20.婚約者は誰
お茶会用のドレスを依頼して屋敷に帰ってくると、さっそくレオナ兄さまの部屋へ突撃した。
レオナ兄さまの部屋で一緒に休憩をしたいと馬車の中でお願いしておいたのだ。
「レオナ兄さま、疲れているところごめんなさい」
「ううん!アリステアから僕とお話ししたいって言ってくれて嬉しいよ」
キラキラ笑顔のレオナ兄さまが部屋に入れてくれた。
レオナ兄さまの部屋は、私の部屋と構造が似ていて、座るように案内されてた場所は、レオナ兄さま専用の応接室だった。
レオナ兄さまの執事、クリークが私に優しい香りがするお茶を用意してくれた。レオナ兄さまにはいつもの甘いミルクティ。
「ふふん♪アリステアは僕の婚約者について知りたいんでしょ?」
「え!どうしてわかったの?」
「それはもちろん、僕がアリステアのお兄さまだからさ!」
・・・えっと、そういうことではなく・・・って言いたいけど、ここは合わせた方がいいわよね。
「さ、さすがお兄さま!」
「ふふ~ん♪でしょう?」
「婚約者のことを教えてください!」
「もー、今度会わせてあげるっていったのに、待ちきれなくなっちゃったんだね~。でもわかるよ!アリステアももうすぐ7歳だもんね。気になるよね!」
「え、な、7歳?」
「ん?もしかして、7歳になるのも待てないの?」
「え?そういう意味じゃなくて、婚約者と7歳の関係がわからなくて」
「7歳になったら婚約者を決められるでしょ?」
「そ、そうなの?!」
7歳になったら婚約者を決められるですって?!
もうすぐ?あ!!!アリステアの誕生日って来月じゃない!!!
「レオナ兄さま!決められるってことは、決めなくてもいいのですよね?!」
「そうだけど?婚約者決められるの嫌なの?」
「うぐっ・・・」
「えぇ?どうしてそんな嫌そうな顔してるの?婚約者がいると、とぉってもいいことがあるんだよ!」
「どんな?!」
「まず、僕の婚約者のレティはとってもかわいい」
「え」
「レティは顔がかわいいだけじゃないんだよ!笑顔もかわいいんだ!照れた顔も、怒った顔も!」
「え、えーっと」
「ちょっとからかうと、赤くなって怒って追いかけてきてさ~、ぎゅっとして捕まえると、プンプン怒りながらぎゅっと抱きしめかえしてくれるんだ~。ほんとかわいい!!」
「・・・・・・」
「僕のこと好き?って聞くと、「嫌い」って言うんだけど、僕はすごく好きなのにって言いながら悲しそうな顔をすると、すっごい慌てて「本気言ったんじゃない」って言ってくれるんだぁ~。可愛いよね~。僕のレティ」
「・・・・・・」
レオナお兄さまって、好きな子いじめちゃうタイプなんだ。
会ったことないけどレティさんとやら、同情するわ。
そしてレティさんはツンデレっぽいね。ある意味相性はいいのかも・・・
「レティは真っ赤な髪で、淡い黄色の瞳をしてるんだぁ。お花みたいだねって言ったらレティは・・・」
「え?真っ赤な髪?」
「何度思い出してもあの時のレティは・・・ん?そうだよ!赤いバラみたいな濃い色で~」
「赤・・・トゥルクェル家?」
「涙が溜まると瞳がキラキラしてさ~。え?うん。トゥルクェル家だよ。レティシア・サンク=トゥルクェル」
涙・・・って、そこじゃない!トゥルクェル家ってお店で会った、ピンクの髪の女の子もだよね?
「トゥルクェル家がどうかしたの?」
「あ、ううん・・・」
公爵家なんだから接点が今後あるとは思っていたけど、なんか、いや~な感じで関係が出て来てない?
「レティさんって、兄弟姉妹はいるの?」
「いるよ。お兄さん2人と、お姉さんと妹。一番上のお兄さんはイデュール兄さまと一緒に近衛騎士として働いてるって聞いたよ。他の兄姉妹のことはわかんないんだよね。たしか2番目のお兄さんと、お姉さんは僕とアリステアと歳は近いはずだけど、会ったことないんだよね」
はい、きたー。危険フラグ。
年齢が近いなら、ほぼ確実に学園で遭遇していまう。学園と言う戦場で・・・なんてこった。
「あ、そっかぁ・・・ルドリーは平民だもんね・・・僕、自分のことばっかり・・・」
ん?レオナ兄さまが急にしょんぼりした。
「レオナ兄さま?」
「僕たちは公爵家だもんね・・・僕の婚約者も公爵家。イデュール兄さまの婚約者はまだ決まってないけど、いつも候補は高位の貴族って言ってたし。サラ姉さまは隣国の王子様って言ってたし・・・平民はやっぱり難しいと思うんだよね」
ちょ、ちょっとまって!!情報が多い!!いきなり婚約者情報が大量に!
イデュール兄さま、婚約者は決まってないけど、候補は常にいるってこと?どういうこと?
戦場に行くことが多いサラ姉さまは隣国の王子さまと婚約してたー!!!
・・・あれ?
イディール兄さまはなんか危なっかしい感じだけど、サラ姉さまはしっかり隣国とのつながりになってるし、レオナ兄さまは同列の公爵家とのつながりに・・・
もしかして、のんびり暮らす計画にとって、かなり良い状況なのでは?
「ルドリー、あんな素敵な肩掛けをアリステアに贈ったんだもんね・・・きっと、とっても好きってことだよね。こういうの知ってるよ、僕。身分差の恋って言うんだ。アリステアにも僕とレティみたいに幸せになってほしい・・・」
ん?
「僕、アリステアを応援するよ!!」
「え、レオナ兄さま?」
「確か、駆け落ちって方法があるんだよね。僕、劇で見たもん。でも、たくさん大変なことあるみたいだから、僕たち子どもじゃ難しいかも・・・」
「レオナ兄さま?」
「だとしたら、大人になるまで他の人との婚約は回避しなきゃだね!!」
「んん?違わないけど、違うよ!!」
「他に何か作戦があるの?」
「え、それはまだ・・・」
「それならまずは、婚約者が決まらない様にするのは大事じゃないの?」
「大事・・・なんだけど相手は・・・」
「安心して!ルドリーのことは僕とアリステアの秘密だよね!婚約回避、協力するね!!」
「・・・・・・・・・うん」
相手はルドリーではないのだけど・・・
理想の相手がいるとしたら、モブっぽい平民さんなのだよ。
ルドリーは確かに平民だけど、どう考えてもあの美人度はモブっぽくないので対象外だ。
でも、レオナ兄さまの提案はありがたい。
成人前の婚約回避を協力してくれるならいいんじゃないかな・・・一応秘密ってことだし
・・・決してレオナ兄さまの誤解を解くのが面倒になったわけじゃない。
うん。
とりあえず、成人前の婚約は絶対回避だ!!