第93話 説明……
2人の視線がこちらに向く。
「私達の興味を引いたのはそちらです」
「それは、まぁ…」
「アレを見せられて我慢出来る筈がないのです」
「シア、あれ、とは?」
「その話をする為に時間を頂いたのです」
神父様が息を落とす。
「では、こちらの部屋を使いましょう。早い方が良さそうです」
書庫近くの一室が示された。
調べものをする際に使用する部屋だ。
さほど大きくはないが机や椅子などの調度品は揃っているし、教会施設とも院とも少し距離がある為、人が近寄りにくい。
頷いて入室し、明かりを灯す。
神父様はきちんと扉を閉めてきた。
抱えていた本を机に置けば、その横に神父様が運んできた本を積んだ。
「ありがとうございます」
「構いませんよ。ただ…この本で何を調べていたのです? あぁ、どうぞ、お座り下さい」
神父様はラルスさんを促しながら、自らも席につく。
「森に…深緑の森に棲むという守り神の…正体が何か、です」
座る2人に言葉を投げれば、同時にこちらを見た。
「それがギルドへの回答になるのではないかと考えたのです」
「ギルドへの回答?」
「それが本日、お時間を取って頂いた理由です」
神父様の疑問符にラルスさんが応じてくれた。
「ラビの件から魔獣に対する考え方の一部変更がされる方向であることはご存知ですか?」
「うちの子達が関わったという事で概要は聞いております」
「その流れで、現在進行形の懸念事案において別視点からの検証の必要性が持ち上がり、その検証をラビの件の発端となった子供達に依頼出来ないかという話になりまして。本日、ギルドでギルドマスターから協力を願い出ることになったのですが。子供達がこちらが驚く勢いで…そのまま検証を始めてしまいまして……」
「あぁ…はい、成程……本来は子供達の意思を確認して、こちらにも連絡をいれた上で始めたかった、と……」
「言い訳になってしまいますが…はい。その流れを予定していました」
「しかし、本日は牧場仕事もあったはずですが…?」
「はい、そこも説明させて下さい。子供達にギルドへ足を運んでもらう時間を確保する為、関係各所から見習いを招聘し、牧場仕事の引き継ぎをさせました。もちろん、牧場側に了解を得た上で、見習い達も立候補からの選抜ですので問題にはなりません」
「……そうですか」
「見習いの方々は自らの意思だったのですね……」
「現況を説明して、理解した上での意思表示であることは確かだ。畑違いの仕事だなんて思うなよ? あそこで学んだことは見習い達にしてみれば望外な内容だ。これから先、使い方ひとつ、考え方次第で、出来ることが増大する…選択肢を増やす為の知識の習得だったことに気付いている筈だからな」
「そうでなくては本日、来ませんよね……」
「そういうことだ。神父殿。これもこちら側の問題で、子供達から教えを乞うことで見習い達の意識を変えさせ、学ぶことを教える為、利用した形となります」
ラルスさんが頭を下げた。




