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67.専属護衛①


どうしよう・・・ローキがフリーズしてる・・・


いつも反応豊かなローキが、目を開けて驚いた表情のまま固まっている。


何も話ができないままローキとさよならするのが嫌で、ローキの家に突撃して言い合いになって、気が付いたら血の誓いをしてて、そしてなぜかタータッシュさんが私の色を変える魔法を解いて素性がバレたと・・・



あれ?私・・・名前教えちゃいけないと思ってたけど、もしかして勝手に勘違いしてた?


あ、もしかしてローキは修行中の人たちとは違うから、喧嘩するくらいなら話してしまえってことかも。

魔法も解かれちゃったけど、タータッシュさんならもう一度魔法をかけることもできるもんね。



「ろ、ローキ?私、ローキにも私のこと話しちゃいけないと思い込んでただけみたい。こんなことなら早く話しておけば・・・」


「アリステア様?何やら勘違いされているようですね」

「え?でもタータッシュさんが魔法を解いてくれたのは、私のことをローキに話しても大丈夫だったからですよね?」


「正確に言いますと、大丈夫になった、です」

「『大丈夫になって』っていうのはどういうことです?何も変わっていませんよね?」



「・・・・・・ローキが血の誓いをしました」

「そうですね?」



「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」



ん?血の誓い?

血の誓いは、ローキが私を守るって思いを証明するために、タータッシュさんが提案したんだよね?

それで、結果私の危機を感じることができるようになって、私が強く願えば言葉がローキに届くようになった。


強力な味方ゲット・・・


おや?


私の目的って、私個人に忠誠を誓う専属護衛を見つけること・・・


おやおや?


もしや・・・



「タータッシュさん・・・もしかして、ローキが私の専属護衛になったのですか?」


「・・・・・・そうですね。逆にアリステア様はローキをどうする気だったのですか?」


「ど、どうする気って?!どうもしませんよ!」



「どうもしねぇってなんだよ!!」



「ひうっ?!ろ、ローキ?!なんでそんなに睨んでるの?!今までで一番怖いよ!!」



「当たり前だ!!!お前は泣きわめくほど会いたくて、話したくて、危険をおかしてまで俺のところに来たんだよな?!」

「う、うん」


なんだか微妙にニュアンスが違うけど、否定するほどの差ではないので、激怒するローキの話をとりあえず肯定しておく。


「俺はお前とこれから同じ世界を一緒に生きて、助けて守るって宣言した時、否定しないで受け入れたよな?!」


んん?


なんだろう、私の覚えている印象と違う気がするんだけど。

確かに『同じ世界で生きる』ことも、『助けてくれる』ってことも会話の中に出てきたけど・・・宣言って感じじゃなかったような?

私が孤児って話が前提だったから、私が孤児じゃなくて生活圏がお互い別々になったら意味をなくす話じゃないの?



「えっと・・・でも、それは『孤児の見学者』の『私』に言ってくれた言葉だよね?同じ生活圏で暮らしていく予定の『私』に」



「だ・か・ら!!お前が俺と同じ世界にいられないなら、俺がお前の世界で生きるって言ったよな?!お前がどこのだれか関係ねぇ!全部ぶっ飛ばしてお前を守るってことを証明するために血の誓いをしたんだ!!わかったか!!・・・はぁ、はぁ・・・」


大音量でまくしたてて叫んだローキは、私をにらみながら乱れた呼吸をしている。



・・・・え、そうなの?たしかに今ローキが言った意味なら、ローキは『私』に忠誠を誓ったということになるね・・・でも



「な、なんで?!私、ローキにそこまで言ってもらえること何もしてないよ?!相談のってもらったりとか、迷惑をかけた覚えしかない!!」



「今、それを言うのかよ?!くそっ・・・俺の想いなんて何にもわかってねぇじゃねぇか・・・俺は!どんくさくて、危機感ゼロで無計画に俺に突撃してくるお前がいいって言ってるんだ!俺がお前のそばにいるのは嫌か?!」



「嫌なわけないよ!私はローキと会いたくてここに来たんだよ?!」


「なら、ごちゃごちゃ言わずに俺に守られてろ!いいな!」

「え?う、うん・・・ん?」


「よし!言ったな」



さっきまで睨んでいたのに、急に満足そうにニカっとローキが笑った。

イケメン少年のナチュラルキラキラ笑顔は魅力的でつい見とれてしまった。


あ、かっこいい・・・じゃなくて!


なんかよくわかんないけど、ローキに丸め込まれたような?

