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25.お茶会②

会場は立食用の大きな丸テーブルが4つと、少し離れた場所に全員が着席できるような長テーブルが1つ。

丸テーブルは入り口から見てひし形のように配置されていた。


王妃と思われる人を先頭に、黒色の王族たちが入り口から一番奥に置かれた丸テーブルのある方へ進んでいく。



朝の準備中にルーリーとリナが教えてくれたことを思い出す。


「今回のお茶会は顔合わせが目的だから、きっと立食形式よね」

「いいえ。違うはずよ。まずは立食形式で挨拶をして、次に着席形式で昼食、さらに昼食後にお茶と軽食になるはずよ。だからリナ、お嬢様の口に朝食をそんな入れてはだめよ」


「え、でも例年のお茶会は立食形式だけだよね?」

「奥様が今回は特別って言っていたのを忘れたのリナ?第2、第3王子の2人分の顔合わせよ。1日がかりになるつもりでいないと」

「あ、そうだった。お嬢様~、朝食はこのジュースを飲んだら終わりにしますよ~。コップ持てますか?」


・・・お茶会っていうか、食事会の方がしっくりくるような?


ぼんやりしながらコップを受け取り、思っていたより拘束時間が長そうなことが分かって、げんなりした。




まずは丸テーブルで挨拶・・・ルーリーとリナが話していた通りだね。


王族たちが進むのに合わせて、他の参加者も丸テーブルに移動する。

左はトゥルクエル家、真ん中にグレイシャー家、そして私たちディルタニア家は右のテーブルに並んだ。



「皆、エアルドラゴニア国王妃スターシャ・シルキ=エアルドラゴニアのお茶会に来てくれて感謝するわ」


やはり、先頭を歩いていた女性が王妃だった。

黒色の豪華なドレスは金銀色の刺繍が施され、七色の輝きを放つダイヤの装飾品を身についていた。

そして王妃の髪色は赤、瞳も血のような濃い赤だった。



王族の色は黒だから、てっきり喪服みたいなイメージをしていたけど、全然違ったね。

むしろすごく豪華で華やか。結婚式とかで着る黒の留袖みたい。


それに・・・王妃さまって、トゥルクエル家出身だったんだね。

王族に姫は生まれない。

現王妃は、トゥルクエル家。そして後継者とされている第1王子の婚約者はグレイシャー家・・・・


あれ?・・・・そうすると、もし順当に考えると、次ってディルタニア家だったり・・・・・

うぐっ・・・ダメダメダメ!!今それ考えると、何かのフラグが立ちそう!



