87話 紙の色は……
「それはお前を含めた全員か?」
「………」
「お前のみか……」
「……煮詰めすぎて、固執になっているのではないかと感じておりまして」
「お前の意見も通らないなら無理だろ」
「そうとも言えないので、試す価値はあるかと……」
「何に関する話だ?」
「見たら分かります」
先を示せば、渋い顔をしながらも歩き出す。
角を曲がれば、予想通り扉は開いている。
うっすら声が聞こえもする。
「覗ける位置まで行って頂けますか?」
「…わかった」
渋々と言わんばかりの声音だが了承をくれる。
開かれた扉の陰から室内を覗けば予想通りの人物と物。
「……あれは」
「私達が使っていたものです」
「…なんか色? が違わないか?」
「そうですね。どうしても汚れ…文字を書いた素材が色々で、全てを取り除くのが厳しいそうなのです」
「…取り、除く?」
「紙の作り方はご存知ですか?」
「木から作るって事くらいだな」
「木から紙になる繊維を取り出して、その繊維を固めることで紙にするのですが。紙にする直前の状態が水に溶けた状態なのです」
「ほう」
「既に出来上がってる紙を水に溶いてやることで、その状態に戻すことが出来るようでして、そこから再度、紙へと成形し直すことも可能ということなのです」
「……成程な。それで、あの色になる、と」
「最初はもっと濃い色が付いていて、試行錯誤して、あそこまで来ましたが、やはり元の紙ほどには白くならないようで、試行を続行中なのですが……」
「…十分じゃねぇか?」
「そう、思われますか?」
「あぁ。というかだな。もっと違いがあっても問題ねぇ……いや、その方が有り難い、と思うがな」
「…どうしてですか?」
「安心して持たせられるから、だな」
「安心……」
「金額的なものがどうなるか分からんが、気位の高い連中が一目見て、違うものだ、と判るものの方が良いからな」
「同じものを使っているように見えない方が安全、ですか?」
「そうだな。生意気だって、いちゃもんつけられるような事は少なくしときたいだろ?」
「…その可能性はやはりあるのですね」
「ないとは言えねぇな。使った紙の裏どころか、土に書いて文字を覚えてる子供もいる状況だしな」
「…かける手間を少なくすれば、それだけ値段にも反映されるとすれば」
「そっちの方が有り難いが、下がるのか?」
「適した木を伐採する為に森を往復する労力と使用済みの紙を回収し原液の状態に戻す労力の釣り合いはどうでしょう?」
「護衛と伐採と運搬にかかる人数を考えるとそこそこ高く付くだろうが…」
「回収方法と回収率によっても変わりますか…」




