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86.それぞれの思惑➂

「これ・・・何だろう・・・指輪?」



封筒の中には、3つの指輪と短い手紙が入っていた。




夜、みんなが寝静まったころ。

いつも通り人に見つからないよう、書庫からこっそり持ち出した魔法の歴史書を部屋で読んでいると、突然手紙が目の前に現れた。


思わず声が出そうになったけれど、手紙の封蠟が目に入り、なんとか声を飲み込んだ。



「カラスの封蠟・・・ユリウス様から?」



突然現れた手紙の封蠟は、見覚えのあるカラスのデザイン。



「やっぱり魔法なんだ・・・」



前回の手紙は、机の上にあったので、出現の瞬間をみたのは今回が初めてだ。

今回もやはり、差出人も宛名も封筒には書かれていない。



恐る恐る封を開けたが、特に魔法が発動する様子はなかった。



封筒の中を覗くと、金色、銀色、黒色の金属でできたシンプルの指輪3つ見えた。


机の上に出して、1つ1つ小さな照明にあててじっくり見てみる。



表面はどれもつるりとしていて、彫刻も魔法石もない。

しかし、指輪の内側にはとても小さな魔法石が1つと、びっしりと呪文の刻印が刻まれていた。



刻印が呪文になっていて、複数の魔法が組み込まれているのは分かるけれど、何の魔法なのか検討もつかなかった。



「確か・・・呪文を刻印して魔法を組み込むと、複雑で強い力を維持できるって本に書いてあった気がする・・・」



だとすると、この指輪はかなり強力な魔法が組み込まれているに違いない。

安易に指輪をはめたら何が起こるか分からない。


使い方が書かれた紙が入っていないかと封筒をもう一度確認すると、封筒に張り付くように1枚紙が入っていたのをみつけた。




『テオドール

最近気になったことと、使った感想を教えろ  ユリウス 』




期待した使用方法は一切書かれていないが、ユリウス様の流れるようなきれいな文字で書かれていた自分宛の手紙は嬉しかった。



「使った感想って言うのは、この指輪のことだよね・・・でも、最近気になったことって何だろう・・・」




ユリウス様が僕の現状をどこまで把握しているのかわからないけれど、僕の世界はとても狭い。

家族から日常的に暴力を振るわれ、使用人からはいないものとして扱われている。


屋敷内を自由に歩けず、夜にこっそり行動する僕に気になることもなにも、新しい情報と触れる機会がそもそもないのだ。



毎日、息をひそめて生きるので精いっぱい。



ユリウス様は、きっと僕から何らかの情報を得られると思ってくれたのだろう。

でも僕はその期待に応えられない。



自分の存在が嫌になる。

イーディス姉上殴られても、母上に暴言を浴び去られても、もう心は何も感じないけれど、ユリウス様の期待に応えられないのは苦しい。



それに、もし何かを知っていても、ユリウス様に連絡する方法が僕にはない。

前回もそうだが、僕に手紙を書く自由はない。


返事を書きたかったが、手紙を書いたとしても、送ることは許されていない。

書いたとしても怪しまれていしまい、内容を読まれてしまうし、送られずに燃やされるだろう。


僕のものだったものが暖炉の火で燃えていくのは、よくあることだ。



「せめて指輪を使った結果を伝える方法があればいいけど、どうしたら・・・」




――――――バサッ




ハッとして音のした方を見ると、机の上に紙の束と封筒、封蠟のセットが現れていた。



現れたそれらの上に、また手紙があった。

封蠟はカラス。



封筒を開けると、また紙が1枚。



『テオドール 使え  ユリウス 』



これは手紙というよりもメモなのではないだろうか。


封筒には差出人の名前も宛名もないが、中の手紙には書かれている。

中の手紙に差出人の名前も宛名を書くことで、宛先を指定する魔法が組まれているのかもしれない。


封蠟セットには印章が付いていた。

デザインは、バラを咥えた小鳥。


グレイシャー家の家紋は狼。

ユリウス様の印章のデザインはカラスで、どうして僕のデザインはバラを咥えた小鳥なんだろう?



「これ、僕使っていいんだよね?」



デザインの理由はよくわからないけれど、印章のデザインは1つのデザインで1人を示す。

つまり、これは僕のものだ。



「嬉しいな・・・」



『使え』ってことは、これで連絡はできるってことだよね。



本当に使えるのかな・・・


僕はドキドキしながら、隠しておいたペンとインクで手紙を書いてみた。



『ユリウス様 手紙ありがとうございます。無事に届いていますか? テオドール』



ちゃんと届くか試すために書いて、封筒に入れて封蠟を押す。

ユリウス様の手紙の書き方して、長文は好まないと思ったので簡潔に書いてみた。


・・・・・・

・・・・・・


・・・・・・何も起きない?




