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88.調査開始②

「アリステア様、今からお教えする順路を覚えておいてください」


「順路?」


「はい。アリステア様にこちらに来ていただいたのは、アリステア様の感じられたことを聞くため、そしてこれからお教えする順路をお伝えするためです」



タロスさんはそういうと、何もない石壁の方へ進み、中央付近の床から5つ目の石を押した。



も、もしや!!


ワクワクしながら石壁の変化を見逃さないように見つめた。



・・・

・・・・・・

・・・・・・?



「おい、何壁見てんだよ。こっちだ」



ローキに肩をトントンと叩かれて後ろを向くと、注視していた方とは反対側の壁がまるっと消えて、照明で明るく照らされた綺麗で大きな廊下が伸びていた。



「み、見逃した・・・」



せっかくの隠し部屋へつながる道と初対面だったのに、見逃すなんて・・・仕掛けがある側の壁が変化するのが定番じゃないの?!

しかも、何の音もしなかったのに壁一面が消えて、大きな廊下が現れるなんて・・・人がギリギリ通れるくらいの簡素な造りで、下へと続く暗い階段でもないし!



「なんだ?なんでそんな衝撃を受けた顔してんだよ。わりと普通の隠し通路だろ?何か変か?」


「私、はじめてなの。隠し通路」


「だから?」


「どんな風に現れるのか見たかったの・・・隠し通路って狭くて暗くて階段があるものなんじゃないの?」



「・・・・・・くくっ、あはは!お前どんな物語の影響を受けてんだ?そんな使いづらい隠し通路なんてあるかよ。大昔ならまだしも、公爵家の屋敷にそんなもんはねぇよ」



うぐっ・・・そうなのか。

こっそり壁と壁の間を縫うようにあるのが隠し通路だと思ってたのに。




「アリステア様、公爵家の屋敷にはありませんが、古い屋敷やダンジョンには狭くて暗い隠し通路もあります。近場で安全が確認ができた隠し通路を私がご案内します」


「だ、ダンジョン!連れ行ってくれるの?!シキ!!」


「もちろんです。貴女の望むものを探し、お連れしましょう」


「シキ!!大好き!!」


「っ!!」



ダンジョン!ダンジョン!!

魔法のある世界だからあるとは思ってたけどやっぱりあるんだね!!

1人じゃ無理だけど、戦闘訓練をした『影』のシキが連れて行ってくれるなら、安全にダンジョン体験ツアーみたいなのができるのかもしれない!


ダンジョンツアー付きのんびりぶらり旅なんて最高だよ!


しょげた私を心配してくれたのか、私の目の前にしゃがんいたシキの首に抱きついた。




「シキ!!てめぇ!そいつを離せ!!」


「・・・私から抱いたわけではない」


「じゃぁその手をどけろ!」


「なぜ、ローキお前の命令に従わないければならない。私の主はアリステア様だ。アリステア様が私に抱きついてこられたのだ。受け止めて抱き返すのがどおり。私はこのままアリステア様をお連れする」



シキは首に抱きついたままの私をそのまま抱えて立ち上がった。



「アリステア様、少し距離がありますので、このままお連れしてもよろしいですか?」

「そうなんだ。お願い、シキ」


「承知」



シキ、なんか嬉しそう。


シキは表情がローキにくらべてわかりにくいけど、満足そうな感じがするし、私を抱える腕からは大事にしてくれているのが伝わってくる。



「くっ、それは俺の役目だ!」


「別に決まっているわけではないだろ。それにお前は普段、アリステア様が移動するたびに抱えているだろ」



シキの言う通り、ローキは普段、屋敷内を移動しようとするたびに私を抱えようとした。


ローキも成長したので、おんぶではなく、私を腕に抱えることができるようになった。

短い移動の時は断っているけれど、もうすっかりローキに抱えられて移動するのが習慣化してしまっている。




「シキに抱っこしてもらうのははじめてだね。重くない?」


「まさか。軽すぎて抱えていないのではないかと心配になるほどです」



うむ。

シキは女心をわかっているみたいね。



「・・・アリステア様、隠し通路一度閉じて、もう一度開きましょうか?」


「・・・お気遣いありがとうございます。タロスさん・・・すみません、大丈夫です。このまま進みましょう」



タロスさんに変な気を使わせてしまった・・・隠し通路出現の観察は次の機会にします。





==============




「みんな揃ったわね。アリステアちゃん、急に驚いたわよね」


「お母さま・・・」



隠し通路の順路は難しいものではなかった。

まっすぐ一本道で、一番奥のT字になっている突き当りを右に進んで、再び突き当たったT字の壁正面の扉が目的地だった。



部屋は元居た部屋に似ていて、窓がなく、装飾もほとんどない簡素な部屋で、シンプルなつくりの机とソファがあるだけだったが、座っている人物たちのせいで部屋全体が

豪華な雰囲気になっている。


お父さま、お母さま、レオナ兄さま。

金銀のキラキラ人外美男美女、美少年・・・・


イデュール兄さまとサラ姉さまはいないけれど、十分眩しいメンツだ。

簡素な部屋とのギャップで神々しさが増すってすごいね。


壁に沿って立っているのはヒルデとクリーク、タータッシュさん。

後は見たことない人たちだ。

服装からして『影』の人たちなのだろう。忍者っぽい服装に見覚えのあるブローチが左胸にあった。


シキは私をソファのそばに降ろし、一緒に来た他の人達とともに壁際に並んで立った。




「さて、報告を聞こうか」



お父さまは私がソファに座るとタータッシュさんに向かって声をかけた。



「はい。ヒルデと共にターランナト店に向かいましたが・・・残念ながらルドリーには会えませんでした」


「どういうことだ?」



「ルドリーは当家の屋敷を出た後、店に戻る馬車を途中で下車し、贔屓にしている糸屋へ行き店に戻ったそうですが、店に着くと同時に魔素乱れが起きたそうなのです。見舞いとして居住場所に伺おうとしましたが、拒否されました・・・魔素乱れは、人によってかなり荒れた状態になる為、見せられないと。私とヒルデは店を出たあと、事前に把握していた居住場所に行ってみたのですが、布団をかぶっていて窓からは姿を確認することはできませんでした」



