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100.『前の世界』と『今の世界』

魔法をかけたのはローキなのに、なんで逃げるのさ。




ローキが何やら呪文を唱えると、私の足元に魔法陣が展開された。

どんな魔法なのか、怖さ半分、興味半分で、自分に起きるであろう変化を待った。




――――うっ!まぶし!!



自分の変化を観察しようと目をしっかり開いていたせいで、魔法陣が放った強烈な光を受けて反射的に目をつぶってしまった。



うー・・・目がシパシパする。



――――ガタンッ




椅子が倒れる音がしてたので、目をこすりながら開けると、ローキが書斎の奥の壁に張り付いていた。




書斎は狭い部屋ではあるけれど、1歩で壁際まで行けるほど狭くはない。

およそ5メートルほどある距離を、私が目を閉じて開くまでの一瞬の間で移動したのだろうか。


移動のスピードにも驚いたが、それ以上に、壁のせいでこれ以上逃げられなかった・・・というような姿勢と恐怖にも似た表情をしたローキの姿に驚いた。



椅子を倒して音を出すなんて、普段のローキならまずしない。


それほど必死に・・・私から逃げた、のよね・・・この状況。



ひどくないかい?




貴重な魔法体験の瞬間を見逃してしまって残念だが、ローキが逃げたくなるような変化が私に起きているのだろう。



まず、気が付いたのは座高の高さ。

明らかに視線が高くなっている。


身体を見下ろすと、大人の女性っぽい体形になっていた。

手足は伸び、手も大きくなっている。


動かしてみれば、子どもの姿で感じていた動きづらさがない。



そして胸にはしっかりと大きめの膨らみがあった。


くびれや胸の大きさ、お尻で感じる椅子の感触から、どうやらスタイルはかなり良さそうだ。

長い金髪は腰まで長さがある。


『前の世界』の私の姿になっているかもしれない・・・と思ったけれど、金髪でこのスタイルということは、アリステアのままのようだ。



こんなに急成長したのだから、服装が・・・なんてことは、この魔法には不要な心配だった。



淡い水色のワンピースドレスのデザインはそのままに、身体に合うようにサイズが変化していた。

サイズの変化は良かったけれど、デザインは子ども向きの可愛らしい感じのフリルやらリボンがついているので、結局残念な感じになっているような気がする。



ローキの反応からして、服が似合ってなくてドン引きされてる・・・って感じでもないよね。


もしかして・・・顔だけ『前の世界』になっているなんてことになっていたら・・・恐怖に慄くのもわかるかも。


い、いやだ!!私もそんな姿、自分でも見たくない!

ローキの反応からして、その可能性がある!


だとしたら一刻も早くアリステアにもどしてもらわなくては!!




自分の姿を見たくても、この書斎には鏡がないので、余計恐怖が増した。

ここはローキに聞くしかないけれど、5メートル離れてると、大きな声を出さなくてはいけない。


事前に音漏れ防止の魔法を使ってくれていればいいけど、それを確認するにもローキに聞くしかない。




よっ・・・と・・・とっと


立ち上がると少しふらついたが、踏ん張った。

動きやすいけれど、久しぶりの感覚のせいか、ちょっとグラグラする。


おぉ・・・160㎝はあるね。


『前の世界』では155㎝の身長だったが、それよりも確実に視線が高く、厚底ブーツを履いたときに似ていた。


ローキを見ると、相変わらず壁に張り付いたまま。



いつもなら、少しふらついただけでもすぐに駆け寄ってきて抱きかかえてくれるのに・・・寂しい。

いやいや、それで寂しくなるって、どんなけ甘やかされてたんだろ。



動かないローキに1歩近づくと、ローキはびくりと反応した。



・・・どんな奇妙な姿になれば、こんな反応されるようになるのよ!

やっぱり『前の世界』の私の顔、THE日本人顔に金髪は似合わないからなの?!



変な汗が出てきた。




ローキの目の前まで来れば、目が合うかと思ったが、顔だけ思いっきり避けられた。



なんなのよ!!せめてなんか言って!!



――――――パンッ



全力で拒否をするローキの顔を勢いよく両手で挟んで、目が合うように顔の向きをこちらに向ける。


私の行動が予想外だったのか、別の意味で驚いた表情になったローキはあっさりこちらを向いた。



「鏡がないから私は自分の姿が見えないの!感想くらい言ってくれる?それに身体が大きくなったんだから、私の話したこと信じてくれた?」



「っ・・・し、信じるから離れろ」


ローキは真っ赤な顔で私の手から逃れようと、顔を振るが、身体が大きくなった私はこれくらいの動作では逃さない。




「感想は?今の私・・・そんなに気持ち悪い感じになってる?」


「は?」


「ま、前の・・・異世界での私の顔になっていたりするの?見たことない感じの・・・茶色がかった細くて小さい黒瞳で、鼻が低くて・・・気持ち悪い?」


「違う!!」



覚悟して確認したのに、ローキは勢いよく否定した。


そうか・・・よかったぁ。

私が考えた一番恐ろしい姿ではなかったようだ。



「っ・・・そんな顔するな!!」



恐怖から解放されて安心して、表情を緩めただけなのになぜか怒られて・・・抱きしめられた。




・・・・ん?



どういう状況?




私の身体は大きくなっとはいえ、180㎝くらいまで成長しているローキの身体にすっぽりとおさまっている。

最近よく抱っこされていたせいか、なんとも居心地がいい。



あ、ローキの匂いだ。


専属護衛のローキは香水はもちろん、体臭にも気をつかっているらしく、普段は無臭だけど、抱っこされると、わずかに薬草のような香りがするのに気が付いた。


私は自然を感じるこの匂いが好きで、抱っこされるたびにこっそり匂いを楽しんでした。

いつものように、目の前にあるローキの首筋に頭を寄せると、私を抱くローキの腕の力が強くなった。



うぐっ・・・くるしぃ・・・



いつもはふんわりと抱っこされているのであまり意識することはなかったけれど、鍛えているだけあって、腕の筋肉がしっかり発達してらっしゃる。



私が苦しくて呼吸が荒くなると、ローキは顔を私の首筋に埋め、腕の力はさらに増した。


ローキの荒い呼吸と心音が密着してる身体の振動から伝わってくる。



ちょ・・・くるしい!!抱きしめ殺す気?!身動きが・・・取れない。




思いっきり避けられたと思ったら、今度はガッチリ捕獲。

なんなの?!この珍獣扱い!!



「ろ、ローキ苦し・・・ギブ・・・何か気に障ったのなら、謝る・・・から、離して」



何とか絞り出した声が聞こえたのか、ローキはばっと顔を上げて手を離すと、また私から距離をとった。

俯いているので表情は分からないけれど、ものすごく身構えている。



ほんと、なんなのさ。

本当に私の話、信じてくれたんだろうか?



謎の行動が分からなくて、ため息がでた。


気が付いたら100話に到達。進みが遅くてすみません。


読んでくださった皆さま、いつもありがとうございます。



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