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5.ファミリー攻略

いざ!ファミリー攻略イベント!!


と、意気込んで広間の扉の前に立ったものの、入る勇気がいまいち出ない。


ヒルデに着せて貰った淡いピンク色のワンピースドレスの裾を握りしめて動けずにいる。

隣に立つヒルデが心配そうに私を見つめているのを感じるが、少し心の準備時間がほしい。


ルーク大司教のおかげで『私』について一応、説明可能な状態になったし、そもそも改めて話さずとも両親が納得しているのだから、もはやファミリー攻略イベントはほぼ達成している…はず。

でも…なんだろう。この拭えない不安は。


あの2人の記憶のせいだよね…

イデュール兄さまとサラ姉さま。

前のアリステアに対して、ある意味正しい対応をしていた2人。


アリステアが両親に無理なおねだりをしているところをイデュール兄さまに見つかると、泣こうが喚こうが小脇に抱えて運ばれ、部屋に閉じ込められた。

まぁ、閉じ込められたと言っても、豪華な自室だけども。


サラ姉さまには肩に担いで運ばれて、何もない原っぱに放り出された。

何もない原っぱ…の様にみえる広大な庭なんだけども。


前のアリステアは、苦手な相手だと認識していた。

『私』からすれば優しい対応なのだが、それでも前のアリステア記憶と感情が身体の動きを鈍らせる。


「アリステアお嬢様、いかがされましたか?」

じっと動かない私を心配してヒルデが声をかけてきた。


「何でもないの。ちょっと緊張しているだけ」

「大丈夫ですよ。旦那様と奥様が、ルーク大司教様が教えて下った内容を既にイデュール様とサラ様にご説明済みのはずです」

「そうよね…わかった」


きっと大丈夫!

ぐっと顔を上げたのが合図となり、ヒルデが広間の扉を開けた。



広間の中に入ると、既に家族全員揃っていた。


うわぁ…美男美女…本当に生きてる人なんだよね?

綺麗な姿勢で豪華なテーブルを囲んで座る家族をみて、思わず息を呑む。


「遅くなって、すみません」

どう見ても、私の到着を待っていた状態だったので、とりあえず謝っておく。


その言葉を聞いた家族がフリーズした。


特に2人。美しい顔が驚愕の表情で固まっている。

イデュール兄さまとサラ姉さま。


1番奥にお父さま、その右手にお母さま、隣にレオナ兄さま、左手はイデュール兄さま、隣にサラ姉さま。

レオナ兄さまの隣が私の席の様だ。

トコトコと席に歩いて行き、1人では座れないので、ヒルデに座らせて貰う。


お父さまとお母さま、レオナ兄さまは既に復活して優しい微笑みを向けてくれているが、しかし2人はまだフリーズしている。

顔を上げると、驚愕を貼り付けた顔の2人と向き合う形になってしまうので顔を上げられない。


イデュール・オーラル=ディルタニア

ディルタニア公爵家の長男にして、後継者。

髪はお父さまと同じく、サラサラストレートの銀髪。

瞳はお母さまと同じ深い緑。

もちろん顔立ちは美しい。

そして美しいだけではない。

騎士団に所属し近衛騎士団副団長を務める実力者。

学生時代には既に第1王子の側近となり、文武両道で魔法も使える。契約魔獣はクリスタルドラゴンときたら、もはや国を滅ぼせる兵器と言って良いのではないか。

これで耳が尖っていたらエルフにしか見えない。



サラ・フィーナ=ディルタニア

ディルタニア公爵家の長女。

髪は緩やかにウェーブした黄金色。

お母さまや、私よりも濃い髪色は金そのものの様。

瞳はお父さまの青。金髪碧眼の絶世の美女。

魅惑的な肢体は女の私から見ても思わず見惚れずにはいられない。

文武両道…だが、かなり武の方が強いらしい。

騎士団員ではないが、必要に応じて参戦する事があるらしく、その華奢な腕でどうやって振り回すのか分からない大鎌で敵を薙ぎ倒す姿は戦女神と言われている。

契約魔獣はペガサス。

……ペガサスに跨り、死神の大鎌を持った女神。なんだそれ。世界を破壊しそう。



そう言えば、そもそも両親も両親である。


お父さまは

アルフェ・ドュード=ディルタニア

現、公爵家の当主にして、

エアルドラゴニア王家につかえる、国の宰相。

近衛騎士団の元騎士団長で、引退してから宰相になったというから、頭も武力も化け物級。

なのに見た目…どう見ても30代…兄さまが確か21だから、40代以上なはずなのだけど…なんだか怖くて聞けない。契約魔獣は火竜。たしか二つ名は炎の悪魔…もはや何も言うまい。



