第9話 あの2人は……
「覚えているんだね?」
「うっすらとですが。私よりは年上の…… けれどまだ少年だったかと思うのですが……」
いや、本当はしっかりと覚えている。……と言うか、知っている。
私の前世の記憶が戻るきっかけとなった、あの2人は攻略対象者とその主人。…というのが最初の設定。
追加コンテンツで主人の方も攻略対象者となった為、2人とも攻略対象者で、この国の第3王子とその従者、だ。
王子に手を出したなら、従者と隠れていた護衛が黙っていないだろう。
「うん、まぁ… 確かに少年ではあるのだけれど…」
何故、目が泳ぐのだろう…?
いや、先程から違和感はある。
「神父様……?」
「うん、君を連れて帰ってくれたのはドレゴルド様とアンディゴード様だったんだよ」
「……は?」
連れて?
いや、それ以前に何故、その名を名乗る…?
「え…? 兄様達が運んでくれたのではないのですか? それにその名は…信じたのですか!? 何か要求とか… 詐欺にあったり……」
「してないよ!? うちの子達は君を引き取ろうとしたみたいなんだけど、気を失った君を放って置けない、とね」
確かに2人が来て、気を失ったし、気になるというか放置出来ないというのも分からないではないけれども…!
「私でも知っている名前ですよ? こんな場所に居るなんて… 何故、信じ…… あ、神父様は真偽が判るスキルでもお持ちなのですか?」
「真偽判定? それは人物鑑定の更に上…最上位スキルだよ。鑑定スキルすら持たない私が持っているわけないでしょう」
「……っ!」
あぁ、そうか。
不備はあっても普通に鑑定スキルが使えるから、人物鑑定もそうだと思い込んでしまっていたが… と、今は神父様の話の続きだ。
「彼らの言葉を信じたのは、私がお見かけしたことがあるからだよ」
「……?」
「王城でね」
「……あぁ。あの話は本当だったのですか」
「あの話って?」
「教会から出たくない司教様が、外に出る仕事を割り振っているとか?」
「えっと……」
「シスター達に王城は厳しいだろうからと、神父様が王城関連の仕事を全て請け負っているとか?」
「まぁ… 任せてくれているんだよ、うん」
任せる、ね。
物は言いようか。
丸投げされているのだろうけれど。
「そんな目をしない。いいんだよ。先のことを考えれば悪いことじゃないからね」
「神父様が良いのなら。それで? 詐欺ではないようですが、何かあるのですよね?」
「…うん。君からも事情を聞きたいと」
「あぁ。あの場に立っていたの私だけでしたから、仕方ありません。何処の詰所に赴けば良いのですか?」
「いや、その必要はなくてね…」
「……?」
「…来るそうだよ」
「…警護の方々が?」
「本人が」
「……… ………え?」
「近々、もう一度訪れるから、君から話を聞きたい、と」
何故、そうなった…!?