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15.お勉強①

今日は第1回目の『基礎文字と言語』授業の日。

文字が読めない事には、他の授業もままならないのだから、最優先に身に着ける知識だよね。


しかし・・・この世界でまだ時間の感覚に慣れないのよね。


1日21時間。

光、火、水、木、金、土、闇の7つの属性が朝昼晩と1回ずつ回って1日。


大体の生活は、朝の7時間は、光で起きて、火で食事、水休憩、木散歩、金休憩、土食事、闇休憩。


昼の7時間で光散歩(授業)、火休憩、水散歩(授業)、木休憩、金夕食、土休憩、闇就寝準備。


夜の7時間は睡眠時間。


基本的には、1つの属性を1刻として、1刻区切りに行動しているようだ。

その感覚で行動すると、1刻散歩(授業)して、1刻休憩をする。


・・・そう、社畜生活が長かった私は、ホワイトなゆっくり感覚にもどかしさを感じてしまっている。

勉強の時間は、昼の時間の光の時間、休憩挟んで、水の時間の2刻のみ。


そう。1日に2時間くらいだ。まぁ、その分、1日丸っとお休みもなくなったのだけど・・・

このペースで成人までに知識が身に着くのだろうか、と心配にもなる。


でも、このホワイトな感覚に慣れなければ!

ゆっくり、のんびり暮らしたいのなら、私の感覚改革もしなきゃね!



「お嬢様、食事が止まっておりますが、いかがいたしましたか?」

「え?ううん。なんでもないわ。ルーリー」


今は朝の土の食事の時間、つまり昼食中。

闇の時間の休憩を挟んで、昼の光の時間からルーファの『基礎文字と言語』だ。


きっと、楽しみだからもどかしいのよね。

『前の私』が学生の時は昼食後の授業は眠気との闘いだったから、先にしっかり昼寝をしておこう!



==================



「ルーファ先生、今日からよろしくお願いします」

「ふふっ。ええ、よろしくお願いします。アリステアお嬢様」


今日もモノクルのイケメン笑顔は眼福です。

軽い気持ちで「先生」を付けて呼んでみたら、素敵な笑顔が返ってきて満足。



私の部屋と続きになっている、私専用の書斎で勉強することになった。

一応、別の部屋に応接室もあるのだけど、緊急の来客などを考慮して書斎になった。


改めて自分に与えられている区画の大きさに引く。

専用の書斎に応接室・・・私室、寝室、洗面所などがあるのだもの。


しかも家具などの生活用品は一つ一つが細かな装飾が施されている。

絶対高額品。子供の身体ではうっかり触って壊してしまうのではないかという恐怖から安易に触れない。


そういえば・・・今日のルーファはちょっとおめかしスタイルなのだろうか。

はじめて書庫で会ったときは、茶色のローブのさっぱりした服だったが、今は深い緑色に金色の刺繍のジャケットスタイル。

白いシャツにベージュのパンツ。


ローブでわからなかったが、ルーファって足長い。スタイルがいい。

司書ってあんまり運動と縁がなさそうなのに、身体引き締まってる。


「いかがいたしましたか?アリステアお嬢様」

コテンッと首をかしげる姿はやはり攻撃力が高い。


「っつ・・・い、いいえ」

「ふふっ、いつものローブ姿ではお嬢様にお教えするにはラフすぎますからね。似合いますか?」

「お、お似合いです」

「お嬢様は今日も可愛らしいです」


色々見破られた上での確信犯でした。

今日、なんの授業でしたっけ。


授業中は基本部屋には二人っきりなので、ルーファも気楽なのだろう。


「では、失礼いたします」

「えっ」


サッと抱きかかえられると、書斎にある椅子に座らされる。


「はじめましょうか」

「は・・・はい」


昼寝したおかげで眠気はないが、別の意味で集中力が続くか心配だ。




==================



ルーファの授業はとても分かりやすかった。

ありがたいことに、日本語と同じ基本は50音で構成される文字で、文法も問題なかった。

状況によって、使用する特殊文字もあるようだが、それでも漢字や平仮名、カタカナの使い分けがない分、むしろ簡単だ。


「・・・国語のドラルグ語は近隣諸国随一難しいのですが・・・お嬢様は優秀ですね」


ルーファが真剣な顔をしてつぶやいた声にヒヤリとした。

うっかり『天才』なんて思われたくない。

変に期待されない様に気を付けよう。

『前の私』の知識リーチがあるだけで、天然の天才とは異なるのだから。



1刻の授業の後は、1刻の休憩。


ルーリーとリナがお茶とお茶菓子を用意してくれたので、そのまま書斎でルーファと休憩をする。

紅茶の香りと温かさに癒される。


「お嬢様は紅茶に砂糖は入れないのですね」

「え?ええ。はじめはストレートで香りと味を楽しんでから、2杯目から入れることがますね」

「・・・そうですか」


あれ?朝食や休憩の時にお母さまもそうだったし、変じゃないよね。


「私は甘い味が好みなので、砂糖とミルクをつい入れてしまうのです。紅茶の味は子供には苦く感じることが多いので、無理をされているのではないかと心配でしたが、杞憂でしたね」


ルーファは甘いものが好き。脳内にしっかりメモをしておかねば。

『前の私』は緑茶が好きだったし、紅茶はストレート、コーヒーもブラックを多く飲んでいたせいか、お茶菓子などの甘いものがあるときは砂糖などは入れない。


色々と他愛ない会話をしていたら、あっという間に1刻が過ぎ、授業を再開した。



今回は基本文字を覚えることと、一覧を見ながら短い文を読み、文字を書く練習で終わった。

宿題として、基本文字の練習と簡単な本の文字を書き写すものだった。


「では、明日の『算術』の授業で」

「はい!本日はありがとうございました」


これで自分で情報を得やすくなった喜びで私はニコニコだ。

ルーファも始終優しい笑顔だ。


「・・・お嬢様、ルーファ様。授業は順調だったようですね」

声がしたほうを見るとヒルデがいつの間にか書斎の扉の前に立っていた。


ヒルデが胡散臭いものを見るような変な顔をしてる。

ヒルデの視線の先にはルーファがいる。


「・・・ヒルデ。何か他に言いたいことでもあるのですか?」

「・・・いいえ・・・そういえばルーファ様も会話のマナーや人との交流方法を学ばれていたのだと、思い出しただけです」

「普段は書庫にいて、人と話す機会が少ないので忘れられてしまっても仕方ありませんね。思い出していただけてよかったです」


話が見えない。

ルーファは、はじめから会話が上手いと思うし、むしろ相手を喜ばせるマナーもあると思う。


「お嬢様、では、私はこれで」

「はい!」


ルーファはヒルデとの会話を切り上げて書斎を出て行った。


「お嬢様、何か問題はございませんでしたか?」

ヒルデが真剣な表情で聞いてきた。


「いいえ?何も。今日は・・・」


ヒルデの真剣な表情の原因が不明だったので、今日の授業内容を伝えると、安心した表情に変わった。


「随分と進んだのですね。本当に順調で安心しました」


んー・・・これは、勉強なのにルーファと私が笑顔だったから、まじめにやっていないと思われたのかな?

安心してくれたならよかった。


この調子で勉強頑張るぞ!のんびり暮らすために!!



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