お母さまは

ステラ・スルス=ディルタニア

たぶん、お母さまの石像があったら信仰の対象になる様なお姿。姉さまが絶世の美女ならば、お母さまは傾国の美女。姉さまにはない儚げな雰囲気と、どこまでも慈しみに溢れた微笑みはもはや聖母。

家族で唯一武勇の伝説がないが、社交界ではお母さまを女帝と崇めているとか。


神話の話をしている訳でもないのに、この家族構成なんなのだ。


あ、忘れてはいけない。

癒し担当のレオナ兄さま。

レオナ・サバルカ=ディルタニア

お母さまの慈愛から生まれた妖精。

泣きじゃくっていた顔も、可愛いらしかったが、今は優しい微笑みで愛らしい。

年齢が私の1つ上なので7歳。の、はずだけどそれにしては背が高くないか?手足も長いし…これは戦ったら強くなってしまうのだろうか。

是非戦う事なく成長してほしい。



ーゴホンッ


顔を上げられずに『アリステア』の記憶を思い出していると、お父さまの咳払いが聞こえて顔を思わず上げてしまった。


イデュール兄さまとサラ姉さまの表情はだいぶマシになったけれも、かなり怪しいモノをみるかの様に私を見ている。


「父上…先ほどのルーク大司教のお話。どれだけ信憑性があるのですか?」

「私もルーク大司教のお話をそのまま受け取れませんわ。確かに…魂が変わったと言われた方がしっくりくるほどにアリステアの気配は変わっていますが…」


2人の違和感の原因が、私の謝罪の言葉ではなく、『気配』の様だ。

見た目が同じでも『違う』ことは分かるとは…やはり戦いで鍛えられた感覚は違うのだろう。

気配なんて言われたら、私がいくら言葉で説明したとしても意味のない感覚レベルの話だ。

私は早々に2人に説明するのを諦めた。


ルーク大司教の話をそのまま信じるにしても、『大司教が言ったから』だけでは根拠として心許ないのは分かっている。

いや、本当はこの国の国教で大本山である聖パトラディユス教会の大司教であるルーク大司教の発言には力と責任が生じる。本来は疑う方がどうかしているのだが、私達が同等の力を持つディルタニアなので、仕方ない。のか?


「それは、私もルーク大司教の意見に同意見だからだ」

「「…………」」


お父さまが一言答えると、2人は押し黙った。

何か引っ掛かる言い方だが、要は『私が根拠だ』という事の様だ。

どんな暴君?!とツッコミたいところだが、それでは私の部が悪くなるので、納得していただきたい。


「あ、あの、私が今まで皆にしてきた言動は酷かったと…思います。正直、記憶が曖昧なところもあって…信じて貰えないかもしれないけど、でも、これからは沢山頑張るので…許してください!」


沈黙に耐えきれず、まずは謝罪!と思って発言してみたが、30年以上生きてきた記憶もある割に語彙力のない自分がなさけない。


「べつに…アリステアを非難している訳ではない。私もサラも、大事な妹の事を大司教から教えられるのが嫌だったのだ」

「そうよ、アリステア。貴女は…確かに色々難しいところがあったけれど、可愛い妹にはかわりないのよ」


そうなのか?

私の記憶にあるアリステアはなかなか酷い言動だったが、国や世界を滅ぼせそうな兄姉からしたら、お転婆な妹くらいなものなのかもしれない。

レオナ兄さまが視線を逸らしているのは気にしないでおこう。


「でも…すごく驚いた表情でしたから…」

それなら、さっきの驚愕と怪しいモノをみる様な表情はなんだったのか。


「それは…すまない。やはりアリステアが『違う気配』を纏っている事に違和感がを感じてしまってな」

「私とイデュール兄さまは特に敏感だから、悪気はないのよ。許して」


「兄さま、姉さま…」


「違和感ばかりは仕方ないが、ルーク大司教の話の意味も、大体は正しいだろう事も分かったから、そんな顔をしないでくれ」


「はい」

しょげた顔で返信をしたが、内心はホッとしていた。

引っ掛かるものはあるけど、妹として認めると言った様なものだ。

だとしたら、監獄行きでもなければ、殺される事もないのだから、ファミリー攻略イベントクリア!と言って良いのではないだろうか。


「すっかり遅くなってしまったが、夕食にしよう」


お父さまの声と共に豪華な食事が運ばれてきた。

味も多彩で、異世界でも食事問題は一先ず大丈夫そうだ。

昔の私はさほど料理をしていないから、料理改革なんてチートは出来そうもないから、安心した。

しかし、マナーは課題が大アリだったようで、お母さまと姉さま、ヒルデから

「明日からお勉強を増やしましょう」

と言われてしまった。

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