でも、どこのだれでも関係なく、『私』を守ってくれる存在はとても嬉しい。


どこのだれでも・・・その言葉が私にとってどんな意味をもつかローキが知るわけがないけれど、何よりも嬉しい言葉だ。



「はぁ・・・ローキ、さすがに主人にその口の利き方はどうかとは思うが・・・アリステア様には調度良いのかもしれないな。アリステア様、ご理解されてない時は返事は避けるべきですよ」


「うっ・・・つい」


タータッシュさんの方を見ると、頭が痛いのか、こめかみをもんでいた。



「あの、タータッシュさん・・・私の専属護衛ってローキでもよかったんですね・・・」


「もちろんです」

「もちろん?!なんで?!」


「なぜと言われましても・・・オルガが言いませんでしたか?」



「オルガはここにいる修行中の子は力量が基準以上なので、どの人に声をかけてもいいと・・・」


「ローキは修行習得済のですから力量は問題ありません。そのため、ここに出入りすることが許されています。ここまではいいですか?」

「はい」


「ふむ・・・ここまで理解できているのなら、ローキを対象外と考える方が逆に難しいのではないですか?」


「え?でも、成人じゃないからここから外に出れないのでは?」


「あぁ、なるほど。そこで勘違いが起きたのですね。確かに通常は成人と共に生き方を選択します。しかし、ローキは特別卒業予定生と言いまして、任務先が決まればいつでも外へ出ることができるのです」


「そうだったの?!」


「まぁ、いままで特別卒業予定生の待機期間中に任務先が決まることはありませんでしたから・・・それに特別卒業予定生は修行場の責任者後継候補者として待機期間中に引継ぎが行われることが多いのです。オルガはまだ若いので引継ぎは急ぎではありませんでしたが、来年あたりから情報共有を開始すると聞いていました」



「おい、ジジイ・・・俺も聞いてぇぞ」

「言っていないからな」

「なんで言わなかったんだよ!!」


「今言ったように、責任者の後継として育てる予定で、任務先が決まることがないからだ。特別卒業予定生の権利ではあるけれど、実際は発生しないから言う必要もないと思っていった」

「・・・忘れてたとか言わねぇよな?」

「・・・・・・お前は無茶なことをしがちだからな。今の話を知っていれば、外へ出せと言ってくるだろ」


「・・・わざとってことか」

「まぁ、結果としてアリステア様の専属護衛になって外へ出るのだ。最善の結果だろ?」

「ちっ・・・」



ローキにも知らされてなかったんだ・・・それなら私もわかんなくてもしょうがないよね。うんうん。


「おい、今、お前自分の理解力を盛大に棚上げしただろ」

「だって、ローキもしらなかったんだよ。私が分からなくてもしょうがないでしょ」

「全然違うだろ!俺は知らなかっただけで、お前はここにいる全員が対象だって言われてたじゃねぇか!成人云々はお前の思い込みだろ」


「うっ・・・私なんて、そもそも特別卒業予定生のこともよく知らなかったしんだし」

「俺は・・・」



「ローキもうやめなさい・・・アリステア様、経緯はどうであれ専属護衛が見つかったこと、おめでとうございます」


「あ・・・そうですね、ありがとうございます。なんだかちょっと予想外の感じでしたが、ローキが専属護衛になってくれたのは、とても嬉しいです」


「・・・はじめからそう言えって」


「ふふっ・・・うん!そうだね。ローキ、私を選んでくれてありがと!!」

「っ!!」


ローキが拗ねたような顔をしていたので、本当に嬉しいのだと伝えたかったので、勢いでローキに抱きつくと、ローキは真っ赤になってワタワタした。



うんうん、かわいいね。



「・・・アリステア様。あまり人前でその行動は慎んでください」



タータッシュさんに注意されたのでローキを離すと、ローキは私から逃げるように距離を取った。



「わかりました。人前では気を付けます」

「2人っきりの時もだめだ!!」


「えっ、それじゃローキに甘えられないじゃん。この前はそのまま話を聞いてくれたのに」


「俺は守るって言っただけで甘えさせてやるなんていってねぁ!!俺に抱きついて甘えるとかお前、感覚狂ってる自覚をもて!!それにこの前はお前がぐずったから面倒になって諦めただけだ!!」


「守ってくれるなら、私の心の平安も守って!!感覚狂ってる私を選んでくれたんでしょ?」

「っ!!・・・お前・・・開き直りやがって」



「ローキ・・・お前が選んだ主人だ・・・頑張れ」



タータッシュさんがローキを気の毒そうに見つめているが、私はそんな理不尽な要求をしていない・・・と思う。

まだこの世界の感覚からズレているのはなんとなく感じているので、若干心配ではあるけれど、ローキが本気で嫌がることは分かると思うし、これからもやるつもりはない。


私は、ローキとの関係を大事にしたいと思っているのだから。



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