今までだったら・・・ルドリーの行動には何も問題ないし、むしろ魔素乱れを心配しただけだっただろう。

でも、存在を疑っている状態で今の話を聞くと、なんだか怪しい。


普段とは違う行動。

糸屋さんによって、帰ってきたら人を寄せ付けないように引きこもったってことだよね?



「居住場所は店員のみが住む共同住宅。侵入するには準備が必要なので、一旦引き、糸屋への行き事実確認をしました。糸屋の話では、以前にルドリーと親しくなり、特別な糸が手に入ったら連絡をすると約束をしていたそうです。昨日その糸が入荷したので連絡し、今日取りに来たと。会話の内容や行動には不審な点はなかったようです。その特別な糸はすべてルドリーが購入したそうで、手に入りませんでしたが、金色で魔法付与が可能な鉱物を織り交ぜた糸だそうです」



「金色・・・アリステア用と考えるのが自然か」


「現在、ターランナト店、ルドリーの部屋、糸屋を情報部隊に交代で見張らせています」



「ふむ・・・怪しいが、決定的な確認はできず、か」



一番確認したかった、スーア族との関連。

ローキの話では魔法で異常は感知できないから、直接見るしかない。


布団をかぶるって簡単な行動だけど、ルドリーは状況を色々分かったうえで行動してるってことだよね。

孤児で、今まで不審な行動も、特別な訓練を受けていない人が突然そんなこと考えて行動できるのものかな・・・


ルドリーの可愛くてきれいな笑顔・・・あれは偽物?




「アリステア・・・」

「レオナ兄さま?」


聞いた情報を頭で整理していて俯いていたせいだろう。

レオナ兄さまが心配そうに私に呼びかけた。



「きっと、ルドリーは危ない人じゃないよ」

「ありがとうございます。レオナ兄さま」



「レオナ、なぜそのように思う?」

「お父さま、だって、ルドリーとアリステアは恋仲なんだよ!!」



んんっ・・・レオナ兄さまの中でなんか私とルドリーの関係が進展してないか?



「そうか・・・ならば、もう気にかける必要はないな」



え、そんなことで警戒を解くとか・・・



「消そう」


「俺にやらせてください。すぐに、きれいに消してみせます」

「いえ、私にやらせて下さい。『影』は掃除が得意ですので」


「ローキ、シキ・・・そうだな・・・本当は私が直接消したいが・・・まぁいいだろう」



もしや、全部すっ飛ばして暗殺の話・・・してます?




「もう、あなた、ダメですよ。ちゃんと確認してください」



「レオナ、あなたは勘違いしています。アリステアちゃんとルドリーは恋仲ではないのよ」

「でも、お母さま。ルドリーはあんな素敵な刺繍をしたものをアリステアに渡したのですよ?絶対で好きです。アリステアも嬉しそうに受け取っていたし・・・」



「レオナ、あなたはもう少し恋というものに対してお勉強が必要ね」

「でも・・・」



「レオナ兄さま。私のことを心配してくださってありがとうございます。でも、ルドリーと私は恋仲ではありませんよ。私からルドリーに何も渡したことはありません。レオナ兄さまはレティシア様と色んなものを交換して気持ちを確かめ合っているのでしょ?」


「そうなの?」


「ええ。好意は嬉しいので受け取りますが、私が好意を返すかは・・・別の話なのです」



「そっか・・・それなら、落ち込んでないんだね?」


レオナ兄さまは・・・とても優しいのね。きっと、私より。



「落ち込んでは・・・います。好意はないですが、何度も会っているので親しくは思っていたので・・・」


恋の勘違いは困ったものだけど、優しさからくる言動だと思うと強くも言えない。




「・・・しかたない、消すのは止めて調査継続だ。決定的な情報を得られないうちにこちらからの接触は避けるとしよう。もしすべての行動が計算されたものだとしたら、そのルドリーという子ども1人で出来る事ではないだろう。もしかすると、操られているだけ・・・という可能性もまだある。慎重に行動してくれ・・・しかし、このような事が我が屋敷で起こるとはな・・・この部屋を使うことになるのも何十年ぶりか」


「申し訳ございません、旦那様」



「いや、ステラが気づけないほどの特殊な力が関係しているのだろう」


「旦那様、その特殊な力、他国の可能性も視野に入れた方が良さそうです」


「タロス・・・そちらでもそういう話になったか。そうだな・・・違って欲しいものだが、情報屋にも状況を共有し、改めて情報を整理して報告をせよ」



「はっ」




この部屋を使うことになるのも何十年ぶり?


この部屋ってやっぱり秘密の会議室みたいなものなんだね。

レオナ兄さまが呼ばれたのも、きっと私と同じくこの部屋の場所を教える為なのかもしれない。


何十年ぶりってことは、物騒なことが久しぶりなことを喜ぶべきなんだろうか・・・



いったいルドリーって何者なんだろう。

もし、操られているのだとしたら・・・なんとか開放してあげる方法があるといいけど。


ブクマ&いいね&評価ありがとうございます!

誤字報告下さった皆様、いつもありがとうございます。


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