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69.専属護衛と影


「起きろ」


「んー・・・」



「おーきーろ」


「・・・・・・ねむ」




―――――バサッ




「さむー・・・」


「なら起きろ!!!!」


「ひうっ!・・・ろ、ローキ・・・じゃない?」


「俺だよ!!」



布団を引っぺがされてベッドの上で丸まりながら目を開けると、そこにはローキに似た男の子がいた。



確かに整った顔立ちのパーツは似てる・・・

特徴的な赤に金色が混ざった瞳は同じだけど、肩より長いであろう真っ白な髪を後ろで一つに結んでいる。

ローキの髪は同じ真っ白だけど短髪だ。


何よりも、身長が全然違う。


「・・・ローキのお兄さん?」

「本人だ!」



「でも・・・大きい・・・」

「成長期だからな!」



ポケーっと見つめていると、ローキと名乗る青年ががニカっと笑った。



「なんだ?見惚れたか?」

「うん。かっこいいね・・・」


「っ!まだ、寝ぼけてんのかよ!!」


「いや、ローキははじめからかっこいいよ」

「う、うるせぇ!!」


「・・・本当にローキなの?」


起き上がって、ベッドわきに立つ男の子の隣に立つ。


ローキの身長は私より少し高いくらいで、目線もさほど違いがなかった。

しかし、目の前に立つ男の子は、私より15㎝以上の差がありそうで、顔を上げないと目が合わない。

顔立ちも少年というより、青年だ。


この感じ・・・サフィールさまが短い期間で変化した時と似てる。

口調も態度もローキそのものだけど・・・でも、一晩でこんな変化が起きるのものだとは認識してなかったよ!



「そうだって!ったく、成長期なら普通だろ・・・これくらい」


照れたように頭の後ろをかく姿も、かわいいというよりかっこいい。



「一晩でそんなに・・・なんか不思議。サフィールさまも一晩で変化したのかな・・・」


「・・・サフィール?それ、男の名前だよな?」


ギロッと効果音が聞こえそうなほどの目力に驚いた。


こわっ!!

怒った時の怖さも増してるね!


「う、うん。ローキと同じで、こないだ成長期で急に大きくなった人なの。トゥルクエル家のサフィールさま」


「・・・トゥルクエル家・・・サフィール・トルート=トゥルクエルだな」


「あ、知ってるんだ」

「当たり前だ。でも顔は知らねぇ・・・会うのが楽しみだ」


なんか・・・楽しみって感じの顔には見えない怖い顔をしている。



「えっと・・・部屋借りちゃってごめんね。夜大丈夫だった?」

「俺はどこでも寝れるように訓練されてんだよ。気にするな」



昨晩はタータッシュさんとローキの家に泊まらせてもらい、ローキのベッドをかりて眠った。



「あそこに置いてある服を着て、とっとと準備しろ。下の階で飯は準備してある。飯食ったら宿舎へ行くぞ」


「服・・・メイド服じゃないね」


机の上にあったのはメイド服ではなく、淡いピンク色のワンピースドレスだった。



「お前の見学期間は昨日終わったからな。もうメイド服を着る必要はねぇよ。朝一でジジイがオルガに事情を説明するついでに必要なものを取りに行ったんだ。集合時間に遅れるわけにいかねぇから準備を急げ・・・一人で着れるな?」


「うん。複雑なつくりのドレス以外なら多分大丈夫。私そんなに何もできなさそう?」

「お前の場合、何ができて、何ができないのか予測できないからな。確認が必要なんだよ。ほら、急げよ」



ローキはさっさと部屋を出て行ってしまった。



・・・この世界の成長期・・・やっぱり慣れないなぁ。



10歳から13歳の間で大人の姿に急成長するのは分かってたけど、一晩でこんなに変わるんだね・・・

10歳で大人の姿の人もいれば、13歳間近でも子供の姿のままの人もいる。


・・・『前の世界』以上に見た目で判断できないってことか・・・


私はモソモソと着替えをはじめた。




================



「・・・美味しい」

「そうかよ」


着替えて下の階に降りると、ログハウス的な部屋に似合わない豪華な食事が用意されていた。



「もしかしてこれ、ローキが作ったの?」

「他にいるか?」


「タータッシュさん」

「ジジイは必要なものをこっちに運んだあとまた出て行ったぜ。おそらく本館の方へ連絡しに行ったんだろ」



「で、味はどうだ?」

「美味しいよ?」


「もっと具体的に言えねぇのかよ」


「うーん・・・野菜にかかってるドレッシングが柑橘系でさっぱりしておいしいし、スープもあっさりしてて飲みやすいし。パンもフワフワ。ソーセージはジューシーでハーブの香りも絶妙だし・・・他のはまだ手を付けてないけど、香りからしておいしそう」


「・・・ま、俺が作ったんだから当たり前か。苦手な味があったら言えよ」


これは、私の好みを把握しようとしてくれてるのかな?



