47.誕生パーティー➂
「サフィールさま、レティシアさま、来て下さってありがとうございます」
「こちらこそ招待いただきありがとうございます。アリステア様」
「お休みのところすみません、アリステアさま」
2人の姿は、お茶会よりも豪華な装いだった。
私もそうだが、服も装飾品も一段ハイクラスのものだ。
レティシアさまのバラ色の髪には先日レオナ兄さまがプレゼントしていた金と青色のリボンが・・・なかった。
トゥルクエル家の色は赤やピンクだから、服の色も同系統で統一されるので、本人に似あうとか以前に金と青色のリボンは浮いてしまう。
それに、あのリボンは品質は良くても、今日の様なドレスに合うものでもない。
婚約者に自分の色を贈るって色んな物語の定番だけど、実際は常に身に着けるものを贈るのは難しいものなのね。
サフィールさまは・・・成長していた。
挨拶の時に見間違いかと思ったが、並んで立つと変化を実感できた。
身長がまた伸びているし、顔つきも凛々しい感じに変化しつつある。
サラサラの赤い髪はつややかで、トゥルクエル家の赤を基調としたカチッとした騎士の様な正装姿も良く似合っている。
ついじっくり見ようと、つま先から頭まで視線を動かすと、優し気なピンク色の瞳と目が合った。
うっ・・・しまった、ついじっくり見てしまった・・・
恥ずかしくなって思わず目線を避けると、今度はレティシアさまと目が合ってしまった。
「アリステアさまのそばには成長期の人がいないので不思議に思いますわよね。私も頭ではわかっていても驚きますもの」
おぉ!!レティシアさまが良い感じのパスくれたぁ!!
この人ほんとレオナ兄さまのこと以外はできる人だよ!
「ありがとうございます、レティシアさま。サフィールさま失礼いたしました・・・またつい」
先日屋敷に来たときも見つめ過ぎて注意されたのに。
「アリステア様、先日の私はまだ未熟だったので貴女の目線に応えられませんでした。しかし、私も日々成長しております。今では貴女の瞳に映るのは私だけであって欲しいとさえ思っています」
・・・成長期って精神も成長するの?
なんか言葉も大人仕様になってる。
「最近のサフィール兄さまは、大人っぽいセリフを勉強中なんです。身体の成長に会わせて言動も成長する必要があるとかで、お父さまやコラム兄さまのところにばかり行ってしまうのよ」
「・・・ゴホンッ」
レティシアさま・・・それはサフィールさまの前で言っては少々かわいそうというものですよ。
ちらりとサフィールさまを見ると、赤い顔をしてそっぽを向いている。
まぁ・・・レティシアさまからしたら、お兄さまが相手をしてくれなくなって寂しいってことを言いたかったんだろうけど。
「アリステアさま、こちらを差し上げますわ」
「わぁ!ありがとうございます」
レティシアさまから差し出された小箱を受け取って、さっそく開けた。
中には小さな髪留めが入っていた。
「かわいい・・・金色の蝶、シフォニーみたい」
「前にシフォニーを見てたときに気に入っていたみたいだから・・・」
「とってもすてき!!気に入ったわ!!ありがとう」
「そう・・・よかったわ」
小さいが細工も繊細で良い品なのがわかる。
レティシアさま、センスもいいのか!!これは可愛いし使いやすそう。
「私のも受け取ってくれるだろうか」
「ありがとうございます、サフィールさま」
サフィールさまから差し出されたのは、レティシアさまの箱より一回り大きい箱だった。
受け取って開けると、中には小さな赤い石が付いた金色のイヤリングが入っていた。
箱から出すと、細いチェーンの先に蝶が付いていて、耳元で揺れるデザインだった。
「かわいいですね!ありがとうございます」
「レティシアと同じく、貴女が私の光の蝶、シフォニーを気に入ってくださったようでしたので・・・私はまだ貴女のことをよく知りません。もっと貴女のことを知って、貴女が喜ぶものをたくさん贈りたいです。どうかこれから私に教えてください。アリステア様のことを」
お、おぉ!!勉強の成果でてますよ!!
すごくかっこいいです!大人っぽいですよサフィールさま!!
折角学んだ大人っぽいセリフには、大人っぽい返しが必要だよね・・・
「ありがとうございますサフィールさま。そのように想っていただけるなんて嬉しいです。サフィールさまのことも私に教えてくださいね」
返事を聞いたサフィールさまは驚いたような顔になって俯いてしまった。
そう言えば私・・・この世界の大人っぽい返しってよくわかんなかったわ。
失敗だったかな・・・
「・・・アリステアさまって、やはり積極的な考えの人なのですね。それともこれが大人のやりというものなのかしら?」
レティシアさまの独り言?とサフィールさまの反応だと正解だったかよくわからない。
うん・・・こういう時は、話をかえよう!
「レティシアさま、レオナ兄さまとはダンスを踊れましたか?」
「え?、あ、だ・・・おどれたわよ・・・」
急につんとしながらも、赤くなってモジモジするレティシアさま・・・癒されるね。
「レオは・・・レオナさまはずっと踊り続けようとしたから・・・置いてきたわ。今日はアリステアさまの誕生パーティーなのに贈り物を渡す機会がなくなってしまいそうだったのだもの」
・・・レティシアさまって見た目も中身も可愛いね。
性格もまじめっぽいし。大人になったら絶対美人になるだろうし、公爵家の令嬢という地位もある。
このままのレオナ兄さまの関係が続けば、悪役令嬢進化はしないと思うけど・・・
「アリステア様、ホールに戻られたら私と踊ってくだいますか?」
会話の内容を変えた成果か、サフィールさまがいつも通りの優し気な表情を浮かべている。
「ええ。もちろんです」
―――――コンコン
「アリステアお嬢様、グレイシャー家のテオドール様とユリウス様がいらっしゃいました」
「え?テオドールさまと・・・ユリウス?!」
「・・・アリステア様、ユリウス様とはどなたですか?」
「え、えーっと、ユリウスは私のお勉強の講師をしてくださっている方です、サフィールさま」
「しかし、今グレイシャー家と言っていましたが、グレイシャー家が講師を?」
「え、その」
「サフィールお兄さま!他家の事情を詳しく知ろうとなさるのは無作法ですわ!アリステアさまの講師でしたら不審者ではないのですから、心配も不要ですわ」
「そうだがっ・・・そうですね。失礼いたしました」
レティシアさま!!ほんと好き!!ナイスアシストありがとう!!
たぶん知られても問題ないとは思うけど、あまり広まっていい話でもない気がする。
「サフィールお兄さま、ダンスのお誘いもできたことですし、私達は退室いたしましょう」
「レティシアさま・・・お気遣いいただきありがとうございます」
「レオの・・・レオナさまの妹は・・・私の妹の様なものだもの」
な!!レオナ兄さま!!きっと直接は話してもらえないだろうけど、レティシアさまはもうレオナ兄さまの嫁の気持ちですよ!!
私もレティシアさまみたいなお姉さんなら歓迎だよ!!
「レティシアさま・・・嬉しいです!!」
「ふ、ふん!では、また後程。いきましょう、サフィールお兄さま」
「ああ。ではまたホールで」
「ええ、ありがとうございました。また後で」
サフィールさまとレティシアさまと入れ違いでテオドールさまとユリウスが休憩室に入ってきた。




