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第92話 味覚……

「ルプさんはお帰りですか?」

「えぇ。先程お見送りさせて頂きましたよ」

「お疲れ様です」

「……えぇ、本当に」


神父様は苦笑を浮かべ、ラルスさんをちらりと見やる。

困り顔で、それでも小さく首を横に振るラルスさんは疲れ気味に見えるが、まぁ、仕方がない。

ルプさんの猛攻に耐えたのだろうから。


「では、こちらのお話しに移行でしょうか?」

「そうなりますね。移動しましょうか」


神父様が積んでおいた本を持つ。


「こちらの籠は?」

「ラルスさんにご飯を頂きまして、返却するものです」

「そうでしたか」

「いや、たいしたものじゃないんで…」


ラルスさんが籠を手に言葉を濁す。


言葉が崩れてきている。

良い話し合いは出来たのだろう。


歩き出しながら話しかける。


「屋台で買うご飯も美味しいのですね」

「全部が全部、旨い訳じゃないぞ」

「選ばないと駄目なのですね?」

「あぁ、値段の割りにイマイチとか普通にあるし、安さに見合った味しかしない店もある。ハズレも多いぞ?」

「目利き…または情報収集…みたいなものが必要ですね」

「もしくは片っ端から試す、だな。味覚って結構違うんだよなぁ」

「聞いて、見る、だけでは自分に合うかは判らない、と?」

「そうだな。大人と子供ってだけじゃなく、男と女でも違ってくる時があるからなぁ。まぁ、万人受けするものもあるだろうが」

「確かに。辛いものが好きな子もいれば、全然ダメな子もいますし。甘いものでも、あまり好きでは無い子もいたりします」

「あー…やっぱりいるか…」

「全く食べれない訳ではないので大丈夫だと思います。沢山はいらないって感じだった筈なので」

「それなら、まぁ……」


差し入れた焼き菓子のことを気にしているのだろうが問題なく喜ばれるから大丈夫だ。

少し食べて満足する子もいるだろうが、それとて喜ぶこと、だろう。


「そこまで気にかけて頂けるとは…」

「あ、いえ。せっかくなら楽しんで貰いたいってだけなんで」


神父様の言葉にラルスさんが慌てたように言葉を返す。


「ですが…」

「子供と交流するってほぼないんですよ。だから、こういう機会が出来たなら自分に出来ることはしてやりたいって思ってたんですけど。考えてた以上にこっちに巻き込む結果になって…どうにも、ですね……」

「巻き込む結果…それなのですが。おおよそ恐らく、うちの子達が乗っかっただけなのではないかと思わないのでもないのですが…」

「は…? いや、でも、こっちが……って乗っかる?」

「えぇ…これ幸いと、便乗したのではないかと…」

「えぇ……?」

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