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79.授業と紹介①

「はじめまして、ルーファ・ダナテと申します。アリステアお嬢様の授業統括を担っております」


「ローキと申します。アリステア様の専属護衛となりました。以後お見知りおきを・・・ディルタニア家の司書様」




「・・・アリステアお嬢様にとって互いに重要な任についているので、ルーファとお呼びください」


「いえ、ディルタニア家に仕えているダナテ家の方と、アリステア様の専属護衛である私では全くとこなる任ですのでダナテ様と呼ばせていただきます」



「皆、ルーファと呼んでくださいっているのでローキさんも是非気軽に呼んでください。多くの知識を持つスーア族の方が、私の名で和を乱すようなことはなさらないですよね」


「・・・そうですね。ダナテ様では、各方面に気を使ってしまいますね。では、ルーファ様と呼ばせていただきます。公式の場以外では」




・・・・・・・・なんか、怖いんですけど。




久しぶりの『基礎文字と言語』の授業の準備をしているとローキがやってきて、授業に同席すると言った。

理由を聞くと、「講師達と直接会って把握しておきたい」からと言っていたけれど・・・自己紹介だけで火花が見えるみたいなやりとりをしている。



もちろんルーファもローキも笑顔だし、口調は穏やかだけど・・・仲が良くは見えない。


ローキは皆に突っかかりがちなのは分かるけど、優しい紳士的なルーファが応戦的な姿勢を取っているのが不思議だった。



「えっと・・・ローキ?ルーファは私のペースに合わせてとても優しくて教える良い講師なのよ」

「優しく・・・ですか。それは心配ですね」


ルーファの態度の原因が分からないので、とりあえずローキをおさえることを試みてみたけれど・・・無理かも。

優しくしてくれるのに、それが何で心配になるのか意味が分からない。



「ルーファ様は『基礎文字と言語』、『算術』、『歴史』の講師、さらに統括まで・・・司書のお仕事もあるのですから、他の方にもっとお任せしたらいかがでしょう」


「ふふっ、お気遣いいただきありがとうございます。これまで問題なく勤めております。むしろもっとアリステアお嬢様との時間を共にしたいと思うほどです。2人の時はとても良き時間を過ごせていますので」


「では、参考にさせていただきたいので今後は私も授業に同席させていただきます」


「ローキさんの参考にはならないかもしれません。年長者の私だからこそできることもあるので」


「・・・それはどういう意味です?」

「さて、どういう意味に聞こえましたか?」



あかん。

これはダメだ。

なんか相性最悪な感じしかしない。



ルーファは余裕のある笑みを深めているけど、ローキが怒りだしそうだよ!




「えっと・・・ルーファ、授業を始めましょ?ローキ、挨拶も済んだしもう・・・」

「今日は1日同席させていただきます」


「でも・・・」


「アリステアお嬢様、私は構いません。きっとローキさんには、私とアリステアお嬢様がとても仲が良く感じられて心配されているのでしょう。余裕がないのは可愛そうですから」


「・・・その手には乗りませんよ。私とアリステア様の関係以上にはなりえませんから。ルーファ・ダナテ様」


「・・・・・・」

「・・・・・・」



今日・・・授業もうやめない?




結局、ローキは授業に同席した。


ローキはご機嫌斜めな表情のままでこちらをじっと見ているので、気になって仕方がないかったし、ルーファはローキを視界に入れないように完全に背を向けていないものとしていた。



なんだか妙に疲れる授業になってしまった。




『基礎文字と言語』の後、『算術』と『歴史』の授業も同席すると言ってきたが、さすがにお断りした。




「なんで同席したらダメなんだよ」

「・・・なんでだと思う?」


「・・・・・・」

「ふーん、反論ができない程度に身に覚えはあるんだ」



「ティアはあいつの本性を知らないんだ」

「本性って?」


「あいつはルーファ・ダナテだ」

「名前は知ってるけど?」



「・・・・・・ちっ、まぁいいさ。妙なことを吹き込まれたらすぐに教えろ」

「妙な事って?」



「何か違和感を感じたら、些細な事でも教えろ。身体に触れてきたり、甘い言葉で誘われたり、悪意のある情報だったり・・・とにかく、授業以外のことを吹き込まれたり、行動してきたらだ」


