第89話 技術開発担当……
「内緒話ではありません。来客中に声をかけることを戸惑う方にご説明していただけです」
「説明、ですか?」
「この部屋で行われていることは秘匿内容ではないので大丈夫です、とお伝えする為のものです」
「…それで、こちらの方は?」
神父様の問いかけに口を開こうとするラルスさんより先に答える。
「牧場の護衛の方です」
…知っているはずだろうけれど。一方的に、な。
「牧場の… 魔獣の件以外にも何かあったのですか?」
「それの延長です。ですが、今はこちらの時間ではありません。お邪魔をしてしまい申し訳ありません」
神父様ではなく、その背後へと移動してきていた客人へ頭を下げる。
「いえいえ。大丈夫です。というより、先程のお話…申し訳ないのですが、聞こえてしまい、とても気になっておりまして…!」
良い具合に食い付いてきてくれたな、有り難い。
「…どれ、でしょう?」
「どれ、とは言い難く…あぁ、全部、です! そちらの方が言われておられたこと全て、です!」
「……との事ですが?」
ラルスさんに向き直れば、明らかな困惑顔。
「いや… そう言われてもな?」
「少しで良いので私とも、お話しして頂けませんか!?」
「それは、そちらが良ければ構いませんが……」
「では、是非とも! さぁさぁ、こちらへ!」
ぐいぐいと迫り、協力をもぎ取り、良い笑顔で室内へと誘う姿に苦笑が浮かぶ。
この人も無意識に貪欲なのだよなぁ…
いや、まぁ、だからこそ、ここにいる、とも言う訳で……
ラルスさんは困惑顔のまま、室内へと足を踏み入れようとして、ふと足を止めた。
首を傾げて見れば、1つ息をつき、表情を改めていた。
「……先にこちらの子から手短な紹介がありましたが、申し遅れました。冒険者をしておりますラルスと申します」
「! あぁ、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、名乗りもせず不躾にお誘いしてしまい申し訳ありません。紙工房で技術開発を担当しておりますルプと申します。よろしくお願いします。それでですね! 先程、シアさんと話しておられた事なのですけども!」
「ルプ殿、私にも、ご挨拶させて頂けますか」
「! あぁ! すみません! どうにも気が逸ってしまいまして…」
眉を下げ、頭をかきながらルプさんが身を引く。
「こちらの教会で神父の任を頂いております。子供達がご迷惑をおかけしたようで…」
「いえ、良い経験と気付きを頂けました。ただ、こちらの問題に巻き込む事になってしまいまして、その事に関する説明をさせて頂く時間を頂戴したく、本日は院に戻るというこの子を送りながら、ご挨拶をと参らせて頂きました」
「問題に巻き込む…? 分かりました。お時間が許すのであれば、ルプ殿との打ち合わせの後に時間を取れますが、どうでしょうか?」




