第83話 怒ると叱る……
「お前さぁ… 気付かれたくないなら、もう少し上手くやれよ。気付いてくださいって言ってるようなもんだぞ?」
「…………」
これまで…それこそ記憶を取り戻す前から、記憶を取り戻してからの今日まで、神父様を除けば、ここまで気付かれたことなどないのだよ。
大抵の大人はそこまで対等に扱おうとはしないから、こちらとしてもそう振る舞えるのだ。
それをさせてくれない…いや、まぁ、もう隠す必要もないと開き直って対応してるだけか。
そういうつもりで見せている、この対応を見ても、面白がるような人材を手放すつもりはないのだから。
「おい、なんで黙ってる?」
「…いえ、なんでも?」
手放すつもりのない人相手に取り繕ってもねぇ? …というのは、こちらの心境でもあるのだよ。
「……まぁ、いい。とにかく、だ。お前達を好き勝手させてる神父とやらに興味はある。だが、これまでの話を聞く限り、お前達をこっちに引き込んだことを良く思ってないだろうことは理解してる。その上、オレは牽制してきたであろう冒険者でもある。この程度で絆されてくれるとは思わねぇが、やらないよりはマシだろってことだ」
…理屈は理解する。まぁ、お手並み拝見といったところか。高みの見物をさせてもらおう。
「なんか助言は?」
「……特にはありませんが」
「その間がなぁ」
「あ、いえ、本当に。逆に取り繕う方が良くない気もするので… その、私達にして下さった様に…そのままで対応されるのが良いかと思います」
「なるほどなぁ…まぁ、なるようにしかならんか」
諦めともとれる言葉だが、声音が違う気がする。
…もしかすると。
「……緊張されてますか?」
「……まぁなぁ」
ここで素直な肯定が返るあたりがなぁ…
「さっきの屋台の親父じゃねぇが。こっちもいい年したおっさんなんでな。怒られんのはとんとご無沙汰で慣れてねぇんだわ」
「さっきのは呆れ、またはお叱り、程度のものかと思いますし、神父様も滅多に怒る方ではありませんので、あってもお叱り程度かと…」
「どれであってもだよ。つーか、叱られんのはない気がするわ」
「なぜですか?」
「叱るってのは心配してるってことだと思うからかねぇ」
「………」
「お前達のことは叱っても、オレのことは叱らねぇと思うわ」
「………」
「とはいえ、これはオレの考えだ。お前が違うと思ってんなら、それはそれでいいのさ。オレはその神父を知らねぇしな」
……間違いではないが。
恐らく、神父様は怒るのではなく、叱るだろう。