「私の子、この国の王子達を紹介するわ」


王妃の声に合わせて、1人が一歩前に出た。


「エアルドラゴニア王国、第2王子のマルティネス・カール=エアルドラゴニアだ」


服装は王妃と同じく黒色に豪華な刺繍。

まっすぐストレート黒髪はつややかで腰のあたりまで長く、黒色の瞳で整った顔立ちをしていた。



あの人が第2王子マルティネス殿下・・・やっぱり王族は見目麗しい。

でも・・・なんて言っていんだろう。なんかすっごく、違和感を感じる。


人形みたい・・・


動いてしゃべっているんだから、人形のはずがないんだけど、口以外の表情が動いていないし、目が・・・真っ黒。

単純に色が黒っていうより、光を感じない。

声の抑揚がないし、王族だから表情を変えない教育されているとしても、あの目は意図してできるものなんだろうか。


ゾクッ・・・


鳥肌が・・・なんか怖い。


思わず、目線を下げて王子を直視するのを避けた。


だから、王子の真っ黒な瞳が動いて、私を見たことに気付けなかった。




「僕はエアルドラゴニア王国、第3王子、ヨルムド・ホワト=エアルドラゴニアだ」


もう一人の王子の声が聞こえたので、目線を声のする方へ向けた。



第3王子ヨルムド殿下の衣装はマルティネス殿下と同じ黒色で豪華なデザイン。

短かい髪はでフワフワで、瞳は垂れ目。色はもちろん両方ともに黒色。

その瞳はマルティネス殿下とは違い、生き物らしい光を持ち、口元は笑みを浮かべている。


・・・ヨルムド殿下はちゃんと人間っぽいけど・・・なんだかイヤな感じ。


口元の笑みは、優しいあたたかなものではなく、人を見下すように片端を上げたもので、瞳も冷たく細められていた。


マルティネス殿下よりは生き物っぽいけど、別の意味で避けたい感じ。

両方殿下とも、婚約者云々の前に、人としてお近づきになりたくないタイプの人ね。



「皆のことも教えてくれるかしら?」


王妃が優雅に微笑みながら、トゥルクエル家の方へ目線を向けた。



「はい、王妃様。両殿下にはお初にお目にかかります。私はトゥルクエル家当主の妻、ステンシー・サルク=トゥルクエルです」


ショッキングピンクの公爵夫人は堂々とした声で挨拶し、美しいカーテシーをした。

豪快な雰囲気を持っているが、動きは指先まで意識が行き届いた繊細ものだった。



「王妃様、両殿下、お初にお目にかかります。トゥルクエル家次男、サフィール・トルート=トゥルクエルです」


ステンシー夫人がスッと姿勢を正すのに合わせて、隣に立っていた男の子が名乗った。


赤い髪にピンク色の瞳。

服装はステンシー夫人と同じく赤色のデザインで、目に痛い感じの色味だが、雰囲気はとても静かな感じだった。


ルーファが言っていた通りの人っぽいね。

・・・サフィールさまが王子の方がこの国にとって良さそうな気がする。あの不気味な王子達より。



「お、王妃様、両殿下、お初にお目にかかります。トゥルクエル家次女、レティシア・サンク=トゥルクエルでし」


緊張しているのか、声もカーテシーもぷるぷる震えて、最後に噛んだ。

レオナ兄さまが、キラキラした目でレティシア様を見つめている。


・・・次会った時、絶対からかうんだろうな。可哀想レティシアさま。



「おうひさま、りょうでんか、おはつにおめにかかります。トゥルクエルけ、3じょ、リリアン・ミラ=トゥルクエルです!」


元気いっぱいの声に、ぎこちないけどカーテシーを無事にできたことが嬉しかったのか、ニコニコだ。


ピンクの髪にウサギの様な赤い瞳・・・やっぱり、洋服店で会った子だ。



トゥルクエル家の全員が名乗り終わると、王妃が視線を動かし、グレイシャー家の方を見つめる。



「王妃様・・・両殿下にはお初にお目にかかります。私はグレイシャー家当主の妻、マドラム・クインシー=グレイシャーです・・・」


水の精霊のような公爵夫人は、さらりとカーテシーをした。

涼やかな声・・・というか、一応挨拶はしましたって感じの声だ。

この感じがマドラム夫人の平常運転なのかしら。

お母さまに対してもイヤな感じだったし。



「王妃様、両殿下、お初にお目にかかりますわ!グレイシャー家次女、イーディス・ドラム=グレイシャーよ!」


・・・うわぁぁ・・・悪役令嬢っぽいぃぃぃ


謎の強気に、隠そうともしない傲慢な態度!雑なカーテシーに、人を蔑んで小馬鹿にするような笑み。



・・・私、前はあんな感じだったのかな・・・

分かりやすく関わったら危ないタイプね。


もし私が『アリステア』のままだったら、仲良くなって取り巻きになっていたか、犬猿の仲になってたかもしれないわね。

どっちにしろ、世に言う『ざまぁ』対象よね。国外追放か、処刑か・・・怖すぎる。


私の目指すのんびり生活を脅かす存在。

ユリウスが言っていたように、本当にヤバそう。絶対回避対象ね!


それにしても・・・

水色の髪と瞳はきれいだけど、随分と薄い色ね・・・

『鮮やかな色が、同じ色でも上位になる』ってユリウスが言っていたよね。


となると、チート能力系悪役令嬢じゃなくて、能力が低くて八つ当たりするタイプの悪役令嬢とか?

でも、あんなに堂々としてるってことを考えると、私の知らない力があるかも知れないわね。

色が上位じゃなくても、能力が低いとは限らないし・・・まぁ、どちらにしろ回避は変わらないけどさ。



「お・・・おう、王妃様、りょう・・・両殿下、お初に・・・お目にかかります。トゥルクエル家長男の、テオドール・ミット=グレイシャーで・・・す」


可哀想なくらい震えてる。

ギリギリ聞き取れたとけど、立ち位置的に王族の方が遠いけど聞こえたかしら?


極度の人見知りって、ユリウスから聞いていたけど・・・このお茶会から全力で逃げたいオーラが出てる。

親近感を感じるには感じるけど、仲良くするのは無理そうね。する気もないけど。



グレイシャー家の挨拶が終わると、王妃がついにディルタニア家の方を見る。



「王妃様にご挨拶させていただきます。両殿下にはお初にお目にかかります。ディルタニア家当主の妻、ステラ・スルス=ディルタニアです」


陽光を受けたお母さまは、全身キラキラだし、これぞ見本のカーテシーという完璧な姿だった。

一瞬また光が漏れてしまったのかと思ったけけど、光を出さなくてもお母さまの女神っぷりは本物だ。



「王妃様、両殿下、お初にお目にかかります。ディルタニア家次男、レオナ・サバルカ=ディルタニアです」


レオナ兄さまもキラキラしてる。お兄さまの場合、笑顔もキラキラ・・・純粋無垢な天使ね。

あ、レティシアさまがチラチラとレオナ兄さまを見てる。可愛いね。



・・・さて、わたしの番ね。


「王妃様、両殿下、お初にお目にかかります。ディルタニア家次女、アリステア・ルーン=ディルタニアです」


『基本マナー』の授業をフル活用してマナーを叩き込まれた。

ミカム夫人・・・怖かったな。


スッと姿勢を正すと、こっそり息を吐いた。


やり切ったわ。

後はのらりくらりとかわすだけ!がんばるぞー!



「そう。あなたがアリステア嬢なのね。会えて嬉しいわ。とってもね・・・」


ひっ・・・


声のした方をみると、意味ありげに微笑む王妃の赤い瞳と目が合った。


目が、目が合ってしまった・・・私、ちゃんと回避・・・できるよね?


頑張ろうと思った矢先、泣きたい気持ちになった。


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