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81.授業と紹介➂

今日の予定は午前中にローキと影の皆で話し合い。


午後はルドリーのお店の人達が来て、アルティミア祭用のドレスを注文。

ランスにも来てもらって、色々依頼。


今日はちょっと予定を詰め込んでしまっているが、アルティミア祭まで時間がないので致し方あるまい。



「アリステア様、朝食を食べながら考え事はやめてください」

「んー・・・」


「次動きを止めたら私が口に直接入れてさしあげますね」

「うぐっ、ルーリー、ごめんなさい。自分で食べます」





===================




「皆、集まってくれてありがとう」



天気が良ければ庭でお茶でもしながら・・・と思ったけれど、雨期らしくしっかり雨が降っているので私の応接室に集まってもらった。



ローキには毎日会っているけど、他の『影』のメンバーには久しぶりに会えた。

本当はローテーションで私の護衛をしてくれているらしいのだけど、一度も姿を見たことがない。

というか、声をかけられないでいた。


ローキ曰く、『影』は姿を見せずに守るのが役目だから、緊急時以外は『影』に声をかけてはいけないという。

『影』のみんなは修行は習得済ではあるけれど、実地訓練中で気づかれないように注意を払っているらしい。

私にさっぱりわからないけれど、時々粗が見えるらしく、ローキが私のそばで『影』達の動向をチェックしているんだそうだ。


私としては、もっと仲良くなるチャンスがあると思っていたけれど、訓練の邪魔をするわけにもいかないので今日まで我慢していた。




「シキ、ミル―、シルル、久しぶりにお話できるて嬉しいわ。新しい生活はどう?大変なことはない?」



「大変なことはございません。訓練では新しい発見が毎日あって、とても充実しています」

「新しい部屋や、訓練場も環境が揃っていて不便は感じません」


「そう、それは良かったわ」


今日も『影』のみんなは忍者衣装に左胸には『影』の証のブローチ。

表情は堅めだけれど、1対1の会話の時より柔らかいような気がする。



「ミル―とシルルは問題なさそうだけど・・・シキは何か気がかりが?」


答えずに俯いていたシキが心配になって話を振ってみた。



「生活や訓練には全くもんだいございませんが・・・少々気になる点がございます」


「言ってみて」



ま、まさか訓練中にもうなにか危なげな情報を掴んだりしたのだろうか。

ここ100年は戦争はないと言っていたけれど、貴族が毒対策を欠かさない程度には危機意識を持っているわけだし・・・

ちょっと身構えて続きを促す。




「・・・アリステア様とローキの距離が近いように思います」



「ん?」



「専属護衛というのは分かっていますが、専属護衛はあくまで護衛です。血の契約をしている関係だったとしても近すぎます。護衛ならば部屋の扉の前や外で立っていれば良いのです。しかしローキはアリステア様の部屋を自由に動き回り、授業に同席、アリステア様の休憩の際も席についてお茶を飲んだり。口調も砕けすぎです・・・役目の範疇を超えた言動をとりすぎです」



ルーリーとリナに言われるかもしれないと思っていたけど、まさかシキに指摘されるとは・・・


口調は・・・ローキとの出会いが出会いだからなぁ・・・

ローキに今更口調を変えられては私が嫌だし。


「口調については・・・大目に見てもらえるかしら。公式の場ではちゃんとしてくれるみたいだし・・・むしろシキにももっと口調を砕けて欲しいわ」


「2人っきりの時は・・・善処いたします」

「そう、楽しみにしているわ」


「・・・2人きりになんかさせるか」



いやいや、ローキさん。

そんな不貞腐れた顔しないでくださいよ。

シキの意見を逸らそうとしている私の努力をつぶさないでくれるかな・・・


あーあ、せっかくシキが私の話にのったのに、ローキの一言でにらみ合いになってしまった。


成長したローキはシキとの身長差はほとんどなくなり、体格は多少シキの方が筋肉がついているが、それもきっとすぐに差がなくなるだろう。

いい大人が何をにらみ合っているのか・・・と言いたくなるが、中身が15歳と13歳だと考えると仕方がないような気もする。



しかし・・・ルーリーとリナは何も言っていなかったから、ローキの行動は専属護衛として許容範囲のものだと思い込んでいた。




「えっと・・・ミル―、シルルはローキの行動をどう思ってる?」


「そうですね・・・確かに距離は近い様に感じます」

「でも、範疇を超えた・・・とまでは感じませんでした。アリステア様とお茶をご一緒したり、たくさんお話されていたのは良いなと思いました」



ローキは当然と言う顔をして、シキは不機嫌そうな顔になってしまった。


うーん・・・・ローキを注意するほどではない気がするけど、シキは納得してないんだよね・・・シルルもうらやましいって思ってるみたいだし、何か対策を取った方がいいよね・・・



