第90話 新たな人材……
「! もちろん構いません。突然の訪問でしたのにありがとうございます。あぁ、こちら些少ですが、お納めください」
ラルスさんが差し出す籠に神父様は首を傾げる。
「こちらは…?」
「屋台で買える焼き菓子で、多少の日持ちはしますので、良ければ皆さんでお召し上がりください」
「お気遣い頂いてしまったようで……」
「いえ、こういう事に慣れていないので… もし、失礼にあたるようでしたら申し訳ありませんが…」
「いえいえ、失礼などではありません。有り難くお納めさせて頂きます。子供達も喜ぶことでしょう」
神父様が籠を受け取り、ラルスさんは安堵の表情を浮かべた。
「それなら良かった……」
「私からも改めてお礼を。お気遣いありがとうございます」
「お前から礼をもらう謂れはないがなぁ…あぁ、それ貸せ」
「いえ、お帰りになられるまで、こちらでお預かりしておきます。それと、あちらに待ちきれない方が居られますので行ってあげて下さい」
「お前は?」
「降ろして頂けるなら、他の用事を済ませて参ります」
「他?」
「書庫の確認など」
「あぁ、言ってたな」
ここでやっと降ろされ、手を離された。
「はい、そうです。神父様」
ラルスさんに頷いて見せてから、神父様に向き直る。
「なんですか?」
「私は確認したいことがありますので書庫へ参ります。ですが、私からもお話が御座いますので、ラルスさんとの話し合いの場には呼んで頂きたく存じます」
「……同時に聞く必要があるのですか?」
「勿論で御座います。最初から最後まで、私共に関わりある用向きとなりますでしょう?」
神父様が怪訝な表情を見せる。
「もし、呼んで頂けなかった際には許可ないまま、動く事となりますので、その旨ご了承下さい」
さっと顔色を変える神父様をそのままにルプさんを振り返る。
「突然の乱入、申し訳ありませんでした。案内の私は下がりますので…」
「シアさんの乱入なら大歓迎ですよ?」
「嬉しいお誘いですが、先約がありまして」
「それなら仕方ないですが、残念ですね」
「…ですが、本日は新たな人材が居りますし」
「そうですね、楽しみです!」
「有意義なお時間となられますように… では失礼致します」
一礼して部屋を辞す。
その際、扉を閉めることを忘れない。
これは院での規則。
大人は来客中、子供は内緒話など室内への関与を拒みたい時には閉めておくのが約束事。
子供達にも分かりやすくした結果らしい。
が、色々と分かりやすくもあるので敏い子供は閉ざした部屋で内緒話はしなくなったりもする。
それでも、入って良い部屋と良くない部屋の見分けに役立つのでそのまま運用されている、と言ったところだろう。




