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87.調査開始①


「アリステア様をお連れしました」



シキの案内で、入った部屋は来たことない部屋だった。


机とソファがあるだけの窓もない簡素な部屋だった。



この屋敷・・・一体どれだけ部屋があるんだろう。

隠し部屋とか、隠し通路は絶対あるはずだから、いつか探してみたい。


本棚の本を動かしたら、本棚が動いて通路が出てきたりとかしてほしい。



部屋に入るとタロスさん、ミルー、シルル、そしてスタンがいた。


おや?タータッシュさんはいないのね。




「お嬢、用事は済んだんですね」


スタンはいつもの明るい爽やか笑顔で迎えてくれたけれど、他の皆の顔は暗く感じるほど真剣な表情だった。


そういえば・・・スタンはローキの先生になったはずだけど、ローキと毎日一緒にいてそんな姿を1度も見ていない。



「スタン・・・久しぶりね」


「久しぶり?あぁ!そうですね。直接会うのは久しぶりになりますか」


「直接会うのは?」



「お前は気が付いてなかっただろうが、スタンさんはほぼ毎日日中は俺たちのそばに居たぞ?ちなみにルドリー達が来ていた時もいた」


「えぇ?!ローキ、そ、そうなの?」



てっきり先生役面倒だからってサボっているんだと思ってた。



「うーん・・・なんかすごく不名誉な誤解を受けていたような感じがするけど、まぁそれだけ俺の隠密がすごいって証拠だよね。ルドリーにも気づかれてないし」


「・・・気づかれてしまい、すみません」


「今回は仕方ないよ、シキ。まぁ、今後の課題だね」


「驚いて気配揺らいでたら隠密の意味ねーけどな」


「くっ・・・」


「だめだよ、ローキ。そういう発言は慎むように言ったよね」


「はーい」




スタン、ちゃんと先生してるんだね。

サボってるって思ってごめん。



「お前達、話を始めるぞ。アリステア様、お時間をいただき申し訳ございません」


「タロスさん、お忙しいのにすみません」


「いえ、本来はこのようなことが起きる前に我々だけで防げればよかったのですが・・・起きてしまったからには速やかに対応いたします。確認のため、ご協力のほど、よろしくお願いいたします」


「もちろんよ!あ、でも、私だけじゃなてお母さまとヒルデの話も聞いた方がいいんじゃない?」



「ヒルデとタータッシュはルドリーのいる店に向かっています。何か対応される前にローキの行動の謝罪という建前で確認に向かいました。奥様は旦那様へ報告と確認をされています。我々もここで話をうかがった後に奥様と旦那様のもとへ向かいます」




なるほど。

ここはあくまで情報収集だけの中間地点ってことね。


私がソファに座ると、タロスさんが現状わかっていることを説明してくれた。




「ターランナト店の店員、男、ルドリー、11歳。色は薄い銀髪、紫の瞳。魔素レベルは5級。属性は闇。王家が管理する孤児院の前に捨てられ、孤児として育てられましたが、手先が器用で服飾に関心が強く、容姿が良いことから、ターランナト店店長が6歳の時に引き取り、店が所有する共同住宅にて生活・・・これがルドリーという人物が屋敷に入る前に入手していた情報です。孤児院での生活記録も確認していますが、特段目立った訓練を受けた記録はありません」


「タロスさん、孤児院に潜入している情報屋にも確認しましたが、隠れて特殊訓練をしていることもないとのことです。孤児院の運用自体も問題なく、お金の流れもきれいなもので、記録を改ざんされた形跡もありません。孤児院長が時々こっそり自分のためにお酒を購入していますが、賄賂で受け取ったわけでもないため、関係するとは考えにくいとのことでした」


「ありがとう、ミルー」


おぉ・・・情報屋さん!

孤児院にも潜入しているんだ!っていうか、本当に潜入調査とかしてるんだ。

孤児院長のこっそり楽しむお酒まで把握してるとか・・・優秀ですね。



「店には客として定期的に情報収集をしていましたが、そちらでも特に気になる情報はなかったようです。丁寧な接客姿勢、技術も知識も高く、見た目も良いので、お客からはよく接客の指名を受けてはいたようですが、誰かに加担しているような行動も、お金を受け取っていこともないとのことです。試しに買収を試みましたが、丁寧に断られたとのことです」



・・・『前の世界』の覆面調査って感じだね。

買収しようとするのはやりすぎだけど。



「アリステア様、ここまでで何か気になることはありますか?」

「いいえ。続けてください」


「では、アリステア様。念のための確認ですが、アリステア様にはルドリーという人物はどう見えましたか?」


「・・・普通のきれいな男の子に見えました」



「・・・ありがとうございます・・・事前調査では問題はなかった。しかし、今回ローキとシキにはルドリーの姿が人間の男には見えず、黒い靄、黒い靄を纏った人形に見えた。そして、不気味と感じた。同じ場にスタンもいたが、スタンには人間の男に見えた。ヒルデに事情を伝えた時に確認したが、ヒルデと奥様にも人間の男に見えて、前回会った時と違いは感じなかったそうだ・・・つまり、これまでルドリーと会い、黒い靄、黒い靄を纏った人形に見え不気味と感じたのは2人だけだ。見えた2人と他の者との違いは・・・スーア族であるかいなか」


「まぁ、そうなるよな。こいつのとの共通点なんてそれしかねぇ」



「まだ、断定はできませんが、店に向かったヒルデとスーア族であるタータッシュの結果で判断できるでしょう。もし、スーア族が鍵となるなら・・・対応は慎重に進めなければなりません」


「スーア族が鍵って・・・スーア族が伝説的な超人の一族だからってことですか?」


「・・・・・・」




「俺らの知らねぇ何かがあるのか?スーア族の血に」



「確証を得たら話そう」




・・・なんかあるんだ。


ローキとシキも知らないなんて、絶対危ない内容だよね・・・スーア族は表では滅ぼされた一族なんだから、知ったら確実に命狙われるレベルの内容な気がする。


と、なると、ルドリーの正体?も命に係わる案件ってことで・・・身近に命の危険ありすぎでしょ!




