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46.誕生パーティー②

今日の招待客は400人くらいだと聞いている。


全員1人1人とまともに挨拶していたらそれだけでパーティーが終わってしまう。


挨拶の順番は高位貴族から順番に行い、他は基本的には家族単位でさっさと済ませ、1人で来ている人たちは所属するグループごとに挨拶をする。

挨拶が終わるとダンスが始まり、親交のある人たちとの会話になる。


そして今、挨拶が終わりダンスが始まろうとしている。



トゥルクエル家、グレイシャー家から始まった挨拶はずっと立ちっぱなしだったが、基本的には両親が会話してくれたので、私は笑顔で「ありがとうございます」を言い続けるだけだった。

精神的な疲れはあるが、イデュール兄さまがくれたクリスタル靴のおかげもあって肉体的にはつかれることはなかった。


トゥルクエル家のサフィールさま、レティシアさま、リリアンさま。グレイシャー家のテオドールさまとは目があったが、後で話をする時間があるらしいので、笑顔で感謝だけ伝える。



ダンスの相手はレオナ兄さま。

婚約者が決まっていれば、ここでお披露目も兼ねたダンスになっていたはずだ。


このダンスを婚約者なしで迎えられたのは、良い流れの兆しだ。

このままなんとか成人まで婚約者なしをつらぬいて、旅をしてゆくゆくはのんびりダラダラ生活だ。


「アリステア大丈夫?緊張してるの?」

「へ?あ、ううん違うの。レオナ兄さまとダンスができるのが嬉しくて」

「僕も嬉しいよ!いっぱい練習した成果をみんなに見てもらおうね」


ニコニコ天使・・・癒されるわぁ。



レオナ兄さまにエスコートされてホールの中央につくと、ダンス用の音楽が流れ始める。


ダンスの練習はミカム夫人の指導のもと、レオナ兄さまと時間を合わせて連日頑張った。

週に1回の練習頻度ではさすがに間に合わないので、マナー以外の授業を半分にして、ほぼ毎日ダンスをしていた。


課題の5曲分は無事クリアした。

『前の私』はダンスなんてまともにやったことはなかったし、体育の授業でも中くらいで特別才能がある方ではなかった。

『アリステア』も特別ダンスに関して得意ではないようで、身体の動きを覚えるのも時間にかかったし、音にあわせるのも大変だったことを考えると、運動と音楽関係の才能はなさそうだ。


レオナ兄さまも私の練習に付き合わされたので、私のエスコートも慣れたものだ。

スムーズなリードに、余裕のある優しい笑顔。

キラキラの金髪に、青い瞳、柔和で優しい表情、将来が楽しみな整った顔、きっと手足も長く高身長に育つだろうし・・・


レオナ兄さまってあの真っ黒王子達より、王子の素質ありそう。

物語の主人公や攻略対象にいそうなキャラだよね。

ゲームや小説で、攻略対象の妹は意地悪か、ブラコンが定番・・・どちらともならないように気を付けて、あるかどうかわからないけどストーリーから外れるように生きねば。



「アリステア~、ダンス中に考え事ができるくらい上達したのはいいことだけど、僕さびしいんだけど」

「はっ!!ご、ごめんなさい。レオナ兄さま。練習の時のことを思い出してました」

「あはは、いっぱい練習したもんね!これからも僕が練習相手になるから、いつでも頼ってね!」

「ありがとうございます。レオナ兄さま」



ダンスの締めに礼をすると、たくさんの拍手が送られた。



「アリステア、家族のところに戻ろう!」


私を家族のところまでエスコートすると、急いでダンスが行われている方へ引き返して・・・と思ったら、レティシアさまを誘っているのが見えた。

・・・そうだった、レオナ兄さまが攻略対象だったとしても、私がヒロインのお邪魔役ではなかったわ・・・



「アリステア、この後はどうしたい?仲のいい子と話すのもいいし、ダンスも・・・」

「イデュール、アリステアは私とダンスを」

「父上、アリステアとの身長差を考えてください。カミラ夫人にも練習相手として志願していたようですが、変な癖がつくといけないからと断られていたでしょ」

「し、しかし・・・」

「はやく大人になってお父さまとダンスができるようになるのが楽しみです!」

「アリステア・・・うむ、私も楽しみにしているぞ。でも大人になるのはゆっくりでいいからな」


どうだ!必殺良い娘セリフ!!

心にもないけど、それっぽいことを言って場を和ますセリフ。

お父さまにしか効果ない気がするけどね!


