表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

中編 犯人を見つけたら……、憑依!?

侍の後押しを得て、自分の推理を班長に伝える事ができた新人刑事・佐久間さくま武士たけし

果たして犯人は現れるのか!?


どうぞお楽しみください。

「ひぃ、ひぃ、つ、着いた……」

『うーむ、四半刻しはんときも駆けておらぬのにその体たらく、軟弱であるな』


 う、うるさいな……!

 そっちは飛んでるから楽でしょうとも……!

 僕は体育会系じゃないんだ……!


『む、あそこに何者かが居るな』

「え……? ど、どこですか?」

『夜目も効かぬのか。正面の広場の植え込みの影だ』

「えぇ……?」


 そう言われても……、あ!

 ライターの火が見えた!


彼奴きゃつめ! 火を放つ気であるな!? さぁ捕らえよ!』

「ま、待って! まずは班長に連絡を……!」

『火を付けられてからでは遅かろう! 下手人は一人! 恐れる事はあるまい!』

「無理無理! 無理だって!」


 急いで携帯を取り出して班長に連絡する!


「あ、班長!」

『どうした! 見つけたか!』

「はい! 染井さん宅前の公園の植え込みで、ライターを点けてます! おそらく棒の先に油のようなものを染み込ませた布を巻いた簡易な松明たいまつで火を付けるつもりかと!」

『わかった! 急行する! もし木に火をつけようとしたら制圧しろ!』


 えっ!?


『任せたぞ! すぐ向かう!』

「え、ちょ、班長!? 班長!」


 ……切れた。

 え、ど、どうしよう……!


『済んだか? では捕らえに行くぞ!』

「ちょ、待って待って待って!」

『何を躊躇う。火を付けられても逃げられてもお主の落ち度になるであろう』

「で、でも応援が来てからの方が確実で……」

『お主は孫子を読まぬのか? 巧遅こうち拙速せっそくかず。ほれ、もたもたしておるうちに、彼奴め松明に火を付けおったぞ』

「え……?」


 うわあああぁぁぁ! 何してんのもう!

 こ、これ、僕が捕まえないといけないやつ……?


『お主同心ならば、捕手とりて術の一つや二つ修めておろう? 刀も持たぬ輩など相手にもなるまい』

「い、一応習ってはいるけど、実際捕まえるってなると……」

『全くお主は……。知者かと思えば孫子を知らず、胆力があるかと思えば臆病で、よく分からぬ男よの。ならば一つ手本を見せてやろう』

「え、手本って……!?」


 さ、侍が身体に入ってくる!?

 か、身体が勝手に動く!


「我が名は宮木みやき武次郎たけじろう! そこな火付け! 手向かいするとためにならんぞ! 神妙にばくにつけ!」


 何叫んでるんだよ侍さん!

 あぁ! 相手が松明持って立ち上がっちゃったよ!


「ぼ、僕の邪魔をするなあああぁぁぁ!」


 わぁ! 松明持って襲いかかってくるぅ!


「全く、あのような腰の入っていない者の振るう武器など、たかが知れておるでは無いか」


 何落ち着いてるの!?


「良いか? まずは相手の握りを見て、そのまま斬りかかってくるのか、投げてくるのかを見極める。そして間合いに入り、投げが無いと分かったら」


 え!? 何で相手に突っ込むの!?


「攻防の起点となる手首を打つか捻るかして得物を奪い、そのまま後ろ手に取れば良い」

「いででででで! 離せ! 離せよぉ!」

「暴れるようならそのまま肩を外しても良い」

「ひ、ひい……」


 な、流れるような動きで、あっさり犯人を捕まえちゃった……。

 転がった松明を、お侍さんが足で踏み消した……。


「む? 何だ? まだ元服したばかりのようなわっぱ上がりでは無いか」


 あぁ、やっぱり予想通りだ。

 受験に失敗した学生だろうと思っていたけど、まだ中学生くらいかな。


「このような歳若の者が罰せられると思うと、いささか胸が痛むな……」


 ちょ、お侍さん!

 今の日本は法治国家なんだから、そんな気分で見逃したりしたら駄目だ!


「お主、腹を切れ」


 見逃してえええぇぇぇ!


「火付けははりつけの上、親類縁者までるいが及ぶ。ここで腹を切ればその潔さに免じて一人の罪として許されよう。さ、介錯は任せよ。刀はどこだ?」

「や、やだよ! 死にたくないよ! 助けて! 許して!」

「如何に歳若とはいえ見苦しいぞ。男なら散り際を汚すでない」

「いやだぁ! 助けてー! お父さーん! お母さーん!」


 も、もう代わってくださいお侍さん!

 後はこっちで何とかしますから!


「そうか。逃げられぬように足を折っておくか?」

「逃げない! 逃げないからやめてえええぇぇぇ!」


 完全に心を折られた犯人を前に、お侍さんが身体から抜けた。

 身体の自由が戻ったところで、班長達の車がやってきた。

 やれやれ、これで一件落着か……。

 すっかり大人しくなり、僕の方を怯えて見つめる犯人と共に、車は署に向かって走り出した……。

読了ありがとうございます。


侍の名前は巌流島の剣豪をミックスしてみました。

ちなみに「腹を切れ」は武次郎的には優しさです。

当時の火付けは重罪だからね。仕方ないね。


さて犯人の少年の動機とは?

後編は明日投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