「ではこれからは『影』の皆ともお茶をしましょう!」


「なんでそうなるんだよ!!」



「なんでって、シキはローキの距離感が近いと感じているわけでしょ?シルルもお茶や話がしたいって言ってるわけだし。私の休憩時間はルーリーとリナがそばにいるから護衛の心配も少ないわけだし、『影』の皆だって休憩欲しいでしょ。機会を減らすのではなくて、増やす方向がいい気がするの」


「それこそ『影』の範疇外だ!」


「範疇外って言うけど、それってやっちゃいけないルールでもあるの?」

「っ・・・」


「アリステア様、ルールはありません。皆に機会があるのなら私は構いません」

「私は嬉しいです」

「私も嬉しいです」


「ほら、ね。ローキもいいでしょ?」


「・・・明確なルールはないが、『影』の役割に支障がでる」

「どういう意味?」



「『影』の役目は・・・時に非情な決断や行動が求められる。それは主側も同じだ。お前は『影』達に命をかける命令ができるか?」

「できないよ」



「即答かよ・・・それじゃダメなんだ。今でもできないのに、仲を深めすぎればもっと難しくなる。一定の距離感は必要だ」



・・・それ、ローキが言う?

正直、ローキとの距離感って何って感じなんだけど。



「・・・なんだよ」


「いえ・・・というか、仲を深めすぎるも何も、今もこれから先も命をかける命令なんてしないですから。そんなことが起きる前にその芽を摘んでくれることを期待しています。もし危険なことが避けがたいのであれば、全力で皆で逃げきります」



「逃げ道がなければ?」

「作ってくれるでしょ?みんなが」


「・・・なんで言い切れる」

「信じてるから。それに、私は危ない命令をするより、逃げ道をつくることに全力をつくしてほしいの」



「ちっ・・・」


根拠はない。

けれど、みんなを信じるしかないし、信じたい。


その思いが伝わったのか、ローキもそれ以上は追求してこない。



それに、これだけははっきり言える。

危ないことには近寄りたくない!


私自身だけじゃなくて、家族もウチに仕えるみんなも。

戦いは戦いが始まる前に決着をつけるものだと思ってる。


危険なことが発生した時点で負けを認めて逃げられるだけ逃げる方を取りたい。


もし、どうにもならなくなったら戦うのかもしれないけど、それを命令することはしたくない。



「ローキ、アリステア様のご意見が我々のすべてだ。それにいただいている信頼に応えたい。アリステア様の耳に届く前に危険はすべて未然に防いでみせます」

「情報を掌握し、操作せよということですね。ご命令承りました」

「調べることは得意なので、お任せください」



ローキ以外の3人の何にヒットしたのかわからないが、3人ともなぜか目がキラキラしている。


・・・謎の反応だけど、不満が解消されたならよかった。




「ミル―の言う情報の掌握じゃないけど、気になることがあったら教えて欲しいの」

「どのような情報がお望みですか?」



「ふふっ・・・もちろん旅行情報よ!!」


「以前、お話されていた件ですね」

「旅行?シキに何を話したんだ」



シキは涼しい顔をしているが、ローキはシキの顔をにらんでいる。



「アリステア様の旅に同行させていたく件です。いずれ私はアリステア様と共に旅に出るのです」


「はぁ?!何を言ってるんだよ。こいつが行くところは俺も行くに決まってるだろ!」

「だが、旅の話は今初めてきいたのではないか?」


「それは俺が同行するのは当たり前だからだろ」

「さてどうかな」

「てめぇ・・・」



おぉっと・・・シキって表情変えずにローキのこと煽るのね。

ローキが前にシキが突っかかってくるって言ってたけど、ローキの癇に障るようなことに言ったりしているのかもしれない。



「えっと・・・まぁ、まだ先の話だけど、私色んなところに行ってみたいの。のんびり、ゆっくり世界を見てみたい。だからいつか行く旅行に役立つ情報が欲しいと思っています。どんな文化や風習、食べ物、美しい景色・・・そんな情報がほしいの!」


「世界中・・・となれば、確かに情報収集には時間がかかりますね・・・」

「1つの国の調査でも年単位でかかるかもしれませんよ、シキ」


「旅行はご家族でではなく、アリステア様個人でということでしょうか」

「そうよ、シルル」


「となれば出発ははやくて成人以降・・・9年後には情報が揃っている方が良いでしょう1か国1年で9か国しか回れません」

「ミル―、実際に行けるのは国交があるのは7か国じゃない?」

「ミル―、シルル、7か国それぞれをどう調査するか後日検討しよう」


「シキ、タータッシュさんやタロスさんにも話をして、実地調査に組み込んでもらいましょう」

「そうだな」



・・・・・・あっという間に話の方向性が決まった・・・そして何やら大事になってしまった。

私としては、実地訓練のついでに見聞きした話を教えて欲しいなぁくらいの気持ちだったのだけど・・・まぁ、いいか。

何事も目標が具体的で楽しい方がいいよね。



ローキがものすごい顔でこちらをにらんでいるけれど・・・旅のこと言ってなかったから怒ってるよね、これ。

うーん・・・今度まとめて話そうと思ってたけど、待ってくれるかなぁ。

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