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71.家族と専属②

「アリステア―!!」



「あ、レオナ兄さま・・・って、まさか全員いるの?!」


「だから言ったでしょ、早く行かないと俺、殺されるって」



冗談かと思っていたけれど、家族全員が屋敷の裏出口で待ち構えていた。

お父さまや、イデュール兄さまの姿も見えて、スタンが焦っていた理由がわかった。




―――――スタッ




「お待たせしました、旦那様」


「うむ。アリステア、おかえり」


「お父さま、なんで・・」

「アリステア、血の誓いをした奴はどいつだい?」


「え」


さっきまで私とスタンに笑顔を向けてくれたお父さまだったが、今は後ろに並ぶ人たちを凍らせる目つきでにらんだ。


「お、お父さま?!」


「専属護衛の選定は許可したが、血の誓いを許可した覚えないぞ・・・タータッシュ」


「・・・申し訳ございません。旦那様」

「提案したのはお前と聞いたが?」


「その通りでございます」

「孫かわいさ故か?」


「決してそのようなことはございません。ローキは必ずアリステアお嬢様のお力になります」


「ほぉ?私の怒りに触れることが分かっていながら、誓いをうながしたのか」



え、えぇ?!

お父さまが見たこともないほど怒ってる!!

表情が怖いとかそんなんレベルではなく、お父さまの足元は踏んだら痛そうな尖った霜がじわじわ広がり、不気味な冷気が吹き始めた。

明らかに氷魔法で攻撃仕掛けようとしてる気がするよ!!



「アリステア、無事に戻ってきたな」

「イデュール兄さま!!今無事じゃないです!!お父さま、お父さまが怒っています!!」


「そうだな。だが、あれは本気ではないから大丈夫だ。ただ・・・気に入らないから八つ当たりをしているだけだ」


「や、八つ当たり?!私、あんなに怖い八つ当たりはじめてみました!!」

「私も久しぶりにみた」


「久しぶりにって、前にもこんなことが?」

「サラの時だ。血の誓いではなかったが、専属護衛が男だとわかった時だな」


え・・・私、専属護衛が男で、血の誓いもしてるんだけど。


タータッシュさんはきれいな姿勢で落ち着いて対応しているのに対して、ローキの方を見ると、真剣な顔をして迎え撃つかのような姿勢を取っていた。


ちょっ!!ローキが飛び出しそう!って、シキも臨戦態勢だし!!


ミルー、シルルは真っ青な顔でお父さまの反応を窺っていた。



「お父様、私、その八つ当たりの後、しばらく口きかなかったの・・・覚えてます?」



―――――ピタリッ



なんでもないかの様に、サラ姉さまがお父様のそばに立った。


「アリステアも、同じかもしれませんね。いえ・・・アリステアは私より優しいですから、泣いちゃうかもしれないですね。お父様のせいで」


・・・・あ、そういう事ね。


サラ姉さまからの目配せを受けて、理解した。



「お、お父さま・・・こわいです。私が勝手に血の契約をしちゃったから怒っているんですよね・・・うぅ・・・ごめんなさい」


「ちが!違うぞ!!アリステア!!決してアリステアに怒っているのではない!」

「でも、専属護衛も影も私が選んだのに・・・血の契約だって私が決めて・・・やっぱり私が悪いんですよね・・・」


「くっ・・・アリステア、違うのだ。これは、その通過儀礼のようなもので・・・父親として、その・・・男どもに」

「うぅ・・・こわいぃ」


「アリステア・・・大丈夫だ!もう怒っていない」

「ほんと?」

「あぁ、ほら、もう怖くないだろう?」

「・・・うん」


「ふぅ・・・タータッシュ、皆も・・・よく来た。中で話そう・・・」


「承知いたしました。旦那様」



お父さまが屋敷の方へ向かって歩き出して、タータッシュさんが答えると、身構えいていた皆の力が抜けた。



あ、あぶなぁ・・・涙なんて一滴も出てないから、雰囲気勝負だったけど、なんとか乗り切れたみたいだね。


サラ姉さまの方を見ると美女の豪華なウィンクを受けた。


サラ姉さまのウィンクって人殺せるかも。

同性の私でも、心臓キュンってなって、幸せ死するかと思ったよ。



「ごめなさいね、みんな。あの人ったら、朝にアリステアちゃんが戻ってくると聞いてから張り切っちゃって・・・スタンも間に合ってよかったわ。もう少し遅かったら迎えに走り出すところだったの」


・・・今のやりとりを、あの村の入り口で繰り広げていたのだろうか・・・それは・・・別の意味で恐ろしい。


「アリステアちゃん、お帰りなさい。頑張ったわね」

「お母さま・・・あはは」


今一番頑張った気がするけどね・・・



「さ、皆さん。中で任命式をしましょうね」


・・・そんな式するだ。



「スタンさん・・・アリステア様を降ろしてください」


声のする方を見ると、ローキが真剣な顔でスタンを見上げていた。

そういえば、私ずっとスタンに抱っこされたままだった。


ローキの口から『アリステア様』と呼ばれると、なんだか寂しく感じる・・・

それに、ローキはタータッシュさんのことをジジイ、他の人のことは呼び捨てなのに、スタンはさん付けだなのが気になった。



「・・・だーめ。お屋敷の中は広いからねー。それに旦那様を今日はもう刺激したくないの!八つ当たり不完全燃焼だからなぁ・・・はぁ」


「なんか、ごめんね・・・スタン」

「お嬢は優しいなぁ」


スタンにぎゅっとされたので、頭を撫でてあげた。

きっといつもお父さまの対応をしてくれているのだろう。


外見は幼女だけど、中身は30オーバーの私にとってスタンも年下なので、なんだかねぎらってあげたくなる。


「アリステア様・・・そこまでする必要・・・ないですよね?」


「ろ、ローキ?・・・なんか・・・キレてない?」

「キレるとはなんでしょう?」


「怒って・・・」

「怒っていませんよ」


いやいや、笑顔だけど、さっきお父さまに向けていた以上の殺気を感じますから!!


「心の狭い男は嫌ですねー」



「スタン。後輩をからかっている場合ではないだろ。父上を待たせるとお前自身が困るのではなかったか?」

「うぐっ・・・はぁい。イデュール様」


「私が後で慰めてやろう」

「サラ様の鍛錬という慰め方はきついので、別の方法で慰めてください」


「他の方法?・・・茶と菓子でも食べるか?」

「え、何ですそのまともな慰め方・・・逆に怖いです。サラ様」



「あなた達こそスタンで遊ぶのはやめなさい。行きますよ」


・・・・・・みんな仲良しだね。


ローキだけ殺気込めて睨んできてるんだけど・・・スタン、私もあとが怖いよ。


そっとため息をついた。

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