「サラなんてあっという間に大人になってしまってさびしかった・・・サラ、踊ってくれるかい?」

「嫌です。私には婚約者がいます。それにこういうダンスは嫌いです」

「・・・アリステア・・・楽しみにしているからな・・・」


うん。大きくなったら、お父さまとはダンス踊ってあげよう。


「アリステア、どうする?」

「えっと・・・少し休憩したいです」

「そうね。アリステアちゃん疲れたでしょ。休憩室にはお茶とお菓子を用意してるわよ。ルーリー、リナ。アリステアちゃんをお願いね」

「はい、奥様」

「お任せください!」



=============



「はぁ・・・糖分がしみるわぁ」

「とうぶん?ですか」


「ううん。なんでもないの。このアップルパイが美味しくて幸せって思って」

「良かったです。アリステアお嬢様はアップルがお好きとおっしゃっていましたので、用意しておいてよかったです」

「他にもチョコレートケーキとチーズケーキ、クッキーにマカロン、軽食もございます」

「わぁ!!すてき!!だけど・・・こんなに食べきれないよ?」


「ご家族の皆さまも親しい方々と共にこちらの休憩室を使われますので、少ないくらいですよ」

「そうなんだ。親しい方って?」


――――コンコン


「いらっしゃいましたね。ルーファ様です。お通ししてもよろしいでしょうか」

「もちろん!」


なるほどね、特に中の良い人と休憩室でゆっくりお話するのね。


「アリステアお嬢様、この度は7歳のお誕生パーティーにご招待いただきありがとうございます」

「ルーファ!!来てくれたのね。でもホールの方にはいなかったような?」

「申し訳ございません。私は大勢の人が集まるところが苦手で・・・」


「人混みではなくて、人が苦手なのでは?」

「ルーファ様が屋敷の外にいるだけでも不思議なくらいです」


「・・・何かおっしゃいましたか?ルーリーさん、リナさん?」

「「うっ」」


ルーリーとリナの方を向いているため、顔の表情が見えないが、ルーリーとリナの表情からして、ルーファが怒っているっぽい?


「ルーファ?」

「なんでしょう?アリステアお嬢様」


こちらを向いたルーファの表情はいつも通りの優しいイケメン顔。

それに、講師の衣装でも、司書のローブ姿でもない。

ベージュ色を基調とした茶色系統の生地に金色の刺繍が施された正装姿は地味に見えるが、素材も仕立ても良いものなのがわかる。


「とても素敵な衣装ですね」

「・・・衣装がですか?」

「す、素敵な衣装を着た、ルーファが、です」

「ふふっ、ありがとうございます。アリステアお嬢様はお美しいですよ。誰にも見せたくないほどに」


このイケメンしかできないお茶目なやりとり・・・心臓へのダメージがすごい。


「ホールでご挨拶できずにすみません。ですが、アリステアお嬢様のこの良き日に一目会いたく、途中より参加させていただきました。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


「こちらを受け取っていただけますか?」

目線をあわせるように私の前に膝まづくと、小さな箱を差し出した。


こ、これは・・・絶対違うけど、違うけど、プロポーズポーズ?!


ネタでしかこのポーズやらないかと思ってたけど、イケメンがやると効果絶大なのね・・・


「アリステアお嬢様?」


コテンっと首を傾げられてしまっては私の心臓がもたない。


「あ、ありがとうございます」


受け取って、蓋をあけると小ぶりのエメラルドのブローチだった。

よ、よかったぁ。指輪だったら心臓止まるとこだったよ。


「とても、きれいですね」

「こちらは感情を見ることができる石です」


「・・・へ?感情がみえる?」

「とは言っても、すべての感情が見えるわけではありません。悪意や殺意を持つ人が半径10メートル以内に接近した場合、石の色が黒になります」

「それは・・・すごいですね。感情って可視化できるんですか・・・」

「いえ、これは私の・・・魔法研究でできた副産物です。まだ研究段階ですが、効果は確かですよ」


・・・世に出ていない魔法ってことですか・・・

たしか、人間関係で悪意の察知って難しいから人選は常に慎重にされるんだよね?

悪意の噓発見器みたいなものでしょ?それって王族とか命狙われがちな人からすれば垂涎の品なんじゃ・・・


「お気に召しませんでしたか?」

「いえ!こんなすごいものを・・・ありがとうございます」

「よかったです。私の力は・・・アリステアお嬢様に使っていただくことで価値がうまれるのです」

「え・・・それはどういう・・・」



――――コンコン



「アリステアお嬢様、トゥルクエル家のサフィール様、レティシア様がいらしていますが、お通しいますか?」


「では、私は失礼いたします」

「え、ルーファ?」


止める間もなく、スタスタと部屋から出て行ってしまった。

しかも、隣の部屋とつながる扉の方から。


なぜそっちに・・・。



「アリステアお嬢様、いかがいたしましょうか?」

「あ、うん。お通しして」


ルーファは気になるが、とりあえず来てくれた人の対応をしないと。



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