ドキドキしながら机の上に置いて様子を伺っていたけどもの、消えることもなく、封をされた封筒は静かに机の上に置かれたまま。



どうしよう・・・何か別の発動条件があるのかな・・・


封筒を手に取って、自分のデザインの封蠟を指で撫でると、自分の中にある魔素が指先から封蠟に流れた気がした。


「え・・・わわっ!!・・・・消えた?」



手に持っていた手紙が消えた。


「封蠟に魔素を流す必要があったんだ」



――――パサッ



「えっ」


目の前にカラスの封蠟の封筒が現れた。




『テオドール 届いた  ユリウス 』



「すごい・・・本当に届けることができた・・・ユリウス様と連絡ができるようになったんだ、僕」



喜びで手が震えた。

最後に会話したのは、アリステア様の誕生を祝うパーティーだ。

というか、人とやりとりしたのもそれ以来かもしれない。




この方法で指輪の使用結果を伝えることはできる。


どうなるか分からないけれど、指輪を使ってみよう・・・




まず、金色の指輪を手に取った。

魔法が組み込まれた指輪を使うのは怖いけど、3色の指輪なら、アリステア様を連想する金色の指輪でどうにかなってしまうなら構わない気がした。



左手の中指に金色の指輪をはめた。

指輪は僕の指に大きかったけれど、指を通した瞬間に僕の指のサイズに合うように縮んだ。



・・・・・・

・・・・・・・・



あれ?

特になにも変化は感じない。


指輪は光もしないし、爆発もしない。



「うーん・・・痛くもないし・・・・えっ」



自分の状態を確認するために手鏡で自分の顔を見て驚いた。


イーディス姉上に殴られた後、自分の傷の状態を鏡で確認する癖があったので、自然と鏡に手がのびたのだが、そこに映っていたのは僕じゃなかった。



「薄い黄色の髪に茶色の瞳・・・顔もなんかちがう」


自分の色が変わっていることも不思議だったが、顔も違っていた。

見たこともない顔。


印象に残りづらい作りで、なんとも表現しにくい感じだ。


ペタペタと自分の顔を触ってみたが、感触はあるけれど違和感しかない。



「すごいな・・・変装の魔法ってことなかな?」



期待をして椅子を降りてみたが、身長が伸びたわけではなさそうだ。



服装も変化はない。

顔と色が変化するってことかな。




指輪を外そうとすると引っ張ると、指輪はもとの大きさに戻り、するりと指から抜けた。

体感としてはなにも変化は感じなかったが、手鏡で確認すると、元の顔に戻っていた。




他も同じ感じかな?


机の上に置いてある銀色の指輪を手に取って指にはめてみる。


やはり何も起きていない感じはしないが、手鏡を見て驚いた。



「じゅ、獣人族?!」



手鏡に映った顔には、グレーの髪に薄い黄色の瞳、そして獣耳が生えていた。


獣耳も銀色の毛で覆われている。

引っ張ってみたが、確かに痛みがある。


元の耳があった位置を触ってみたが、そこには髪の毛が生えているだけでなにもなかった。


もしかして・・・


「うわ・・・本当にあった・・・しっぽ」


ズボンがズレて、お尻からふさふさのしっぽが生えていた。

しっぽが見えて驚いた感情に連動して、しっぽがピンと立った。


触ってみると、フワフワして柔らかく、触られた感触も触った感触もあった。



「すごい・・・獣人になれるなんて・・・」


獣人と直接会ったことはないけれど、2種類のタイプがいると本で読んだ。

人型に近い存在と、獣の姿に近いタイプ。


この姿は人型タイプの獣人のイメージなのだろう。


獣人は人より嗅覚や聴覚、視力が良いはずだけど、特別変化はなかった。

やはり見た目が変化するだけで、能力が変化するわけではないようだ。



銀の指輪も簡単に外すことができた。

外すと同時に耳もしっぽもなくなり、元の顔に戻る。



黒の指輪は何に変化できるのだろう・・・ワクワクしながら指輪をはめ、手鏡を確認して驚いた。



「ゆ、ユリウス様?の子ども?」



鏡に映っていたのは、ユリウス様と同じサラサラストレートの紺色の髪に、グレーと銀が混ざった色の瞳。

顔もどことなくユリウス様に似ている気がする。



親戚で血がつながってはいるものの、元の顔の造りはユリウス様とは全く異なる。


なんだか、ユリウス様と本当の親族に慣れたようで嬉しいなぁ。




ユリウス様はこんなすごいものを作れるんだ・・・ぼくもいつか・・・




指輪を外し、机の上に3つの指輪を並べて、手紙にそれぞれの指輪を使った結果を書いた。


ちなみに、2つの指輪を同時にはめてみたけれど、魔法は発動しなかった。



「問題は・・・最近気になったことだけど・・・何もないって書いていいのかな?」




あ、そうだ。



イーディス姉上が腹いせで僕に本を投げてきた時に、言っていたことを思いだした。


「フォーム子爵がなぜか貴族の権利を失って、イーディス姉上の好みだったミンスさまが教会に入った事と・・・最近のお気に入りはキルネル国の王子っと・・・」



こんなことでいいのかな・・・

何もないって書くよりいいかなっておもったけど、貴族社会の事だから、正直ユリウス様にも情報が入っているかもしれない。


情報はの良し悪しは僕に判断ができないから、きっとユリウス様が判断してくれるよね・・・



ドキドキしながら封筒入れて、封緘し、固まった封蠟に触れると自然と魔素が流れて手紙が消えた。




手紙がユリウス様の役に立ちますように・・・



翌朝目覚めると、ユリウス様から分厚い手紙が届いていた。


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誤字報告下さった皆様、いつもありがとうございます。


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