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1.その時

全身に強い衝撃を感じた後は、何も感じなくなった。

誰かの悲鳴と、事故だと言う声が聞こえた。

霞んでいく視界には固いコンクリートの地面と白いスポーツカー、赤い血溜まりが見えたが、それもすぐに全て真っ暗になった。


何も感じない。

死というものがどんなものなのかと考えた事はあったけれど、痛みがないのは幸いだ。

もっと恐怖とか、苦痛に何時間も耐えて迎えるのかと思っていたが、私の場合はそうではないようだ。

意識もなんだかぼんやりする。

ゆっくりと暗闇に溶けていくような気はした。


私はたぶん、幸せだったんだと思う。

仲の良い両親、弟、少ないけど友人もいた。

大学にも行き、就職して、好きなゲームやイベントにマンガ、小説を楽しんで生きてきた。

強いて言うなら、人生の目的や目標がなかった。

色んな事に興味を持つけど、すぐに飽きてしまう性格。

子どもの時にひどいイジメにあって、人間不審になってから人間関係を築くのも苦手だった。

それでも、衣食住は確保出来て、家族がいた。

生きていける環境があったのだから、幸せだったのだろう。たとえ、自分自身に興味がなくて、生きている意味が分からなくても。


未練はない。家族には申し訳ないけど、事故だし。

私が不注意でって事なら自分自身の愚かさを嘆いたかもしれないが、しっかり青信号を確認してから歩いたのは覚えている。そうなったら、私には防ぎようのない出来事だったのだと諦めがつく。

痛みも苦しみもなく、未練もない。

願うとしたら、残された家族が私の死に縛られないで欲しいという事だけだ…


「走馬灯…もないのね」

昔の事を思い出せば走馬灯や、三途の河みたいなお決まりの展開になるかと思ったけれども、それもない。

じわじわと暗闇に侵食されていくだけ。


眠る時に似ているかも…そこで意識が途絶えた。

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