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第94話 利と損……

「この子達と話していて、見習いに限らず、既に成人している者でさえ学びが不足している、と気付かされました。ついでに言うのなら、学ぶことを自ら放棄する理由が下らない自尊心である愚か者がいることすら見えてきた…知らないことが、出来ないことが己の死のみならず、周囲にも迷惑を…果てには死を振り撒く可能性が高い職であるにも関わらず、です」


知っているから大丈夫。

出来るから大丈夫。

そう信じて、任せて…

対応出来なかったのなら、時と場合によっては確かに被害が甚大になることもあり得るだろう。


「見習い達を足掛かりに意識改革をと、こちら側の身勝手な理由も絡んでいます。申し訳ない」

「…頭をあげてください。それに関しては、どこにも損がなく、互いの利に叶っているのであれば問題ありません」

「…牧場に損はありませんが、子供達と比べると、こちら側の利が大きくなっているのではないかと」

「…そう、でしょうか……シア?」

「個人的な回答で宜しければ、私の利は十二分に御座います。損を被ったとは思いません」

「シア以外の子達は?」

「これ以上なく、楽しんでいるように見えます」

「では、何の問題もないということですね」

「むしろ、問題はここから、かと」


下げていた頭を上げ、ラルスさんが困惑を向ける。


「神父様。ギルドからの依頼内容に関しては関係者以外への開示が許されておりません。ですので、簡潔に要望だけを告げます」


神父様は既に苦い顔をしている。


「私達は依頼を受領し、解決への糸口をギルドへ示すことを是と致しました。ご協力願います」

「…君達に危険は?」

「進捗と事実関係によります」

「報酬の話は?」

「実際には依頼ではなく、意見を聞きたいというお願いでしたので、私を含め、そこを気にしている者はおりません」

「それは……」

「意見を聞きたい、と言われた際に見せて頂けた資料…それ自体が私にとっては報酬となり得るもので。それを読む過程で必要な資料があれば望むままに閲覧が可能という状況が追加報酬にさえ思えました」


神父様が眉間を押さえている。


「冒険者ギルド以外への訪問も予定にはありましたが、それを全て忘れるほどに没頭し、気付いた後もそれらを全て取り止めてでも、この件にあたることを本人達が希望しております」

「……シアだけではないのですね」

「取り止めた件に関して私は関わっておりません」

「子供達がそこまで関わって尚、私は関係者ではないのですね?」

「あの場にいた者のみと解釈しております」

「大人、ではなく。私の手が必要なのですね?」

「大人の手は多く必要となるかと思いますが。それとは別に神父様の手も必要となります」

「君達が動く為に?」

「どちらかと言えば、それ以外の面かと思いますが、状況によってはそれも視野に入ります」

「動く気はない?」

「私はあります」

「シア以外は?」

「どこまで興味をひくか、かと」

「まだ、その段階で、それでもシアは決定事項と?」

「急を要する案件だと考えておりますので」


眉間から手を離し、神父様はラルスさんを見る。


「貴方から見ても急を要する案件に思えますか?」

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