徒も多い。
「…こんにちは、ナヴァル伯爵子息」
「どうも、べルーファス公爵子息」
ロージーとデビが後ろで挨拶を交わしている。ロージーはわかりやすく作り笑顔で、デビは笑顔すら作らない。昔より仲が良くなさそうなのは、きっと気のせいじゃないだろう。前に、ロージーと何かあったのかとデビに聞いたが『別に』と返されてしまい、それ以来追求出来ずじまいだ。少しの寂しさを感じてしまうが、男の子の友情は範囲外で不明部分が多いため、放っておくことにする。そのうちまた仲良くなってくれるかもしれないし。
その後、入学式も無事に終わり、クラス分けが貼ってある場所へと向かうと、人だかりの先に張り出されている紙が見えた。デビかロージーと同じクラスになれますように、と願いを込めながら見上げた。
3人の名前は同じクィーンクラスにあった。が、人数が多いため、さらに5つのに分かれており、見事に全員バラバラだった。
「あぁぁぁあ〜……分かれちゃった〜…」
つい落胆の声を出すと「今のをジェームスが聞いたら『淑女じゃない』って言われそうだな」とロージーに笑われた。 せめて、と私の教室までみんなが送ってくれる。扉を開けて自分の席を探し、カバンを置くと「スカーレット様」と声をかけられた。パーティーで紹介を受けた令嬢だ。知り合いがいてひとまずほっとした。
学園物語ではなく、学園を舞台にした物語にしたいなぁと思いましたが、違いはよく分かってないです。
ここまで読んでいただき、本っ当にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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