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95.手紙と相談④

「ローキ、話しがあるのだけど」


「なんだよ・・・」




朝食後の休憩に入るとすぐ、私はローキに話がしたいと伝えた。


ユリウスの授業で襲撃のことを相談する予定なので、ローキに事前に話をしておけば、私が言い忘れたことや気が付かないこともローキがフォローしてくれるかもしれない。

それに、ユリウスが良い案を考えてくれたとしても、私1人では『影』や情報を知るべき人にちゃんと伝えられる自信がまったくない。


ローキはユリウスの授業に同席することもあれば、部屋の外で待機することもあった。

その匙加減はよくわからないのだが、護衛案件なので気にしなくていいらしい。


だから今日は確実に同席してもらえるように話をしたのだ。





それにしても・・・


「・・・なんで、そんな嫌そうな顔してるの?」


「お前が何か企んでたのは気が付いていた・・・それが、今日の朝から妙にやる気になっている・・・昨日の夜、何かあったか?」



そんなに顔に出てたかな・・・



「顔に出てる。現在進行形でな」


「うぐっ」


「嫌な予感しかしねぇ・・・聞きたくない。でも聞いておかないと余計やべぇ気もする・・・どちらにしても頭が痛くなる気がする。いや、もう頭が痛い」



先の先を考えすぎるローキは心配性すぎるだと思う。

私はただ、ユリウスの相談を一緒に聞いてほしいってことを伝えようと思っただけなのに。



「そんな頭の痛いことなんて話さないよ。私はただ、ユリウスの授業に同席してほしいって言おうと思ったの」


「・・・同席自体は問題ねぇが、『なんで』同席が必要なんだ?」


「ユリウスに襲撃の件を相談することになってて」



「・・・・・・・・頭が痛いどころか、めまいがしてきた。もうやだ」



そう言うと、ローキは全身で項垂れてしまった。


確かにお家事情を他家に話すことは普通はしないだろうけど、でも何もしなければ何も得られないのだ。


お母さまやお父さまは絶対できないけれど、子どもの私にはできる。

スーア族の事は話さない様にすれば、ユリウスならきっと知恵を貸してくれるはずだ。



「相談することになっているって言ったな。相談したい、じゃなくて」


「言ったね」


「いつ、そうなったんだ?」



いつって昨日の夜、手紙で・・・手紙・・・あれ?

手紙のことってローキに言ったらダメなんだっけ?


秘密の名前は言っちゃだめだけど、手紙のやりとりはいいんだっけ?



「・・・・・・」


「ひ、ひみつデス」


「はぁぁぁぁぁ・・・・・・・」



た、ため息で怒られた!



「昨日の夜、お前が部屋を出た報告は聞いてねぇ。ってことは通信鏡か・・・特殊な手紙か」


・・・ご名答


「手紙だな・・・世には出てないグレイシャー家の知識ってところか。ちっ、勝手な事してくれるじゃねぁか。これまでも俺に隠れて手紙のやりとりをしてたのか?」


「今回が初めてだよ!」


こ、怖い!!

顔の表情であっさり手紙のことがバレたっぽいけど、手紙自体って言うより、やりとりしていた事の部分に問題があるように力がこもっていた気がする。

すぐに初めてだと強調したけど、ローキの目つきは怖いままだ。


私の方を見てはいるけど、私を通して別の人・・・ユリウスのことを見ているようだ。

ユリウスは実験と検証のために手紙をくれたのに、悪く言われてしまうのは申し訳ない。



「手紙は実験用なの!他に悪意はないよ!!ローキも知ってるでしょ?ユリウスは魔法オタク、大好きなだけで他意はないよ」


「オタク?なんだそれ。またティア語か?他意はない・・・ねぇ。どうだか」



ローキは睨むのをやめてくれたが、俯いてしまって表情が見えなくなってしまった。

っていうか、ティア語ってなに?



「で、なんて書いたんだ?今回の事」



「黒い靄を纏った人形が勝手に動くってことがあるのかってことと、私の護衛が襲撃を受けて、その襲撃犯を探してるって書いたの。襲撃された場所は平民たちが暮らす町の中、人の傷口から魔獣か獣人族の可能性があることはわかったけど、それ以上情報がなくて困ってるって」


「はぁぁぁぁ・・・・ギリギリだな。ディルタニア家としては恥ずかしい点をさらした」


「恥ずかしい点?」


「護衛が襲撃されたと他家に知られれば、家の弱さを教えているようなものだ。情報取集能力も戦闘能力も。事実だからお前を責められないが、その情報がディルタニア家に悪意を持つ人間に伝われば、どんな噂を流されるか分かったものじゃない」


「ユリウスはそんな人じゃないよ!」

「わかっている。だから恥ずかしい点をさらした、くらいの表現にしたんだよ。他の奴に伝えたのなら、そいつの行動を把握して必要に応じてもみ消しに動かなきゃいけないところだったんだぞ。わかってるのか?」


「さすがに私も家の事情を信用できない人に話したりしないよ」


でも・・・家同士の抗争みたいのあるんだよね・・・

子どもの私には見えないだけで、3大公爵の1つであるディルタニア家を追い落そうとしたり、没落を望む人はいるのだろうか。



そういえば、ディルタニア家とは言っていなかったけど、ランスから聞いた糸屋さんの店主は貴族が嫌いって言ってたけ。

万人に好かれることはなくとも、たくさんの人に悪意を持たれているとしら・・・すごくいやだ。



「まぁいい。グレイシャー家の知識は有効に使わせてもらうじゃねぇか。協力してもらえたら、の話だがな」

「大丈夫だよ!話を聞いてくれるって言ってたし」


「おい。さっきと話が変わってるぞ。相談を受けるって言ってたんじゃないのか?」

「詳細は授業の時に聞くって書いてあったから、相談に乗ってくれるってことでしょ?」


「・・・そうか。そうだった、お前の頭が花畑が広がってたな。話は聞くが、答えると言ったわけではないんだな」


おっとぉ・・・そういう事?


「もういい。俺を授業に同席させる判断力が残ってただけマシだ」


ローキは今度は遠い目をしている。


そ、そっか。

ユリウスのことだから、話を聞くだけじゃなくてちゃんとアドバイスをくれるだろうけど、こういう時の表現って大事だった。

小説やマンガなんかの貴族悪だくみあるあるだね。

言葉遊びみたいのでよく相手を罠にはめるシーンがある。

「そんなことは言っていない、俺は○○って言ったんだ」とかってやつ。


やっぱり私はこの世界での感覚をつかむまでは、話をする相手しっかり選ばなきゃダメそう。



「おい。もうすぐ時間だ。移動するぞ」


「そうだね・・・って、どうして抱えるの?」



「・・・・・そういう気分なんだよ」


「いやいや、2つ先の部屋だよ」


「・・・・・・・」


む、無視された!


さっき怒られた手前、降ろしてほしいと言えず、スタスタ歩くローキの腕に静かに抱えられたまま授業に向かうことになった。




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