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76.家族と専属⑦

「シキ、来てくれてありがとう」



余裕の笑顔を顔に張り付けてた公爵令嬢モードでシキを迎えた。


シキと共に、ルーリーとリナが書斎に入ってきて、テキパキとシキが座る椅子、お茶、お菓子を用意して出て行った。



「座って」

「はっ」



さて・・・取り調べを装って、いい感じに仲良くなれるように頑張らねば。




濃くて強い光を感じるブラッドオレンジ色のシキの瞳と目が合う。


真剣な表情には、何か挑むような雰囲気を感じる。



専属を探している時にだいぶやらかしている感はあるし、スーア族と孤児たちの区域の外に出るときに、少し崩した話し方をしていたから、ちょっと楽な話し方をしても大丈夫か

と思ったけれど・・・


・・・ローキが言ったように、たしかに難しそうだね。




「シキ、準備があったのに急かしてしまってごめんさい」

「いえ、私の準備など、さほどすることはございません。気遣いは不要でございます」



「1人ずつ話をしたいと言ったのは、シキのことをもっと知りたいと思ったからなの」

「私の・・・ことをですか?」


鋭い目つきのシキの目が、心なしか驚いたように見えた。



「あまり例のないことみたいだけど、私はみんなのことを知って、良い関係を築きたいと思っています。だからまずはシキのことを教えてくれないかしら?」


「・・・どの様なことをお知りになりたいのでしょうか」



さっきは驚いたように感じたけれど、もう感情が読めない表情をしている。

『影』だから表情を隠す訓練をしているのだろう・・・必要なことだとは分かっているけど、さびしく感じる。



「そうね・・・シキの生い立ちを言える範囲で教えて」


「生い立ち・・・そうですね・・・私は15歳です。ローキと同じくスーア族の生まれで、スーア族の区域で育ちました。両親もスーア族で、町で『影』の補佐となる情報収集の役目を担っています」



えっ・・・シキもスーア族なんだ?!


スーア族って見た目の特徴がないから分からないんだよね・・・圧倒的な身体能力の高さに加え、魔素保有量も多く伝説の人って聞いたから、てっきり人口が少ないと思ってたけど、案外いるかも?



それに、15歳・・・見た目は20歳越えに見えるから不思議だ。


身長175㎝くらいの細マッチョ・・・清潔感のある薄い黄色の短髪。

細くて鋭いがきれいな形をしている瞳だけは、若さを感じさせるような力と光を宿している気がする。



「短刀と諜報活動が得意だったよね。逆に苦手なものはある?」

「特別苦手というものはありませんが・・・遠距離攻撃系の得物でしょうか」



「遠距離系の得物・・・弓とか?」

「はい。近距離のナイフ投げは外しませんが、3人引きの弓はまだ全矢命中と言えるほど精度に至っていません」



「3人引きの弓?」

「弓を引くのに、通常3人の力が必要な遠距離用の弓のことです。それを1人で引いて放つ遠距離攻撃訓練があります」



「それは・・・確かに苦手にはなりませんね・・・むしろ3人引きの弓を1人で引いている時点てすでに超人的ですもの」

「超人的ではありません。スーア族の男はそのくらい当然の様にこなせます」



・・・・・スーア族、通常の男の人の3倍の力持ちなのね・・・さすが身体能力高いって言われるだけのことはあるね。



「訓練がない日は何をしているの?」

「知識の吸収に努めています。主に書物や過去の案件資料を呼んでいます」



「スーア族の区域から出たことはある?」

「はい。両親の住む街の家や、外での訓練を受けるために出たことはあります」



「旅行に行ったことは?」

「旅行はありません。長期移動や、国外への訓練は今後実地訓練で経験できると聞いています」


「そう・・・」



私は旅行ができるようになったら、あちこち旅行する気なので、できれば旅行に関連する情報が欲しいと思っている。

シキが旅行に興味があればいいと思ったけれど、休日に読書するタイプだと、シキはインドア派なのかもしれない。


うーん・・・あんまりそっち方面の話はしない方がいいかも。



「アリステア様は旅行へ行きたいとお考えですか?」

「見聞を広げるためにいずれ行ってみたいと思っています」


「私も同行させてください」


「え」

「ぜひ」


・・・・・・あ、圧が強めだね。

表情自体に変化はないが、目に込められた力を感じる。



インドア派のシキには知識面の収集をお願いしようと思ってたんだけど・・・



「でも、シキはお休みの日は部屋の中にいたいのでは?」


「いいえ。機会がなかっただけです。知識を得ることは好みではありますが、実際に見聞きすることに勝ることはありません。同行をお許しいただけるのでしたら、私を選んでいただきたいです」


あ、なるほど。

『影』として訓練をしてるのに、旅行みたいな目立つことできないものね。


「私自身もまだ行けるかどうかわからないけれど、行けるようになったらシキに声をかけさせてもらいますね」

「ありがとうございます」


嫌がられるかと思ったけど、まさか前のめりで旅行の話に乗ってくれるとは思わなかったから嬉しい。

これで、旅行へ行きたい時に手助けしてくれるかもしれない。




「ローキもこの話を知っているのでしょうか?」

「え?いいえ。ローキに旅行の話はまだしたことはないですね」


「・・・そうですか」


あれ?今ちょっとシキの口角が上がったような?



「シキはローキ、ミル―、シルルのことはどう思ってる?」

「特に何か思うことはありません。ただ連携し、アリステア様のために尽くすのみです」



シキにとって他のみんなのことをどう思ってるんだろって軽い気持ちで聞いたら、感情そげ落とした反応が返ってきてしまった。


聞かれたくなかったのかな・・・





――――コンコン



「アリステアお嬢様、ミル―が来ております」

「わかったわ、少し待っていて」



時計を確認すると、すでに半刻が過ぎていた。

本当はもっと話をしたいけれど、ミル―とシルルの話も聞きたいので、今日はここまでにしよう。

でも、最後に1つ聞きたいことがある。



「最後に1つだけ・・・シキはどうして私の『影』になってくれたの?」


「アリステア様にお仕えしたいと思ったからです」


「それはなぜ?」


「あなたは・・・唯一の存在だと感じたからです」

「唯一?」


「はい。あなたの言動は私の知る人々と異なるものです。直観的に、この世界でアリステア様以上に私の興味を引く人はいないと悟りました。私はあなたのことを知りたいです」



つまり・・・私の謎な行動に知的好奇心を刺激されたと・・・


なんか・・・素直に喜べないね。


シキは見た目や声は落ち着きのあるタイプに見えるけど、知的好奇心の探求には情熱を燃やすタイプなんだろうな。


まっすぐ私を見つめる瞳には、確かに熱を感じる。




・・・うん。少しわかった気がする。


時間は足りなかったけれど、回数を重ねることも大事だから、これかもっと話しかけていこうかな。


ブクマ&いいね&評価ありがとうございます!

誤字報告下さった方ありがとうございます。

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