「ありがと!ローキは本当に何でもできるね!」

「護衛対象の食事管理は基本の一つだ。お前みたいなぽやっとした奴は食事に毒盛られそうだから、特に気を付けねぇとな」


「こ、怖いこと言わないでよ」

「あぁ?怖いもなにも、お貴族様のやりとりの挨拶みたいなものだろ?」


「そ、そんな恐ろしい挨拶しらないよ?」


「お前なぁ・・・現に今、お前が食べてる食事も微量の毒は入ってるぞ?毒耐性を付けるためだから仕方がないが、毒の種類によっては味の調整が難しいんだよ。まぁ、上手いって感じるなら、もうちょいいじっても大丈夫そうだな」


「え・・・」

「なんだよ」


「毒入り?!」

「言っておくが、お前の食事にはずっと入ってたんだよ。今までどんな調整をしてたのか、朝ジジイが荷物を取りに行ったときにリストをもらってきたんだ」


「知らなかった・・・」

「別に味が良いならいいじゃねぇか。隠し味ってやつだと思えよ・・・食わねぇのか?」


「・・・食べます」



し、知らなかった・・・基本ホワイト世界だと思ってたから、そんなベタな毒対策体験を自分がしていたとは思いもしなかった。


専属護衛の忠誠心が大事ってこういうことね・・・



まぁ・・・おいしいからいいか。


私は自分の心の平安のために考えることをやめた。



================




「アリステア様、無事のお戻り、安堵いたしました」


「オルガさん・・・何も言わずに飛び出してすみません」



「いえ、我々の落ち度です。外からの侵入や妨害には警戒しておりましたが、内部から外への対策が甘く・・・すぐに追いかけられず申し訳ございません」

「ほんとに・・・ごめなさい」



そうですよね・・・脱走みたいなことする人、ここにはいないですよね・・・

わかってます。反省してます。だからそんな目で見ないで、ローキ。



ローキと共に宿舎に着くと、広めの応接室のようなところに案内された。

部屋に入ると、オルガさんとタータッシュさん、私の『影』になるシキ、ミルー、シルルの3人もいた。



オルガさんが私の前に跪いて謝罪してきたが、どう考えても私の行動が問題だったので、冷や汗が出る。


助けを求めて、すぐ後ろに立つローキに視線を動かすと、ものすごく冷ややかな目線を返されてしまった。


・・・反省しろバカ・・・って目が言ってる。




「オルガ、今後の対策は後で考えるとしましょう。本館の皆様もアリステア様をお待ちです。『影』達への説明は済んでいますか?」

「はい、タータッシュさま。説明は済んでおります。3人とも、前へ」


オルガさんが後ろに控えていた3人に声をかけると、3人が私とローキの前に着て膝まづいた。



「この度、『影』としてお声掛けください。誠にありがとうございます。これより我ら3人、アリステア様の『影』として身命を賭してお仕えいたします」


「・・・顔を上げて」


私が声をかけると、3人が顔を上げた。


やっと・・皆の顔と姿を見れた。


3人の代表として話してくれたのはブラッドオレンジ色の瞳のシキだった。



身長は175㎝くらいで、体格は細マッチョタイプ。身に着けている服装は身体にぴったりした忍者っぽいものだった。

髪は薄い黄色の短髪。

目つきは鋭くて、一見怖そうだが、声は落ち着きのある雰囲気が感じられた。



双子の女の子・・・いや、女の人たちも同じ服装をしていた。

顔は同じだけど、それぞれが持つ色と、体形が違っていた。


一卵性双生児って性別が同じだと体形も同じイメージだったけど、こちらの世界は違うのかも・・・


ピンクの瞳で茶色の髪のミルーは・・・所謂ナイスバディタイプ。

緑の瞳でミルクティ色の髪をしたシルルはスレンダータイプ。


身長は2人とも160㎝くらいだろうか。

髪は2人とも長そうだけど、きれいに編み込んでキッチリお団子にしていた。



「シキ、ミルー、シルル。これからよろしくお願いします」


「「「はっ」」」



私の考える貴族っぽい行動を意識して、微笑みながら声をかけてみたが、正解だったようだ。


オルガとタータッシュさんが満足そうな顔をしている。

ローキの方を見ると、なんだか不満そうな顔に見えた。



「それでは、本館・・・お屋敷に向かいましょう。皆様がお待ちです」


「はい。タータッシュさん」



さて、なんだか色んなことがあったけど無事専属護衛をゲットできたから、これで安心安全に全力でファンタジーバトルが観戦できるね!!


私はワクワクしながら宿舎を出た。




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