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86話 2択の……

私達のやり取りにシスターが笑いを溢す。

私とラルスさんが視線を向ければ、シスターは口許を隠して、視線を逸らした。


「シスター……」

「ふふ、ごめんなさいね? 冒険者ラルス様も申し訳ありません。なんだか、とても微笑ましく見えまして」

「いや、構いませんが」

「そのまま、行かれるのが宜しいかと思います」

「シスター?」

「神父様も判断が早く済むでしょう」

「……本当に?」

「私がそうでしたし」

「………本当に?」

「………恐らくは」


再度、問えば、シスターは少し迷って、それでも頷いた。

小さく息を落として、頷きを返す。


「では、このまま参りましょう。奥へ進んでください」


手で行く先を示しながら言えば、ラルスさんはシスターに一礼してから歩き出す。


「なぁ、さっきのどういう事だ?」

「さっきの…とは?」


問いかけてきた小さな声に問いを返す。


「本当かどうか2回も確認してただろ?」

「あぁ…あれは……私がラルスさんに抱き上げられた状態で通常対応している事でシスターの警戒が溶け、遠慮なく会話してる事でラルスさんへの信頼度が上がったようなので、神父様もそうだろう、との事ですが」

「それにお前は疑問がある、と」

「疑問というよりは2択のどちらに転ぶかの確率問題だと考えているだけなので」

「2択?」

「気に入られるか、気に食わないか、です」

「ざっくりしてんなぁ」

「警戒を解く程度ならまだしも。信用、信頼等というものは積み重ねの時間が必要なものと思いますので」

「まぁ、そうだな」

「そうなれば、あとは第一印象の問題かと」

「第一印象で気に食わない、が有り得ると?」

「聖職者とは言え、人ですから」

「まぁ…」

「ましてや、私達の親と自認していますから」

「あぁ…」

「ですが、信頼のおける大人が必要なのも事実ですので。どちらに転ぶか、という話かと思っているだけです」

「…信頼な」

「信用はギルドという組織が賄ってくれるかと思わないでもないので」

「…賄ってくれるかねぇ」

「依頼を出しているくらいですので」

「成程な…」

「あ、そこを曲がって1つ目の部屋です。扉は開いているかもしれません」

「入っていいのか?」

「良くはないのですが、入ることになるとは思います」

「良くないのかよ……」

「多分、来客中なのです」


ラルスさんの足が止まった。


「それは入ったら駄目だろう?」

「本来ならそうなのですが。今回はそうではないのです」

「……どういう意味だ?」

「……他者から見た忌憚のない意見が必要と考えるので」

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