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「お兄様。この間の化粧水、また追加注文が入りました。売上好調ですわ」
「さすがカーリーだね。僕も負けてられないな」
お茶会で配った化粧水は好評。ダリアやダリアの家族に意見をもらった甲斐があるというものだ。
次の研究に意識がむきかけた時、ドアのノック音がなった。入って来たのは手紙を持ったダリア。差出人はデビ。今は私の婚約者だ。
数年会えなくなると言っていたデビとは、べルーファス領で別れた4年後に再会した。
場所は、王都で行われた王家主催のパーティー。かなりな大規模で、夜会も開かれた。昼のものは夜会に参加できないデビュー前の子ども達用だ。つまり国内の貴族はほとんど参加していた。
当日、あいさつが済むと早々に兄と侍女から離れ、デビを会場中探し回った。個人的には会うことは敵わない。でも今日は会えるのではないか? どんなに忙しくても王家からの誘いを貴族なら断るわけにいかないのだから。
あの時の私の頭の中はデビでいっぱい。また話を聞いてほしい、デビの話を聞きたい。それしか考えられなかった。デビの特徴的な赤茶色の髪と翠眼、それだけ考えて会場を歩いた。
だがなかなか見つからず、足が疲れてどこかに座ろうとベンチを探していた時、数人のグループのひとりが後ろからぶつかってきて転んでしまった。
「いたいっ」
「うわっ」
ぶつかった男の子も芝生の上に尻餅をつく。手についた土と石、膝も痛い。謝る声も聞こえてこなかったので文句のひとつも言ってやろうかと、少し泣きそうになりながら勢いよく男の子を見た。
すると目に飛び込んできたのは、赤茶色の髪。少し前髪がかかった瞳は翠眼。
「デビっ!?」
「え!?」
私がそう呼ぶと、その男の子だけじゃなく、グループの子達もびっくりしていた。
「デビ!!デビでしょ!?」
会えた嬉しさで挨拶もなしに名前を呼ぶ。戸惑う声で「…おまえ、誰?」と聞かれた。
「え………ス、スカーレット、スカーレットよ!? ほら、ホワイティ家の…」
「そんなやつ知らない」
がーーーん!!!忘れられてる…。
その後、そばにいたグループの子達と何かしゃべっていた気がするが私の耳には入ってこなかった。
私はショック過ぎて、しばらくその場に座ったままだった。気が付いたらデビ達はおらず、目の前には兄。ドレスも汚れ、地面に座ったまま何も言わない私に「何があった!?」と聞かれたが、うまく言葉にならず私は泣き出した。
いつもは泣かない私が泣いたから、兄はただ事じゃないと急いで私を連れて親のいる屋敷に戻った。
夜会の準備をしていた両親は大慌て。兄に抱きつき「デビュが…デビュがぁあ〜」とか「デビュのバカァぁ〜」と泣き続ける私にどうすればいいのかわからず。でも夜会に参加しないわけにはいかないからとオロオロしている。両親は結局、時間ぎりぎりまでそばにいてくれた。
散々泣いて、泣き疲れて寝てしまい、気が付いたら朝だった。汚れたドレスはしっかり着替えていたから、昨日のことは夢だったのではないかと思えてくる。だってデビが私を忘れるはずがない。
何があったのか家族に説明する機会のないまま2日が経った日の午後。お父様に呼ばれた。
「カーリーに婚約を申し込む手紙が届いた」
びっくりしたが、それはデビのお父様からだった。私は嬉しくて、すぐにOKした。
『きっとあの後思い出したのね、忘れるなんてひどい』なんて思いながら。でも「…きれいになってて気が付かなかったんだ」って次に会ったときに言ってたから許した。そういうことなら仕方がない。
でも、デビは少し変わってしまった。
昔は私の研究を目をキラキラさせながら聞いてくれたのに、今は「そんなことより淑女の勉強をした方がいいんじゃないか?」とか「男を立てることを学べ」とか言われる。そんなことを言われている時は、大好きだった瞳の色も少しくすんで見えてしまう…。
時の流れって残酷ね…。
ー補足ー
両親は夜会の準備で朝からバタバタです。
なので昼間のパーティーには子ども達と侍女や側近等がついて行きます。
本当は令嬢ひとりでなんて歩かせないんですが。
今回はスカーレットが暴走したって感じです。
ー補足おわりー
ここまで読んでいただき、本っ当にありがとうございます(♡ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
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