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35.依頼

久しぶり・・・確かに久しぶりだけど、そんなに久しぶりでもなかったと思うの。


私が今の私になったのが4週間くらい前。ランスに会ったのがお茶会の前だから・・・2週間前くらいのはず。


人って、2週間でこんなに成長するんだっけ?


私の目の前にはランスの様な人が立っている。

たしかにルーリーとリナはランスって言ってたけど・・・本当に?





――――コンコン・・・・・


「アリステアお嬢様、魔法工具師のグリーム様とランス様をお連れ致しました」

「ありがとう。ルーリー、リナ。入っていいただいて」



ランス達には待ってもらって申し訳なかったけど、観劇から帰ってきて、食事と休憩をした後に私の応接室に案内してもらった。



「アリステアお嬢様、この度はトルト工房へお声がけいただきありがとうございます」

「よく来てくれました、グリームさん、ラン・・・ス?」


「は、はい!お嬢様の為でしたらいつでも!・・・お嬢様?」


「あなた・・・ランス・・・よね?」

「え・・・はい・・・あの、何か変でしょうか?」


驚く私の表情をみたランス?は自分の恰好が何か変なのかと思ったのか、服装を気にしてキョロキョロしているけど・・・

そこじゃない。



も、ものすごく成長している!!


2週間前はレオナお兄さまより少し大きい130㎝くらいの身長だったけど、今は150㎝くらいにみえる。

1週間で10㎝、1日1.4㎝ずつくらい伸びたってこと?

こどもの成長期・・・すごい。


「ら、ランス?あの、ごめんなさい、最後に会ってからまだそんなに日が経っていないのに、すごくその、成長していたから驚いてしまったの」

「え?あ、そういう事でしたか!何か失礼があったのかと思いましたが、良かったです」


顔を赤くした可愛いテレ顔は健在だが・・・少年から青年になっている。


改めて落ち着いてランスを観察すると、フワフワの髪の毛に琥珀色の瞳に大きな丸眼鏡。

顔は少年らしい丸みのあるラインから、少しシャープな感じに変わっていた。


・・・確かにランスね・・・みんな疑問に思わないのかしら・・・



「なるほど、アリステアお嬢様は周りに成長期の方がいないのですな」

「成長期・・・」

「ランスは10歳の洗礼式を迎えましたので、成長期に入ったのです」


「10歳から成長期なんですか?」

「はい。成長期というのは、10歳の洗礼式から13歳までの間のことを言います。13歳になるころには成人と変わらない姿となります」


へ?3年で小学生から高校生に一気になるの?!

あれ?でもたしかマルティネス殿下やイーディスさま、サフィールさまは10歳以上だったけど、そんなにとびぬけた身長に感じなかったような?


「10歳の洗礼式で体内の魔素が安定することで身体の成長が加速します。体内の魔素保有量や体質によって成長のスピードに個人差はありますが、13歳までに身体の変化が終わります。アリステアお嬢様は貴族ですので、魔素と身体の成長に合わせた知識と力の制御のために学園へ通われるのです」


なんと・・・個人差があるとは言え、みんな急成長するのね・・・『前の私』の感覚でいたけど、やっぱり似て非なるものなのね。

学園の必要性も納得できる。


「貴族は学園がありますが、平民はどうやって知識や力の制御を身に着けるのですか?」

「平民専用の学校があります。ですが、平民でも学校に通うためには多額な費用が必要な為、通える者は限られています」

「でも、制御ができないなんて大変じゃないですか」


大変なんてものじゃない、力の暴走や治安の低下なんかにもつながってしまうかも。


「ご心配には及びませんよ。そもそも平民で力の制御できないほどのランクの人間はほとんどいません。もし平民でランクが高い人間がいたとしても、多くの場合は将来性をかわれて貴族の援助が受けられるので、困ることはありません。ランスのようにね」


「え?」


「三大公爵家公認のアリステアお嬢様が専属にしてくださったので、学費は免除となります」

「はい・・・お嬢様には本当に感謝しています」


・・・知らなかった。さすが公爵家。

良い意味で作用したからよかったけど、本当に権力の使いどころって難しいね・・・人の人生を簡単に変えてしまう。


・・・・・・・うん。やっぱり将来は、権力なんて危険なものとはしっかり距離をとろう。





「アリステアお嬢様、今回のご希望は印章と封蠟のご注文ですね」


「まず、印章を何種類お作りいたしますか?」

「いくつ?1つでいいかと思っていたのだけど・・・複数用意した方がいいの、ランス?」


「そうですね、2種類はご用意されたほうがいいかもしれませんね。1つは公式で使われる一般用、2つ目は緊急や重要用で1つ目の上位に当たるものですね」


うーん・・・ユリウス宛の手紙用で欲しかったけど、考えてみたら手紙書く機会って意外とあるのかも。


「そうですね・・・3種類欲しいですね」

「3種類ですか?」

「1つは公式用、2つ目は公式の上位種、3つ目は・・・秘密の連絡用?」

「え、え?!ひ、秘密の連絡用・・・ですか」


ん?なんでランスが赤くなるの?


「ははは!そうですな!それは必要ですぞ。いやはや、お嬢様の成長は早いのかもしれませんな!ランス、3種類とはありがたいではないか」

「はい・・・」


ユリウスとの手紙を他になんて表現したらいいかわからなかったので、秘密って言ってまったけどなんか勘違いされたみたい・・・まぁいいか。

なんかランスが今度は複雑そうな顔をしてる・・・どうしたんだろう?忙しいのかな?