「今は事実確認だ。アリステア様、ルドリーについてどんな些細なことでも構いません。なにか気になることはありませんでしたか?」


「気になった事・・・」



正直、美少女と思えるくらいの美貌と、意外と力持ちで接客上手くらいしか印象ない。


成長期でも身長が伸びてない・・・のは13歳まではどうなるか分からないからこの世界では普通だよね。

依頼した服以外にきれいなひざ掛けと肩掛けをもらったけど、誰も何も言われなかったから、きっと普通のことだよね。


あとは・・・



「蝶のデザイン・・・」


「蝶?」


「今日もらった肩掛けのデザインが蝶なんですけど、私が蝶のデザインが好きだって知っていたみたいなんです」


「・・・それは、『蝶が好きだ』と言ったことがなかったのにっということでしょうか?」



「はい。なんでって聞いたら秘密と言われました」


「蝶が好きだと誰かに伝えたことは?」


「たぶん・・・サフィールさまとレティシアさまが屋敷に来た時です。レオナ兄さまとの定期的に会う時と、誕生祝いをくださった時だと思います」



光の精霊であるシフォニーの存在を伝えて良いことか判断ができなかったので、詳細は話せないけれど、蝶が好きだと分かる言動をしたのはその時だけだと思う。

色んなものを作ってくれているランスでさえ、私が蝶が好きだと知らないはずだ。



「あの時話してたのはそのことか・・・見た目だけじゃなくて中身も真っ黒だな」



「今までもそのようなことが?」

「いいえ。今日だけ」



「ローキとシキの反応を見て、今までと対応を変えたのか・・・もしくは警告」



「け、警告?」



「・・・見ているぞってことか?」

「そうだ」


「ちっ、なめられたもんだぜ。これからは俺がそばにいる。もうそんなことはできねぇよ」



「ローキが着任する前の情報か・・・その場にいたルーリーとリナからは不審な報告はなかった。つまりそう簡単な相手ではないということだ。ローキ、お前でも尻尾を掴めるとは限らない。慎重な行動が求められる」




「シキ、お前のはルドリーをどう見た?」


「顔も何もついてねぇ、木でできた人形が黒い靄を纏って勝手に動いている感じで不気味だった。話してみれば、声は確かに顔のねぇ木の頭から聞こえてきた。魔素の気配は生き物である限り、多少なりあるし、魔法の気配は・・・しなかった。だからこそ不気味だった。目で見えるのものと、感覚から読み取れる感じと差がありすぎた」



「ふむ・・・聞いたことがないな。魔法を使わず、人形を動かす方法か」

「他国の力、という可能性もありませんか?機械工学のストル国、魔法でも私達とは違う形式で使用するエルフとドワーフのファクタ国」


「・・・可能性がないとは、言えないな」




え、えぇ・・・国内問題じゃなくて国際問題レベルかもしれないの?!

話が大きくなり過ぎじゃない?


第一、目的が分からない。


私がルドリーと接触したのはつい最近なんだから、私が目的とは考えにくいよね・・・

でも国際問題ってことなら、公爵家をはじめ、いろんな貴族があの店を利用していたから、情報収集には調度いいのか・・・


「あ」


「どうしました?」



「ルドリーは他の貴族の接客もしていますよね。たしか、トゥルクエル家のリリアンさまと一緒にいるのを見たことがあります」


「なるほど・・・蝶のデザインが好みであることはトゥルクエル家経由で漏れた可能性もあるわけですか。あの家であれば、多少情報共有は可能でしょうから、そちらの線でも調査してみます」




「で、その調査、具体的にどうするんだ?」


「ひとまず、ローキとシキはアリステア様から離れるな。ヒルデとタータッシュが戻ってから詳しくは決めるが、調査以上に護衛の難易度が高いかもしれない。相手の目的も方法も未知数だ。相手がルドリーだけではない可能性もある。魔法の感覚だけでなく、全神経の感覚を研ぎ澄ませ。国外の力の可能性があるとしたら・・・1人で対応できるという過信は絶対にするな」


「ちっ、わかってるよ」

「はい」



「調査自体はローキとシキ以外で行う。スタンは2人のサポートをしつつ、調査の方も頼む」


「あはは・・・ですよね~。いいですよ、お嬢の危機・・・いやディルタニア家に喧嘩売られて、俺も穏やかじゃいられないしね」



喧嘩売られたって・・・

不気味な人形がディルタニア家の敷地内に入ってきただけで、特になにか被害が出たわけじゃないんだけど・・・いや、問題か。




「・・・他国の人々が国内に入ってくるアルティミア祭の前には何とかしなくてはな」




――――コンコン



「ヒルデさんとタータッシュさんがお戻りになりました」


「・・・行こうか」




この世界・・・どうなっちゃってるんだろ。

戦争は100年もないし、過去は色々あったみたいだけど、ホワイトな世界だと思ってたけど・・・もしかしてちがうの?



ブクマ&いいね&評価ありがとうございます!

誤字報告下さった皆様、いつもありがとうございます。


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