「ルーファはそんな変なことしないよ」



「今日の授業でお前の頭を撫でたり、手を握ったりしただろうが!!」

「えぇ?!だってそれは期間が開いたけど、前回の授業内容を覚えたいたから誉めてくれただけだよ?!手は・・・握られてたっけ?」


「『私はアリステアお嬢様の講師を務めることができて幸せです』とか甘ったるい声でいいながら握っただろが!!奴の腕をぶった切ってやろうかと思ったぞ!!」


「いやいや・・・甘ったるい声なんか出してないよ、それだってアルティミア祭りの時に外国の人と話せるように頑張ります!って言ったことに対する行動でしょ?講師としては教え子がやる気出してたら嬉しいものじゃない?」



「はぇ?!うそだろ・・・危機管理能力がぶっ壊れてやがる・・・」


「壊れてません!ルーファはかっこいい大人の男性なの!私みたいなお子ちゃまに変なことはしません!」



「あぁ?!お前は7歳だろ!!婚約者を決められる年齢だし、あと3年もすれば身体は大人になるんだ!あいつの年齢が20歳前後なら、お前が成人した頃には年齢差なんて気にならない程度しか違わないじゃないか!」


「それは成人したらの話でしょ?今は7歳のお子様だし」


「そのお子様ってなんなんだ!お前は大人になればどう成長するかなんて奥様見てれば想像できるし、年齢差がさほどない男からしたら十分対象内なんだ!婚約だけなら年齢差は関係なくできるんだぞ!!」



え、そうなの?

ルーファが幼女趣味とは思わないけど、この世界では7歳と20歳越えの婚約はありなの?



・・・そう言えば『前の世界』の歴史でも年の離れた婚約や結婚はあるあるだったよね・・・

勝手に歳の近い人だけが婚約対象者として警戒してたけど、もしや大人たちとの関係でも追放や没落ルートへのフラグって残ってたりする?




・・・・・・うーん・・・・ないな。



なんて言うか・・・想像できなさすぎて、歳の差の恋愛フラグはない気がする。

少なくと身体が成長期で大人になる前は、ありえないでしょ。



「おい・・・俺の話、ちゃんと聞いてないだろ」

「いや、だってさ。そうは言われても、私、今子どもだし。全然そういう対象になる予感が1ミリも持てないから」



「・・・なんでそんな冷めきった目をしてんだよ。普通大人に気に入られることは喜ぶんじゃないのか?」

「全然わかんない。子どもを恋愛的なそういう対象で見るってことでしょ?」


「れ、恋愛的そういう対象って何だよ!!見た目のいい公爵令嬢を早めに確保しようとするのは当たり前だろ!!」


「あ、権力とそういうことね」


「それ以外になにがあるんだよ!!」

「・・・な、なんでしょう」



誤魔化してみたけれど、ローキの顔が真っ赤なので、私がなにを勘違いしていたのかはわかっているのだろう。


ごめんなさい。中身30歳オーバーなので、そっち方面の知識があるんです・・・とは言えない。


あ、でも今度話さなきゃか・・・・なんか話さない方がいい気がしてきた。




「くっ・・・お前の反応が想定外すぎて対策が取りづれぇ・・・とにかく取り込もうとしてきたら俺を呼べよ!!強く心の中で呼べば俺がどこにいようと届くからな!」


「血の契約のやつだね。でもそういうのって命の危険が及んだときとかじゃないの?」


「そんなわけないだろ!!そんな危険がそうそうあってたまるか!!俺の役目はそんな危険が起きる前に潰すことだ!呼ぶのはいつでもいいんだよ!!」



・・・そうなんだ・・・小説とかアニメとかで遠く離れた相手に繋がる力って、命の危機の場面あるあるのイメージだったから・・・一生のうち1回あるかないかだと思ってたよ。




「でも、あんまり何回も呼ぶと本当の危険な時と、そうでもない時の区別がつかなるんじゃない?」


「あぁ?!お前が呼ぶなら、どんなことでも最優先事項だろ」




・・・・・・おぉ・・・・なんか今ちょっとときめいたわ。




「ローキ・・・かっこいいね」


「なっ!!なんで今そんなこと言うんだよ!お、俺はいつでもかっこいいんだろうが!!」



・・・あちゃー・・・照れ隠しなのは分かるけど、かっこいいから可愛いになっちゃたよ。



「ルーファの奴の授業はとりあえず、同席はしねぇが何かあればすぐに呼べよ!」


「うん。わかった」



『算術』、『歴史』の授業は無事にいつも通りの平和な授業になった。


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誤字報告下さった方ありがとうございます。


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