「ランス、3種類を一度に頼むのは大変ですか?」

「いえ!問題ございません!ただ・・・その、秘密の連絡をする・・・お相手がいらっしゃるのでしょうか・・・」

「いますね」


「・・・っ」


なんかショックを受けたようにランスがだまってしまった。

ユリウスってグレイシャー家だから、あんまり外部に関わりを漏れないほうがいいからユリウスの名前は出せないし・・・と言うか


「ランスにも出したいのですが、ダメですか?」

「ぼ、僕、いえ、私にですか?」

「ええ。私は気にしませんが、貴族から私的な手紙が届くのはあまり一般的ではないですよね?」

「し、私的な手紙・・・確かに、そうですね。私に・・・嬉しいです」


うむ。青年の姿になっても、赤くなった姿は可愛いね。

ランスなら、文字や文章の練習相手に丁度いいから助かるので、是非文通相手になっていただきたいので、拒否されなくてよかった。


「で、では、デザインですが、何かご希望はございますか?」

「えっと、2つは公式なものはだから、ライオンかな。やっぱり」


「ではライオンをメインとしたシンプルなデザインと、上位種と分かるように少し凝ったのライオンのデザインをいくつか考えてみます。ライオン単体ではなく、ほかのデザインを組み込むこともできますが、他に好きなデザインがございますか?」


「そうですね・・・太陽とか星、光をイメージするような感じ?」

「太陽や月、星、光・・・やはり力強いかんじですね」


力強い感じが好きと言うか、ディルタニア家の色からイメージで連想しただけなんだけどね。


「では3つ目はいかがしましょうか?」

「他の2つとは違うイメージの方がいいかな・・・桜がいいですね」

「サクラ・・・とはなんでしょう?」


あ、そうか・・・桜ってこっちの世界にないのか。


「リナ、ペンと紙を持ってきてくれる?」

「はい、承知いたしました」



「えっと・・・こんな感じの木に咲くお花なんですけど・・・どうかな?」

「なるほど・・・はじめて見ましたが、可愛らしい花ですね。良いデザインだとおもいます。他との差別化ができますし」


ペンで桜の絵をいくつか描いてみた。

リアルな感じと、デザイン的に描いたものとか。

この世界で絵を描いてなかったので、ちゃんと描けるのか心配だったけど、ランスの反応からして変な出来ではなかったみたいね。


「では、次に封蠟の色ですが、金色、銀色、緑色でよろしいでしょうか?」

「やっぱり家の色を使うのが一般的ですか?」

「貴族の方は家の色がご自分の色であることが多いのですが、公式では家の色を使われる方が一般的ですね。平民の場合は、黄色や茶色が一般的で、色も持ちの人は自分の色を使います」


「そう・・・それなら、その3色と・・・黄色を用意をしてくれるかしら秘密用に」

「っ・・・はぃ」


「では、デザイン画ができましたら、ご連絡いたします。他に何か必要なものはありませんか?」

「あ」


そうだ。黒水晶のピアスのお礼でユリウスに何か贈りたいのよね・・・何がいいかな・・・ユリウスがランスのことを気にしていたから、ランスに作ってもらったものの方がいいよね・・・


「何かございますか?」

「う~ん・・・実はお礼で何か贈りたいのだけど・・・いいものが思いつかなくて」

「どんな方ですか?」

「大人の男性で、魔法好きの研究者ですね」

「お、大人の男性・・・ですか?」

「ええ。講師の方なんです」

「あ、そうですか!講師の方なんですね!」


・・・なんかランスは体の成長だけじゃなくて心も変化してたりするのかな?

前に会った時より表情の変化が激しいような・・・思春期なのだろうか・・・


「魔法の研究者の方ですか・・・難しいですね・・・きっと既製品ではご満足いただけない気がしますね・・・」

「そうなのよね・・・」


「あまり難しく考えなくても良いと思いますよ。研究者というのは、職人と同じく私生活がおろそかになる傾向がありますから。生活用品が案外喜ばれるものです」

「そうれは盲点でした、グリームさん!・・・生活用品・・・」


私も集中すると色々おろそかになるタイプだからなぁ。ゲームや本に集中するときに活躍していた生活用品・・・


「魔法ビン・・・保温保冷コップとか?」


「マホウビン、ホオオンコップとは何でしょう?」


「えっと、すでにあるのかもしれないけど、温かい飲み物は温かく、冷たい飲み物は冷たく保つコップがあったらいいなって・・・」

「温かい飲み物は温かく、冷たい飲み物は冷たく保つコップ・・・それは、すごく良いアイディアですね!!」

「え」

「保温機能を組み込んだポットなどの大きなものはありますが、小さなコップやカップに魔法を組み込んだものはないので!小型化ならすぐに作成できると思います」

「そうなの?すごいわ!」

「はい。小型化は今色々と検証をしていたので・・・デザインはシンプルなもので良いでしょうか?」

「ええ!きっとシンプルなものが好きだと思います」


服装や性格からして、キラキラゴテゴテの装飾は好きではないような気がする。


「では、そちらのデザインも出来上がりましたら合わせてご連絡いたしますね」


「色々注文してしまってごめんね」

「いえ!専属として注文をいただけるのは嬉しいですし・・・アリステアお嬢様の発想やデザインは独創的で・・・とても楽しいのです」

「そう?それなら良かった」



課題だった、ランスへの依頼達成だね!

今後もお礼とか、何か贈り物をする時はランスにお願いしよう!!

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