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遊侠、貴族令嬢になる。しかも婚約破棄されて伝説になる。  作者: ルーシャオ


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第三十話 答えを突きつけ

 大兄様は、特別雄弁でも無口でもない。


 議論や説得に言葉を尽くす人ではないにせよ、口数が少なく誤解されるということはなく、貴族の嫡男として十分な教育を受けてきた。女性が苦手であることが唯一の欠点というだけで、侯爵家の次期当主としては申し分ない能力と経歴の持ち主だ。


 しかし、今ここにいる人々は()()()()()()()()()()()()というレベルの存在だ。プランタン王国軍のトップ、その頭脳、大物政治家の右腕、軍内部の出世頭……大兄様よりも頭一つ二つは上回るような才能の塊ばかり。


 ——でも、だからと言って戦えないわけではない。格上との戦い方くらい、知っている。


 大兄様は、静かに言葉を待つ円卓の人々へと、重々しく語りはじめた。


「先日のことですが、一つ、考えさせられることがありました」


 何となくその内容を察した私は、忠次が出てこないようベルの手をしっかり握る。


「我々はあまりにも正規の戦いにばかり気を取られている、と思わざるをえず、これから先に我が国では想像もつかないイレギュラーな戦いを仕掛けてくる国や組織があるとすれば、どう対処すべきか、と」


 大兄様に向けられる視線は、疑問や感心、好奇心、品定めなどなど様々だ。


 先日の誘拐未遂事件、あれは大兄様がいて安心だと思っていた矢先に起きた事件だ。マントたちはあくまで正規軍や訓練を受けた傭兵ではなく、ただのギャング(ラ・ミリュ)にすぎないにもかかわらず、迅速な襲撃から銃といった武器の手配、馬車や拠点に、あろうことか大量の火薬の所持と、どう考えても今までとはまったく違う存在で、単なる犯罪組織として摘発や解決を警察だけに任せるには少々荷が重すぎる。


 それで、だから何? と言われれば、私はこう考える。


 ——軍隊同士がぶつかるのではなく、軍隊に対して市民や犯罪組織までもが牙を剥き、襲いかかってくるようなことがあれば、どう対処するのか。


 片っ端から市民を虐殺するわけにもいかず、貴族や有力者の庇護がある商人、傭兵をただ捕まえることもできない。下手をすれば内乱に発展する。


 資金力さえあれば犯罪組織程度でも正規軍の火力に匹敵する銃火器といった武力を身につけられるようになった昨今、『正規の(今までの)戦い』だけでなく『イレギュラーな(新時代の)戦い』が増えてくるのであれば、もはやプランタン王国内でだけ議論して対処の方法を探るというのはあまりにもどん臭く、非効率的だ。


 ——なら、ほら、ここにちょうど外国へ向かう使節団がある。そこに乗っかればいい。


「つまり、我々はその方面に関する知識が不足している。あるのだとしても、あまりにも一箇所に偏りすぎていて、効果的に対処することが難しい。であるならば、学ばねばなりません。他国ではどうイレギュラーな戦いに対処しているのか、あるいはどう仕掛けているのか。それを広く深く知るために、私は使節団に参加を希望しております」


 ここまで大兄様が話せば、感嘆の吐息の音さえ聞こえてくる。


 ジヴロン軍務参謀も、それは認めざるをえなかったようだ。


「なるほど、貴殿なりに考えあってのことか」

「ご意見がおありであれば、ぜひとも参考にさせていただきたく」

「いや、理に適う判断だ。こちらでも、近年の戦いの変化に関して少々見識が不足している、と思うことはままあった。前線の士官である貴殿さえも憂慮しているのだから、是が非でも対策を練らなければなるまいよ」


 伊達男の肯定に、まんまるいオートンヌ子爵が釘を刺そうとする。


「ジヴロン軍務参謀、それは」

「ああ、違いますとも。武力は行使いたしません。しかし、将来の武力行使に関する選択肢の幅を広げるため、平たくいえば見識を広めるために武官の使節団参加には大変価値がある、と私は見ています。もちろん、外交や通商上の意味がどれほど重要かも承知いたしております」


 あくまで知見を広めるためだ、と強調するジヴロン軍務参謀へ、オートンヌ子爵はジロリと疑わしそうな視線を向けたが、すぐにやれやれと肩をすくめる。


「であればよいのですが、くれぐれも、市井のゴロツキとは違うのですから、品位ある振る舞いを心がけていただきたいものです」

「善処しましょう」


 ジヴロン軍務参謀の一言に、オートンヌ子爵がまた引っかかる。まあ、そこはじゃれ合っている程度の話だ。


 それよりも、私としては——大兄様がそんなことを考えはじめた最大の原因に、とても心当たりがあった。


「ひょっとしなくても忠次のせいね……」

「え? そうなの?」


 私だって忠次から聞いただけだが、誘拐未遂事件での忠次の大暴れっぷりは相当なものだったとか。何だか対忠次対策の話のような気がしないでもないが、もっともらしい話に仕上がったのでよしとしよう。


 とにかく、大兄様は窮地を切り抜けた。また忠次が出てきて啖呵を切るようなことにならなかったことを、私は素直に喜んでおこう。


 それ以降、会議は特に滞りなく進み、私とベルは追って使節団結成に向けた進捗を待つことになった。その結成の人員に国外脱出組であるマントやウジェニーことシャリアたちを含めるよう調整するのは、また後日やっていこう。


 さて、本日最後の訪問はブランモンターニュ伯爵家、おじ様の説得だ。


 そろそろ夕暮れが近い、急いで向かわなければ。

ブクマや☆の応援ありがとうございます。

毎日増えてて嬉しくてモチベに繋がってます。ほんとほんと。

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